資産運用における「分散投資」の本当の意味を知っていますか?

資産運用における分散投資とは

投資ではよく『卵を一つのカゴに盛ってはいけない』、『卵を一度にカゴに盛ってはいけない』という金言が使われます。

全部持っている卵(資産)を一つのかご (金融商品)に盛ってしまうと、そのかごを落とした時に全部割れてしまうかもしれない。

しかし、複数のかごに分けて卵を盛っておけば、一つのかごを落としても、他のかごの卵は割れずにすむ(安全)という考えです。

また、卵を盛る際も一度に全部盛るのではなく、時間を分けて持っていくことによって、かご全体に影響が及ぶような危機(例えば世界的な恐慌など)が来たとしても、そのリスクを回避することができます。

このように、資産運用においては分散投資の考え方はなくてはならないのですが、実は、多くの人が分散投資について間違った認識を持っているのです。

当記事では、分散投資の本当の意味、そして具体的な方法をお伝えしていきます。

分散投資とは

分散投資とは

一般的に分散投資とは、複数の企業の株式に分けて投資する事や、株式だけでなく不動産や原油、債券、金などの商品にも投資すること、とされています。

複数の国や地域(異なる貨幣)といった投資先を分けることで、もしどこかの国で戦争や災害などがあり、その国が著しく経済的なダメージを受けたとしても、他の国にも投資をしておけば、資産が減ってしまうリスクを回避することができるわけです。

上記のように投資対象を分散することがリスク回避に役立つ、という事がご理解いただけたと思いますが「分散」と一言で言っても、投資対象商品、地域、貨幣、時間など、あらゆる考え方があります。

ここで、分散を考える時の主要となる3つのキーワードを上げてみますと、

  • 時間軸
  • 地域
  • 資産の種類(投資対象の金融商品)

となります。

時間軸『卵を一度にカゴに盛ってはいけない』

記憶にも新しいと思いますが、2008年のリーマンショック、2020年の新型コロナ大流行に伴う金融危機で、全世界的にマーケットが値下がりしてしまったような局面では、あらゆる企業の株価が一律に値下がりしてしまいます。

そのため、一度に大きな資金を投入してしまうと、その時たまたま高い値段がついていたところであって、その後大きく値下がりしてしまうケースもあり得ます。

このような事を回避するのに有効な投資手法は、一度にまとめて投資するのではなく、時間軸を分けて投資する時間分散投資です。

いわゆる時間によるリスク分散です。

時間を分けてかごに盛る、金融商品を購入するタイミングを分散することによって、高値で買ってしまった事による元本割れのリスクを回避し、購入単価を平準化することができます。

時間分散投資をするのに代表的な方法が、定期積立による投資です。

定期積立は毎月一定の金額を自動的に投資していくので、購入価額を分散することができますし、自分で投資のタイミングを計る必要もありません。

マーケットが激しく変動していても一定のペースで投資を継続することができます。

また時間を分散させることにより、購入単価が平準化される利点は、相場の下落時にはたくさんの口数が買える、長く積立投資をしていくことで、暴落さえもチャンスに変えることができます。

また、給与からの天引きや口座(自動)振替での定期購入なので、知らないうちに資産が増えていくというメリットもありますね。

地域の分散

投資対象の地域を分散させることです。

例えば、外国株式や外国債券に投資することにより分散できますし、投資信託の中で、外国の株式や債券で運用している商品を利用することでも、地域の分散を実践できます。

また、地域分散は通貨を分散させることでも対応することが可能で、日本円だけではなく、米ドル、ユーロ、豪ドル、トルコリラ、南アフリカランドなど、世界中の通貨に目を向けても良いと思われます。

外貨への投資は、外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド、金融商品の1つで、主に債券を組み入れ資産とするミューチュアル・ファンド)や外貨建て商品を購入することでも手軽に実践できます。

資産の種類(投資対象の金融商品)

これは投資対象の金融商品、株式、債券、投資信託、年金・保険、預貯金などを分散させることです。

また、投資信託の中でも株式や債券、不動産、金など幅広くポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を組んでいるもの(いわゆるバランス型)を選ぶことでも、対応できると考えられます。

ここまで読むとあなたは、「分散投資」は資産運用のやり方としては、非常に効果的なやり方で、リスクも回避できそうだし、「これから投資をやるのならばできるだけ分散投資を心がけよう。」と考えるはずです。

しかし、確実安全に見える分散投資にもやり方によっては効果的ではないケースもありますので、しっかりおさえておきましょう。

要注意!間違った分散投資の考え方

間違った分散投資の考え方

上述したように、投資をする際、『卵を一つのカゴに盛ってはいけない』『卵を一度にカゴに盛ってはいけない』とよく言われます。

投資においてこの言葉は、1つの商品に資金を集中させるのではなく「いろいろなものに分散する」ことを意味します。

ここで深く理解して頂きたいのは、「分散」とは、数多くの商品に投資することではない、という事です。

金融商品を販売している銀行員や証券会社のセールスマンも、「分散投資を心掛けて下さい」と必ず言いますが、本来の分散投資と金融のセールスマンが意図する分散投資は、意味合いが違ってきます。

彼らの話を鵜呑みにして、言われるままに「分散投資」はしないようにしましょう。

では、どうすればいいのか?

実は、分散の方法には「基本的な考え方」が存在します。

それは、「値動きの異なる2つ以上の資産」を組み入れるという事です。

実現するためには、適切なポートフォリオ(複数の資産の組み合わせ)を組む必要があります。

値動きの異なる2つ以上の資産

ここから話の理解を深めるために、まず金融の世界でいわれる「リスク」について説明します。

金融の世界でのリスクとは「価格変動の大きさ」のことを言います。

リスクが大きければ大きいほど、利益も損失も大きく変動することを意味します。

例えば、資産Aと資産Bを持っていた場合を想定してみます。

リターンとリスクの設定値を

  • 資産Aの期待リターンを2%、リスクを5%
  • 資産Bの期待リターンを4%、リスクを10%

と考えてみて下さい。

この場合、資産Aと資産Bの値動きに対する要因の特性が同じだった場合、資産はAとBに分散しているものの、リスク分散の意味は持ちません。

「値動きに対する要因の特性が同じ」とは、その資産が日本経済の状況、または円ドルの為替の動きなどに応じて変動する商品だった場合、資産Aと資産Bは同じような値動きをする、という事になります。

つまり、資産を分散させ、リスクを回避することは「値動きが異なる資産を組み合わせる」ことなのです。

「資産Aが値上がりする場合、資産Bは値下がりする」、「逆に資産Aが値下がりした場合、資産Bは値上がりする」、といった具合に組み合わせるのです。

この様な組み合わせ(ポートフォリオ)のリスク計算は複雑なので、ここでは割愛しますが、「分散投資」の考え方の基本は
『値動きの異なる2つ以上の資産を組み入れるという事が重要』、という事を頭に入れておいてください。

では、値動きが異なる資産とは、どのような組み合わせを指すのか?

一般的にいわれているのは、株式と債券の組み合わせで、この二つは同じような値動きをすることが少なく、分散投資の効果が発揮されるとされています。

さらに、国内だけでなく海外の資産にも投資する「国際分散投資」によって、分散効果を高めることもできます。

海外の資産運用は、ある程度の投資ノウハウが求められますが、分散投資によって自分の資産を守る上では、有力な選択肢の一つとなりますので、どのようなものがあるのかを知っておくといいでしょう。

まとめ

「分散投資」は長期的な資産運用を考える場合には、基本的な考え方であり、有効的な考え方でもあります。

しかし、「分散」という言葉だけに惑わされ、いろいろな金融商品に分けて買っておけばよい、というものではなく、時間軸(長期的に、定期的に積み上げていく)、地域(日本国内だけではなく、外国、通貨も分ける)、資産の種類(投資対象の金融商品)という3つの軸を考える必要があります。

そして、金融商品には「値動きの異なる2つ以上の資産」を組み入れる、という視点を忘れないでください。

資産運用において、分散投資を避けて考えることはできませんので、今のうちからどのようにしてポートフォリオを組めばいいのか、イメージしてから投資をしていきましょう。