アルケゴス・キャピタルの破綻に見るレバレッジコントロールの大切さ

前回、レバレッジのリスクと便利さの両方についてお伝えしました。レバレッジとは、車や包丁のようなもので、上手く使えばとても便利。一方、使い方を誤れば、大きなリスクを抱えることになります。

プロのアルケゴス・キャピタルも破綻した

そして、ハイレバレッジは、心に負担をかけて、冷静さを失わせます。ということは・・・冷静でいられるレベルのレバレッジにすべきということ。どんなプロでもハイレバレッジは危険。そのことを、今年(2021年)、アルケゴス・キャピタルが教えてくれました。

ハイレバレッジは、スリリングで刺激的

ハイレバレッジで取引するのは、非常にスリリングで心に刺激を与えてくれます。いわゆる射幸心という。そして、レバレッジが高くなるほど、一回の取引で生じる損益が大きくあることから、絶対負けてはいけないというプレッシャーが強くなります。

  • 射幸心から熱くなりやすい
  • 負けてはいけないプレッシャーから、冷静な判断ができなくなる

ハイレバレッジは、ロスカットされやすい

FXは、損失が一定以上になると、証拠金不足でポジションが決済されます。これは、相場が大きく変動した時、預かっているお金(証拠金)以上の損失を出さないためにも必要なシステム。急激な相場変動時、自分自身でポジションを決済できないケースは、多々あります。その時に、自動的にポジションを決済してくれるため、損失を限定することができるため、良いシステムとも言えます。

しかし、レバレッジが高いと、少しの値動きで、ロスカットされることになり、保有ポジションの損失が確定してしまいます。逆に、レバレッジが低いと、なかなかロスカットされません。そのため、損失がどんどん膨らんでいき、損失確定が怖くて、決済できなくなることもあります。その辺は、また、ご紹介いたします。

アルケゴス・キャピタルの失敗例

それでは、レバレッジの失敗例としてアルケゴス・キャピタルの件をご紹介します。

アルケゴス・キャピタルの破綻
アルケゴス・キャピタルは、昔の話ではありません。最近も最近。2021年3月に、債務不履行に陥ったファンド。(家族資本経営の会社=ファミリーオフィス)。大手ヘッジファンドで活躍したビル・ファン氏が設立。日本の野村ホールディングスやみずほFGも巻き込まれたため、ご存知の方も多いかと。

アルケゴス破綻のきっかけは、米国のメディア企業「バオアコムCBS」の株式を保有していたこと。この会社の株価が大きく下落し、追加証拠金の差し入れを求められたものの、資金繰りの目処がつかず。

そして、CFD(差金決済取引)を中心に、多くのポジションを抱えており、資金不足で、そちらのポジションも決済せざるを得なくなりました。

約10倍のレバレッジ

ビル・ファン氏の資産は、100億ドル程度。それに対して、取引していた資産は、1,000億ドル超とも言われており、レバレッジ比率は、約10倍になりますね。そのため、利益が出ている時は、含み益が増えていき、短い間に、資産を増やすことに成功しました。

しかし、たった一回の失敗で、全てを失うことになったのです。特に、アルケゴスの資産は、100億ドルと大きく、それを10倍のレバレッジで、取引していたことになります。しかもある意味、全資産ですからね。

一般の投資家が、10倍のレバレッジで売買する時、全資産に対して、10倍のレバレッジはかけません。そのリスクと心理的な負担は相当なものです。

実際、アルケゴスの持っていたポジションは大きく、各金融機関に与えた損害も大きなものでした。だからこそ、身の丈に合わないハイレバレッジでの取引は危険であり、冷静に判断できるレベルのレバレッジに留めるべしと口を酸っぱくしてお伝えするわけです。