「金(ゴールド)」は非常に魅力的な現物資産です。
金は遠い昔から、希少性と美しさのため世界共通の資産として取り扱われてきました。
日本でも江戸時代の大判、小判が有名ですし、アメリカではゴールドラッシュという時代もありました。
近代でも1970年代までは金本位体制が取られており、世界各国の紙幣も金の保有量と結びつく形で価値が決まっていました。
現在ではすでに金本位体制は終了していますが、金そのものが持つ価値は変わっていません。
むしろ「金」は世界共通の資産として不動の地位にあります。
そこでこの記事では、「金」という現物資産を用いた資産運用について考えていきたいと思います。
目次
金とその他の金融商品の違い
金が他の金融商品と比べて違う点は『金そのものに価値がある』という事です。
金は価値が無くならないですが、株式は会社が倒産した場合価値がなくなります。
債券も発行体が潰れてしまえば価値がなくなります。
また、紙幣でさえも国家が破綻してしまえばただの紙切れとなってしまいます。
しかし実物資産である「金」の価値はなくなりません。
金の高騰
「有事の際の金」という言葉があるように、戦争や経済危機などの大きなトラブルに見舞われた時などは、世界のお金は「金」に集まります。
近い過去を振り返っても1979年のイラン革命、第二次オイルショック、アフガニスタン侵攻、2000年に入ってからは2001年のアメリカの同時多発テロ、2008年のリーマンショックの時は金の買いつけが殺到し価格が高騰しました。
現在の世界の金融事情を見ても、アメリカを筆頭に先進国は自国通貨を発行し続けています。
国家が貨幣の価値を担保している事をいいことにお札を大量に刷っているのです。
そのためどの国もインフレが進んでおり、お金そのものの価値が少しずつ下がっています。(※日本はそんな世界とは逆にデフレが続いていますが、、)
インフレが進めば進むほど、モノの相対価値が上がるので、その結果として金の価値も上がってきています。
このように『金』の特徴を挙げると
- 金そのものに価値がある
- 有事の際に金の価値が高騰する
- インフレに強い
と言えるでしょう。
では、金投資にはどのような投資方法があるのか見ていきましょう。
金投資手法:3選
- 純金積み立て
- 金地金(インゴット) / 地金型金貨
- 金ETF
金投資には、純金積立や金ETF(上場投資信託)、また金地金(インゴット)・金貨といった現物を購入するなどの方法があります。
細かく説明していきますね。
純金積み立て
毎月金貨を積み立てで購入していき、売却して換金したり、地金として引き出したりする運用手法のことを純金積み立てといいます。
これは地金商や証券会社、銀行などで取り扱いがあります。
少額から簡単に始められる金投資方法のひとつで、価格変動リスクを抑えて毎月少しずつ投資したい人向けでしょう。
金地金(インゴット)と地金型金貨
金地金や金貨は、地金商や宝飾店などで購入することができます。
少額から貯めていきたいという人は金貨がよいでしょう。
金貨は数万円から購入が可能ですが、金地金を購入した金額が多くなってくると自宅での保管場所やセキュリティーの面で不安が出てきます。こうなれば、銀行の貸金庫に入れるなどの対策が必要になります。
そのため金地金と地金型金貨は、取引コストと保管コストが高くつくといえます。
金ETF
金ETFは、上場型の投資信託です。
金ETFは金価格の動きに連動するように構成されており、株式のように日々価格が変動します。
相場を見る感覚で投資したい方には向いていると言えるでしょう。
金ETFを行う場合は証券会社などで口座を開設して、株式と同じように売買します。
こちらも、純金積立と同様に少額から投資が可能です。
ただし、コツコツと買い付ける純金積立とは異なり、自分で購入のタイミングを判断する必要があります。
ご存知の方も多いと思いますが、世界で一番有名な金ETFはスパイダー・ゴールド・シェア(GLD)です。
ここはヘッジファンドや機関投資家も投資しているくらいのETFで、運用コストは0.4%ほどで、金ETFを考えている方にはお勧めできるといえます。
上記3つの金の投資方法を見比べてみると、手っ取り早く安心して投資できるのは金ETFといえるでしょう。
金の利回りについて
近年の金の利回りはどれくらいかご存知ですか。
2004年から2020年までのチャートを確認してみますと、一番良い年の成績プラス30.45%、一番悪い時の成績マイナス28.33%、この15年間の利回りは8.2%です。
これからもわかるように、金は思っていた以上に値動きが激しいものになります。
これは国際金価格がドル建てであることが理由にあります。
金投資は金の値動きに加えて、為替の値動きが加わるので激しく値動きするのです。
金への投資はドル建てしかできないので、価格変動リスクと為替リスクが伴うものという事を頭に入れておいて下さい。
金への投資はドルへの投資でもあるのです。
金のメリットとデメリット
次は金のメリット、デメリットについて見ていきます。
金投資のメリット
- 信用リスクが無い、価値が無くならない
- インフレに強い
- 換金しやすい
信用リスクがない、価値が無くならない
金投資では、金そのものが持つ特徴がメリットであると言えます。
金は鉱物ですから産出量には限界があり、世界中の人が金の価値を認めているので、価値がなくなることはありません。
また、金には発行体が存在していないため、先進国・発展途上国に関わらず金の価値は共通しています。
そしてもう一つ、世界情勢が大きく変化した場合や株安や紛争やテロなどが起きると、安全資産として金を買う人が急増し金の価値が高騰します。
しかし株式や債券、預貯金などの金融資産の場合は、国や企業などの発行体が破綻するリスクが存在し、企業が倒産したらその企業が発行した株式や債券の価値はゼロになってしまいます。
金は発行体が破綻する信用リスクとは無縁の実物資産で、無価値になることがないことから安全性と信頼性が抜群に高いと断言できます。
インフレに強い
金はインフレに非常に強い資産です。
インフレとは現金の価値が下がり、モノの価値が上がることを言います。
そして金は現物資産なので、インフレになると価格が上がります。
そして〇〇ショックのような金融恐慌、戦争や紛争が起こったときも「有事の際の金」として人気が高まりまり、金を保有することで現金や株式など価格が上下動しやすい「資産の目減り」を防ぐことができます。
換金しやすい
金の価値は全世界共通で、通貨としての側面もあるので他の実物資産に比べて換金しやすいといえます。
不動産の場合などは、好きな時に買う事が出来ても売りたいときに売ることができない場合があります。
たとえば、不動産価格が下落しているときや不景気の時は、買い手が容易に見つからなかったりします。
しかし金は世界共通でその価値が認められているので、すぐに買い手が見つかるというメリットがあります。
金投資のデメリット
- 金の取引はドル建てで行われるため為替の影響を受ける
- 利息や配当が無い
- 紛失や盗難リスクがある
金の取引はドル建てで行われるため為替の影響を受ける
金投資のデメリットとして一番に挙げられるのは、為替変動のリスクです。
金の取引は米ドルで行われるため、日本国内において金の価格は米ドルに対する為替の影響をもろに受けます。
たとえば金の価格が同じ場合、1ドル100円の時に10,000円分の金を買った場合と、1ドル110円の時に10,000円分の金を買った場合では、1ドル100円の時に買った金の量のほうが多くなります。
円高のときは国内の金価格は下がり、円安のときは国内の金価格は上がります。
金投資を行う際は、事前にしっかりとこのドル建てによる為替の影響を頭に入れてから行うようにしましょう。
利息や配当が無い
株や債券、預貯金は利息や配当がでますが、金にはそのような配当はありません。
利益を得るためには、金価格が上がった時に売却するしか方法がないのです。
また金は預貯金のように元本保証ではありません。
金価格が下がれば元本割れする可能性も出てきます。
しかし、株や債券のように著しく価値が下がってしまうという事は将来においても考えにくいとされています。
紛失や盗難リスクがある
金の現物を保有する場合は、紛失や盗難リスクがあります。
富裕層の中には金の盗難にあった話を聞く事があります。
金の現物を保有する際は、保管場所の確保やそれに伴う費用が必要となり、金を保有するコストだけでなく、購入や売却するときの手数料がかかってきます。
まとめ
金投資は、すべての人に有益な投資であるとは言えません。特に短期間で利益を得たいと考える人には向いている商品だとは言えないでしょう。
「金」の現物としての価値、世界情勢の変化における際の金の値動き、価値の特性を見ていくと、投資対象というより「守りの資産」としての金投資という位置づけになってくると思います。
株式などは世界情勢、経済動向等の変化で価値が急落することがありますが、金投資は大きな損失をもたらしにくい性質があります。
また、「金」自体が持っている現物としての価値、またそれが世界中の共通認識として認められているという点は、他の金融商品にはない金独自の確立した強みであることに違いありません。
金投資に向いているのは、短期の利益よりも資産を守りながら投資をしたいと思う人です。
金は価値がなくなる心配のない商品です。短期で目先の利益を目指すのではなく、利益を生むことより長期保有で資産を守りたい人にとっては、有効な投資商品であると言えるでしょう。