ゴールドと暗号資産。少し似ているところもある両者。評価の定まったゴールドという名のスーパースターに、これからを期待されるヤングスターが挑む関係に例えられるかもしれません。
役割・評価が、一定しているゴールドに対して、暗号資産の評価は、まだ定まっていません。したがって、今後、その役割や評価は、変わっていくでしょう。
今回は、皆さんの大好きな暗号資産(仮想通貨)について、役割や意味について、ゴールドと比べることで、浮き彫りにしていこうと思います。
暗号資産やブロックチェーン技術は別にして。まず、暗号資産が、なぜ、選ばれるのかから見ていきましょう。
目次
暗号資産・ゴールドともに、中央銀行のコントロール下にない
暗号資産における最大のポイントがこれ。一般的な米ドル・日本円といった通貨と違い、中央銀行・政府の管理から切り離されています。これは、ゴールド・暗号資産ともに共通の特徴。
そして、各種のポイントサービスや航空会社のマイルのように、特定の企業にも依存しません。買い物の時に、おまけで貰えるポイントは、企業の状況次第で、無くなるリスクもありますよね。そのため、大事な資産をポイントに変えて保有しようと思う人は少ないでしょう。
暗号資産の価値は、参加者達の取引状況に委ねられています。制度を変えるときも参加者達で決めることになります。
なぜ、中央銀行のコントロールにないことが、メリットになるのか。
それは、独裁型と民主型の会社・政治を考えていただくとわかりやすいと思います。独裁型の社会は、意思決定が早い代わりに、トップの資質次第で、暴走するリスクがあります。逆に、民主型社会は、意思決定が遅い分、透明性が高く、暴走しにくいというメリットがあります。
中央銀行を独裁的と言うと、言いすぎかもしれませんね。しかし、一部エリートと政治家・銀行家達が、密室で金融政策を決めるという点に透明性がなく不安を抱くのも確か。過去の歴史を振り返ってみても、戦争や恐慌・大災害が起きた時、中央銀行による通貨コントロールは失敗。その結果、通貨の暴落が起きています。第二次大戦で紙切れになった日本やドイツの通貨や国債。ベトナム戦争で、大きく価値を下げた米ドルなどが事例としてあげられます。
その点、ビットコインをはじめとする暗号資産は、中央銀行や政府が、通貨発行量を増やそうとしてもできません。そのため、理論上、通貨の価値を保ちやすいということが、大きなメリット。
その点、ゴールドも同じですね。地中から金鉱石として掘り出さなければいけないゴールドは、戦争・恐慌が起きたからといって、流通量を増やすことはムズカシイ。それゆえ、通貨価値が下がっても、ゴールドの価値は下がりません。戦争で戦費が必要になったからといって、急にゴールドを掘り出すのは無理。戦国時代、甲州金山から掘り出した金で版図を広げた武田信玄の時代とは違います。
さて、だからといって、一般的な通貨に比べて、暗号資産が優れているとは言い切れません。それは、ビットコイン自体の流通量は、決まっていても、暗号資産全体の総量は、コントロールできないからです。
代表的な暗号資産は、ビットコイン・イーサリアム・リップルなど。そのため、ビットコインは増やせなくても、新たな暗号資産を作り上げて流通させれば、暗号資産全体の規模や流通量は増えていきますよね。そうなると、暗号資産全体の市場が飽和して、暴落する可能性が出てきます。
ゴールドの場合、新しいゴールドを作り上げることはできません。シルバーやプラチナといった貴金属もそれぞれ決まった用途がありますし、急にゴールドと同じ役割を担うことはできません。
暗号資産=中央銀行を信頼できるかどうか
結局、暗号資産を評価するかどうかは、中央銀行を信頼するかどうかにかかってきます。中央銀行や政府を信頼している人にとっては、暗号資産を持っている意味はないと思います。今ある通貨で充分ですから。
逆に、中央銀行や政府を信頼できない人は、米ドルや日本円に対して、価値がいつ下がるかわからず、不安ですよね。米ドル暴落・日本円暴落などの書籍が、バンバン売れるのも、そういった考え方の人が一定数いるからです。
中央銀行に限界が来る日
えっ・・私ですか。私は、その間です。過去、通貨の価値は、インフレによって下がってきたのも事実です。歴史的に見ても、多くの通貨が生まれては消えました。そのヘッジとしてゴールドが有用なのも確かだと思います。
一方、現在の中央銀行・政府は、頑張っているなと思います。二度の世界大戦・オイルショックなどがあった二十世紀。それに対して、リーマン・ショックなどの世界的な金融危機があったとはいえ、21世紀は、ハイパーインフレも米ドル暴落も起きていません。
その事を考えると、中央銀行&政府のタッグは、先進国での通貨危機やインフレを上手く抑え込んでいるなと思います。
しかし、今後もそう上手く行くのかなという疑いは持っています。バブル崩壊やインフレといったガス抜きが少ない分、未曾有の危機がいつか起きる可能性はあるのではないでしょうか。そして、そのリスクに備えておいた方がいいと思います。実際、暗号資産がここまで、人気化したのは、そういった不安の現れも一つの理由。ここは、イチかゼロかではなく、そういう可能性もあるなと考えておけばいいかと思います。
これまでは、ゴールドが、そういった方の受け皿でした。そこに、暗号資産がライバルとして登場してきたというわけですね。ゴールドも暗号資産も価格は上昇していますからね。
既存の通貨に対する不安。それをカバーするのに、ゴールドだけでは足りません。その隙間に暗号資産のニーズがあると思います。もはや、隙間というには、大きすぎる規模ですけどね。