どんどん安くなる米ドルと高くなるゴールドは、いつも逆相関のカンケイ。

どんどん安くなる米ドルと高くなるゴールドは、いつも逆相関のカンケイ。

ゴールドは、米ドルの代替資産としてのニーズが強い通貨&コモディティ。今回は、米ドルが安くなる時、買われやすくなるセオリーをご紹介します。

米ドルとゴールドの関係性

過去の値動きを見ると、米ドル、金に対して安くなり続けていることがはっきりしています。

もう少し深堀りして見ていきましょう。

金と米ドルは、35ドルの固定相場から始まった

第二次大戦後、米国を中心に為替相場を安定させるための会議が開かれました。これが戦後の経済・為替政策を決める「ブレトンウッズ体制」の始まり。

この時、戦前の通貨切り下げ競争やブロック経済がドイツや日本を戦争に向かわせた一因であると戦勝国側も反省。通貨切り下げ競争にならないよう世界各国の為替相場は固定となり、唯一ドルだけが金と交換でききる金本位制で戦後経済は始まったのです。

しかし、生産に限界のある金に対し経済成長とともに増え続ける米ドル。これを同じ値段に固定すれば、誰もが金を欲しがり、金とドルの固定相場が崩れるのは時間の問題でした。

1944年 1オンス=35ドル 2020年 1オンス=2,000ドル

ニクソン・ショックで固定相場制は終了

1944年、ブレトンウッズ体制の元、1トロイオンス=35ドルだった金価格。崩れたのは1971年のニクソン・ショック。これにて固定相場というドラマは幕を閉じ、枷を外れた金価格は上昇し続けました。

2020年の最高値は、なんと2000ドル超!35ドルから50倍以上、値上がりしたことになりますね。

第二次大戦後、世界経済は成長。その成長分だけ、出回るお金を増やさないと経済はデフレ(モノの値段が安くなる)になってしまいます。そのため、世界中で使われるお金である米ドルは、安くなる運命の通貨かもしれません。

ちなみに、金だけでなく日本円も米ドルに対して大きく上昇しています。

米ドルが上がれば、金が下がる。米ドルが下がれば金が上がる

米ドルは貿易の決済に使うとともに、資産価値を維持するため価値を貯めておく役割も担っています。

ところがです。米ドルは長いトレンドで見ると、安くなる一方。つまり、米ドルを持っているだけだと他の通貨やゴールドに対し、価値が下がっていくということ。
※米国債・米株で、配当・値上がり益を期待する方法あり。

これでは、価値の維持という役割を果たすことができませんよね。皆さんが超大金持ちで資産が1,000億円あったらどうしますか?

日本人の得意とするタンス預金はだと、目減りしていくだけ。そこで、世界の資産家や中央銀行は資産の一部を金で持つという方法でリスクヘッジをしているのです。

このような理由から、米ドルと金は逆の動き=逆相関関係にあります。もちろん、いつもセオリー通りに動くとは限らず、米ドルと金が同じような値動きをすることもあることを忘れてはいけません。

今後も米ドルは安くなる?

今後、米ドルが上昇していくのであれば、無理にゴールドを持たなくてもいいはず。しかし、米国は巨額の貿易赤字を抱えており、米ドルが安くなる可能性は高いと思います。この状況が大きく変わらない限り、金を保有しておく意味はあるでしょう。

米ドルは、基軸通貨として第二次大戦後に世界経済のキホンとして使用されてきました。一方、自身の価値を下げ続けてきた不安定な通貨という言い方もできるでしょう。ゆえに、ゴールドをはじめとした代替資産へのニーズが消えることはありません。

もし、米ドルが完全に安定した通貨で価値が下がることもなければ、ここまで金融システムが発展することもなかったことを思うと、これで良かったのかもしれません。米ドルが不安定だからこそ、オイルショック・ベトナム戦争・リーマンショック・冷戦といった多くのイベントを乗り越えることができたと言うこともできると思います。

新型コロナウイルスからの回復と脱炭素の持続可能社会への切り替え。

2021年7月現在、世界は、コロナウイルスのパンデミックという未曾有の事態に見舞われています。その中で、人々の生活を支えるため多くのお金をバラまきました。これから景気回復のために、まだまだ支援という名のお金が必要です。

さらに、脱炭素に向けて持続可能型社会へとインフラを作り変えることも必要。両方とも相当規模のお金が必要になる事業。そのため、今後も財政は拡大していく可能性が高いでしょう。

ということは、ここまでお読みいただいたあなたはお分かりですね。お金を大量に刷る=米ドルの価値が安くなる動きは続くのではと思います。

金価格の月足チャート(金/ドル)

金のチャートチャート作成: TradingView

中長期的に金価格の上昇トレンド。

米ドル・紙幣の価値は下がりやすい

コロナのパンデミックでお金を使い果たしたのでこれ以上、財政拡大や支援はしません。こんな事を言う政治家は選挙で当選することは不可能。

2020年米国大統領選挙でトランプ氏・バイデン氏。共にインフラ投資の拡大を公約にしていたように、選挙の洗礼がある政治家は国民に不人気の政策はできません。

そして中央銀行も似たようなモノ。彼らに選挙はなくても、任命するのは政治家。さらに彼らの人脈は、銀行・証券といった金融業界。となれば、政治家や友人の意見に逆らって国民に不人気な判断をするのは難しい。

これらを証明するかのように、米国のマネタリーベース(資金供給量)は右肩上がりで増加していますからね。この世の中に供給するお金が増えていけば、相対的に米ドルは安くなり、金は上昇していくでしょう。

短期的には、米ドルが上昇してゴールドが安くなることもあると思います。しかし、長期的な視野に立つと増やすことができないゴールドとカンタンに増やせる米ドルとでは勝負になりません。米ドル安ゴールド高のトレンドは続くと思います。