前回は、燃え上がりつつあるインフレの火種についてお話しました。今回はインフレと金の基本について解説していきます。
低インフレ&デフレ時代から、インフレ時代へと変わりつつある今、「金とインフレ」の関係を見直しておきましょう。低インフレ&デフレ時代が長く続いたため、若い投資家はインフレ時代を体感していません。今こそ過去を学び、金を味方にする時です。
目次
インフレの味方となる金投資
インフレになると、下記のような2つの理由から金を買う人が増えて、金価格が上がりやすくなります。
- インフレになると、金価格が上昇しやすい
- インフレになると、現預金の価値が下がる
インフレとは何だろう
インフレとは、モノの価格が上昇していくこと。もしくはお金の価値が下がること。逆にモノの価格が下がっていけば、デフレとなります。
日本は、デフレが長く続いたことで、経済大国の地位から滑り落ちてしまいました。
デフレの問題点
デフレが続くと、モノの値段が下がります。例えば、欲しかった服が値下がりして買えるようになったなら、消費者としては嬉しいですよね。
しかし、商品を売る側からしてみると、デフレはとても苦しい。
原材料を仕入れてモノを作っても、最初に想定していた価格では、高すぎて売れないなんてこともあります。しかもすぐに売れなければ、どんどん値下げしていかなければいけません。これだと、利益を出す=黒字化が難しくなります。
デフレは、売上・利益・給料などが下がっていく社会。すると、ますますモノが売れなくなる。これが最悪のデフレ・スパイラル。近年の日本企業がコスト削減を叫んできたのは、このデフレが原因。
スマホゲームやバトルマンガに見る「強さのインフレ」
インフレかデフレかというのは、経済活動や投資に大きな影響を与えます。現実の写し絵である物語の世界で「強さのインフレ」を味わうと、そのことが肌で感じられます。
ゲームやマンガで新しいキャラクターを登場させる時、前のキャラクターより強いことが鉄則。もし、逆に弱ければ、どうでしょうか(強さのデフレ)。鳥山明氏の漫画「ドラゴンボール」で言えば、前パートのボスだった「ピッコロ大魔王」よりも次パートのボス「ベジータ」が弱い。これでは、主人公の孫悟空も読者である私達もしらけてしまい、盛り上がりません。
そして、強さのインフレがバランスを崩して、恐ろしく強いのも興ざめ。次々に登場する新たなキャラクターが毎回強すぎると、強さを制御できなくなり物語は終わります。
これは現実世界とほぼ同じです。デフレは困るし、強すぎるインフレもコントロールできなくなる。ちょうどよいインフレにバランスさせるのが腕の見せ所。
リアルな経済もマイルドなインフレが大事。各国の中央銀行は、マイルドなインフレ(2%のインフレ率)を目標に政策を決めています。
金はインフレに強い
インフレは、モノの価値があがること。もしくは、お金の価値が下がること。そのため、モノの一つである金もインフレに強い資産。
世界中で、過去多くの通貨が生まれては消えてきました。日本にも和同開珎(わどうかいちん)・寛永通宝(かんえいつうほう)などといった古い通貨がありましたね。でも歴史の教科書で勉強するだけで、今では誰も使いません。
しかし、金だけは和同開珎が創られた奈良時代から現代に至るまで、現役のお金として使えるのです。
インフレに弱い資産の代表は、現金や定期預金。
インフレになればモノの価格がどんどん上昇していきますから、その分、現金の価値は目減りしていきます。
シンプルに10%のインフレ率を考えてみましょう。100万円を出せば買えた車が、1年後は110万円を出さないと買えなくなります。つまりその1年間、100万円をタンス預金にしていれば車が高くなり、買えなくなってしまいます。
そして、銀行預金も同じようなもの。インフレになれば金利が上昇し、受け取れる利息は増えます。しかしほとんどの場合、インフレのスピードの方が早いため、銀行預金の価値は現金と同じく目減りしてしまいます。
保険や年金も同じくインフレに弱い。
多くの人が加入している保険は、契約時に満期を迎える時の保険金額が決まる商品。そのためインフレになると、満期を迎えた時に受け取れるお金の価値が下がっていて不利になります。
※インフレに対応した商品もあります。
公的年金も同じです。インフレにあわせて支給額を増やすことは、少子高齢化社会が到来する先進国では出来ない芸当。残念ながら、無い袖は振れません。
そのため、足元で火がつきかけているインフレの火種。これから資産を守るために、金投資が注目されているというわけです。
では、実際のところ金投資でインフレから資産を守れたかを簡単に見てみましょう。
過去100年間を見ても金は、上昇している
敵を知り己を知れば、100戦危うからずというのが、孫子の名言。資産運用の世界だと「敵を知り=過去を知り」に言い換えたいところ。それでも、100戦危うからずとは言えませんけどね。
それでは、過去100年間の金価格をご覧ください。世界の基軸通貨「米ドル」に対して、金は上昇を続けています。
チャート作成:TradingView
左側の安値から右側の現在値まで、上昇し続けていることがわかります。第二次大戦後、1944年のブレトン・ウッズ協定で決められた金価格は、1オンス=35ドル。長く固定価格が続いた後、1971年のニクソンショック以降、市場で価格が決まる変動相場になり上昇を続けています。
●金価格の推移:オンス/ドル
現金だけを持っていれば、インフレによって価値が目減りしていました。しかし、金を保有していればインフレによる資産の目減りを防げたということになります。
この間、オイルショックという高インフレもありましたし、20世紀後半、米国・日本・ドイツといった先進国は高成長・高インフレ時代でした。
もちろんこの間、金価格の変動にはその他にも多くの要因があったわけですが、それはまた別の話。
これから来る可能性のあるインフレ時代に備えるため、金投資を勉強していきましょう。