投資信託の案内を見たことがある人は、この言葉を目にしたことでしょう。
―――投資信託にはリスクがあります。
一般社団法人 投資信託協会のアンケート調査では、投資をしている・いないに関わらず、回答者の半数の人が、投信は元本保証ではないことを知っていました(※)。
では、投信のリスクとは、具体的にはどういうことでしょう?
(※)一般社団法人 投資信託協会「投資信託に関するアンケート調査」2021年3月:調査時期2020年11月、全国の男女2万人対象のインターネット調査
目次
投信を持たない人の3割が「損をしそうで怖い」
投信は、買った後に値上がりすることも、投資元本を割り込むこともあります。それがネックになり、投信の購入に踏み切れないという方は少なくありません。年に1回実施している上記のアンケートでは、毎年、投信を持っていない人の約3割が「損をしそうで怖い」ことを買わない理由に挙げています。
投信は、毎日値動きする
投信は、大勢の投資家が持ち寄ったお金を一つの大きなお財布で管理するようなものです。運用会社(投資信託会社)がお財布ごとに運用方針を決めて、株式や債券、不動産などを買い、その大きなお財布の中で管理をします。投信を買った人は、大きなお財布を通じて、間接的に株式や債券、不動産などを買っていることになります。
大きなお財布の中の株式は刻々と値動きをし、債券は金利の変動によって価値が変わり、不動産の価値や賃料は景気に左右されます。そのため、お財布つまり投信は、資産の価値が日々変動します。運用会社は投信の資産を増やすために運用していますが、経済環境や世の中の情勢によって、思惑と違う結果になることもあります。
一つの大きなお財布、つまり投信の資産価値を「純資産総額」といい、これを一口あたりに換算した価値を「基準価額」といいます。
投信は元本保証ではない
例えば、世界中の株価が大暴落したとします。投信の中に入っている株式も値下がりし、純資産総額や基準価額も下がってしまいます。投資家が投信を買った日の基準価額を下回ったら、元本割れの状態です。
運用がうまくいかず、基準価額が下がってしまっても、運用会社はその損失を補てんしてくれません。
投信を購入する際は、運用の中身を見て、資産価値が増えそうだと思う投信を選びましょう。購入後も、現状や将来の経済環境の下で、投信の中身や資産価値を確認し続けることが大切です。この確認と、確認したうえでの投資判断は、投信を購入する投資家の責任に委ねられています。これを「自己責任」と呼んでいます。
「投資信託にはリスクがあります」とは?
金融の世界でのリスクは、「想定していた結果とのズレ」という意味です。日常生活では、損をしたり危険な目に遭ったりすることをリスクと呼びますが、金融のリスクは、ちょっとニュアンスが違います。
投信の「リスク」とは
大きなお財布としての投信の中にどんな資産が入っているかは、購入する前に投信のパンフレットや情報サイトなどで確認をします。その資産が将来どのような値動きをするのかは、誰にもわかりません。運用会社の担当者でもわかりませんが、ある程度の予測は立てて運用しています。
投信の中にどんな資産を組み入れるかによって、投信のリスクのタイプや大きさが決まります。値動きの激しいタイプの株式や、市場規模の小さい金融資産が入っていると、その投信の値動きも大きくなります。一方で、例えば信用力の高い債券などのように、日々の価格変動が小さい金融資産が多く入っている投信は、リスクが小さくなります。
どういう時に値動きするかを知る
まずは、リスクのタイプについて、説明しておきましょう。
リスクを把握するには、その投信の中で運用されている金融資産が、どういう環境の時に値上がりまたは値下がりするのかを理解します。米国株は米国の景気に左右されますし、新興国の株価は新興国の経済成長の影響を受けます。他にも、為替相場の影響を受ける金融資産や、金利動向を反映する金融資産など、値動きの理由や背景を確認しておきましょう。
これらは、その投信の運用会社や情報サイトなどで説明されています。投信の基準価額が変動することを「価格変動リスク」といいます。さらに、価格変動がどんな理由で起こるのかによって、リスクのタイプが異なります。為替相場の変動が投信の基準価額に影響するなら「為替変動リスク」、投資対象の国の情勢が影響するなら「カントリーリスク」、投信に組み入れた債券が元利返済できなくなるリスクは「デフォルトリスク(信用リスク)」といいます。
リスクの「大きい」「小さい」
また、リスクには大きさがあることも知っておきましょう。わかりやすくするために、説明を単純化してお伝えします。
例えば、ある投信の運用利回りが年3%と予測されていたとします。この値は「期待利回り」と呼ばれます。とはいえ、1年で必ず3%値上がりするとは限りません。運用の結果は、ある程度の幅をもって予測されます。この投信の場合、3%の期待利回りを中心に、上下10%の幅を持たせた値動きと仮定して話を進めます。
金融の世界でのリスクは「想定していた結果とのズレ」ですから、この幅を使うと、1年後の基準価額は「13%値上がり(=3%+10%)」から「7%値下がり(=3%-10%)」の幅で動く可能性が高い、と言い換えることができます。
ここで仮定した「上下10%の幅」がリスクの大小です。もし「上下15%の幅で値動きする」と見込まれる投信があったら、こちらの方がリスクは大きいと言えます。反対に「上下5%の幅で値動きする」と見込まれる投信は、リスクが小さいと言えます。これらの変動幅は、投信の中にどんな資産がどのような割合で組み入れられているのかで、ある程度決まります。
投資を始めたばかりの個人投資家が、リスクの大小を見極めるのは難しいと思います。投信の運用会社が作成した資料や情報サイトなどで、個々の投信のリスクの大きさについて、記号などを使ってわかりやすく示されています。参考にして下さい。
まとめ
投信は、大きなお財布の中に数多くの金融資産が入った、パック商品です。パックの中身のリスクレベルと、組み入れられている金融資産の配分に応じて、投信という大きなお財布全体のリスクが決まります。
リスクのタイプとリスクの大小を知っておけば、投信のリスクに対する怖さは軽減されるのではないでしょうか。