金に興味を持ったあなた。気になるのは、価格がどう動くかですよね。
今回は、金価格がどのような原因で動くのか。そのポイントをできるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。
金価格の変動要因は、一つではなく複数の要因が絡み合っています。世界の政治や経済、株価や金利と様々。でも、難しく考えることはありません。その時のトレンドや流れをつかめば、株式や為替にも応用できます。逆に言えば、株式や為替を知っている人なら金価格の動きもつかみやすいということ。
目次
金価格:7つの変動要因
まず、これだけは、絶対に知っておいてほしい7つの変動要因をご紹介します。
1. 米ドルと金の熱い関係
金価格の変動要因で一番にお伝えしたいのは、米ドルの動き。金に関する専門機関「ワールド・ゴールド・カウンシル」が公表したレポート「金価格の決定要因」で、金価格ともっとも関係が深いと指摘されたのも米ドルでした。
基本となる米ドルと金の関係は、逆相関。つまり米ドルが上昇すれば、金価格は下落するというセオリー。
- 米ドル安⇒金価格高
- 米ドル高⇒金価格安
世界経済と資産の大部分は米ドル。そのため、米ドル安になると資産が目減りしてしまいます。それを少しでも避けるため、世界中のマネーは、ゴールドやユーロなど代わりとなる資産へと逃げ出すことになります。そのため、米ドル安になると金は高くなりやすいというのが米ドルとの関係です。
2. 金利を生まない金
金は、金そのものが価値を持つ資産。しかし、資産として見た場合とても大きな弱点があります。それが金利がつかないという欠点。
そのため、金利が上昇すると金よりも他の資産のほうが魅力的となり、価格が下がります。
- 金利上昇⇒金価格安
- 金利低下⇒金価格高
金利が0%の場合、金を持っていても利息も配当もありません。しかし債券や銀行預金を持っていても、0%の金利では何ももらえないため条件は同じ。しかし、金利が0から3%に上がればどうでしょうか。
金利がいくら上がっても金の場合、利息はゼロ。しかし債券や銀行預金を持っていれば、3%に近い利息をもらう事ができます。
この場合、お金を持っている人達はどう考えるでしょうか。利息も何も付かない金よりも国債などの債券を持ちたいという人が増えて、金を売ることになります。つまり金価格は下落することになります。
3. 需給バランス
金は、通貨の面に加えてモノの面を持っています。そのため需給バランスを無視することはできません。いわゆる生産(供給)と消費(需要)のことです。
- 需要増加⇒金価格高
- 需要減少⇒金価格安
- 供給増加⇒金価格安
- 供給減少⇒金価格高
金といえば、南アフリカとの印象をお持ちの方もいると思います。私が初めて、金を勉強した時も南アフリカが一番でした。
しかし2021年現在、世界最大の産金国はなんとお隣の中国。南アフリカは地表に近く掘りやすい鉱山を掘り尽くしてしまい、生産量が減少。2007年に中国に追い抜かれました。
そして、需要面で強力なのも中国そしてインド。歴史的にゴールドを好む国民性に経済成長がプラスされたため、両国の金需要は金価格の動きに大きく影響します。
4. 中央銀行の金売買
各国の中央銀行は自国の経済・通貨危機に対応するため、米ドル・ユーロ・金を外貨準備として積立てています。一般の家庭と同じように、貯金しているわけですね。そして万一が起きると、自国の通貨は下落していることが多いため、自国通貨で積み立てるのはリスキー。そこで、価値が安定している米ドルやユーロ・金を貯めておくわけです。
この準備として抱える金を中央銀行が売買するのは、大きな変動要因。1990年代に金価格が低迷した原因の一つは、中央銀行の金売却でした。一年間の需要が4,000トンから5,000トンの金市場に、年間400~600トン前後の金を売却していました。そのため金価格は、約250ドルまで下落する暗黒時代を過ごすことになったのです。
しかし中央銀行は、2010年から金の売却側から購入側へと立場を変えたのです。そのため、金価格は上昇しています。
5. 物価=インフレ&デフレ
金=インフレヘッジのセオリーがあるように、インフレになると金価格は上昇しやすくなります。特に1970年代のオイルショックによる世界的なインフレ時、金価格も同じように上昇し、インフレ=金高のセオリーは強化されました。
ただし、ここは少し複雑。シンプルにインフレだけを見てはいけません。金価格はインフレだけでなく、金利に大きな影響を受けます。インフレ時には大抵、金利も上昇しますからね。
そのため、金価格は実質金利(名目金利-物価上昇率)との関係が大事です。
6. 景気動向
金は宝飾品・工業品需要として強いニーズがありますから、景気が良いと価格が上がりやすくなります。逆に不景気だと、売れ行きが悪くなり価格は下がりやすいといえるでしょう。
7.地政学リスク
もう一つ、金投資で有名な言葉は「有事の金」。
クーデーター・戦争といった有事が起きると金は、上昇しやすくなります。これが「有事の金」というセオリー。そして政治的・軍事的な危機のことを地政学リスクと呼びます。
有事に金が上がる理由は、お金の信頼が弱まるからです。
戦争・紛争が起きれば通常の経済活動がしにくくなり、戦争当時国の通貨や国債の価値が弱まります。そうなると、その地域では金の価値が上がることになりますね。もし狭い地域のトラブルで済めば、大きな影響はありません。
かつて東西冷戦時代は、米ソの冷戦という火種が常にありました。そのためソ連のアフガン侵攻、イラン革命といった地域レベルの紛争に対しても金価格が大きく反応しました。いざとなれば、米ソの直接衝突・核戦争などの危機が背後にあったからです。
今、それと似たような状況は、米中の新冷戦。台湾・東南アジア・インドなどへの中国の介入は「有事の金」を復活させるきっかけになるかもしれません。