新型コロナウイルスが発生して、約2年。この間、個人投資家の意識や投資行動は、世代によって分かれたようです。日本証券業協会が毎年行っている「個人投資家の証券投資に関する意識調査」の結果を見ると、20~30歳代の投資家は、他の世代とは違う意識を持っている傾向がありそうです。
今回は、この調査から2つのトピックをお伝えします。
目次
コロナ禍でも、7割の人が株式投資にポジティブ
日本証券業協会が2021年7月に国内の個人投資家5,000人を対象に行った、インターネットによる意識調査の結果が発表されました。例年行われているこの調査は、証券投資をしている人が対象です。
1つ目のトピックは、「新型コロナウイルス感染症拡大以降の投資行動」です。
回答者のうちの株式保有者3,800人のうち、新型コロナウイルス感染症拡大以降、「株式投資は控え、様子を見ていた」という人は25.3%でした。前年の同じ質問では35.6%の人が「控えた」と回答。一時的に様子を見たものの、投資を再開した様子がうかがえます。
一方、「株式の投資額を増やした」という人は15.4%、「この機会にはじめて株式を購入した」という人は6.6%でした。「以前とは変わらず、投資活動を続けている」人は47.6%で、コロナ禍で株式投資を始めた人、続けている人を合わせると、約7割を占めています。
20~30歳代の4分の1がコロナをきっかけに投資スタート
年代別に見ると、若い世代の積極的な姿が浮かび上がります。
「この機会にはじめて株式を購入した」「株式の投資額を増やした」「以前とは変わらず、投資活動を続けている」という投資にポジティブな人を、グラフの黄色のグラデーション層で示してみました。
世代別に見ると、年齢が若いほど、ポジティブ派が多いことがハッキリわかります。
株式投資にはリスクが伴います。年齢が高いほど、残りの人生の年数が短くなるため、年齢が上がればリスクを低く抑えるようになります。この結果でも、投資家全体として、世代に応じて取れるリスクに見合う判断をしている傾向が現れています。
20~30歳代はESGへの関心が高い
今年の調査では、ESG投資の認知状況について、初めて調べています。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字からなる言葉です。環境や人権、企業統治にかかわる問題を解決するには資金が必要です。株式や債券などを発行し、この資金を広く集めるしくみをESG投資といいます。
調査対象者全体のうち、「ESG投資を知っており、ESG関連金融商品に投資したことがある」という人は3.8%でした。
ESG投資を「知っている」という人は、どの世代でも約半数。20歳代~30歳代が若干高い程度であまり差はありません。
ですが、実際に投資をするとなったら、世代によって差があるようでした。
ESG投資を知っていて、投資をしているか興味がある人(「ESG投資を知っており、ESG関連金融商品に投資したことがある」と「ESG投資を知っており、かつ興味もあるが、ESG投資を行ったことはない」の合計)は、20歳代~30歳代が最も多く、次が40歳代です。若い世代ほどESG投資に関心を寄せている姿が浮き彫りになりました。
投資した人の割合が最も高い年代が、20歳代~30歳代です。持続可能な社会を生きる世代として、利己的に投資をするだけでなく、社会的な行動と考えているのではないか、と想像します。
投資≠資産家がするもの
いまだに「投資は資産家が行うもの」と思う人もいるようですが、ESG関連の投資者を見ると、決してそうではありません。ESG関連金融商品に投資をしている人191人のうち、半数以上の人が年収500万円未満です。
若い世代の方がESG投資をしている割合が多いことから、投資者が年収の低い層に集まるのは想像に難くありませんが、「多額の資金がなければ投資ができない」という誤解が解けつつあることを嬉しく思います。