金投資において、もっとも大事な要因は金利。前回お伝えした、7つの要因の中でもダントツ。特に米国の金利が重要です。
なぜ、金利が大切なのか?
それは、ゴールドの持つ「金利が付かない」という特性ゆえ。
目次
株や債券・銀行預金と違い、金利の付かない金投資
株式や債券は持っているだけで、配当や利息がもらえます。銀行の定期預金も預ければ、利息がもらえますよね。
ところが、金は違います。たとえ何十億円分の金塊を持っていたとしても、1円たりとも利息や配当をもらうことができません。
※金のリース市場を除く
金を持っていても保管料を取られる
それどころか、銀行の貸し金庫に金地金や金貨などを預けると保管料を取られてしまいます。この金利が付かないデメリットがあるため、金価格は、低金利になればなるほど値上がりしやすくなります。逆に高金利になると、金を持っているよりも債券や銀行預金の方が良いとなり、金価格は売られて下がります。
根っからのお金持ちは、株を買って2倍~3倍になるという夢のような話よりも1億円預ければ、何%の利益がもらえるかという利回りの話が大好き。資産を二倍・十倍に増やすよりも、資産を減らさない・お金に働かせるという気持ちで資産運用に取り組んでいますからね。
だからこそ彼らは金利に敏感ですし、金投資も大好き。そして、金利の上下動にあわせて資産の配分度合い=ポートフォリオを変更します。
そのため、今後の金価格を見ていく上で、米国やユーロの金利はとても大切な要素になるのです。
では2021年6月現在、世界の金利がどうなっているのかをまず見て行きましょう。下記は、長期金利の指標として使う10年国債の利回りです。
主要国の10年国債利回り 2021年6月22日
- 日本:0.04%
- 米国:1.49%
- ドイツ:-0.16%
- イギリス:0.77%
- ギリシャ:0.81%
- スイス:-0.22%
- オーストラリア:1.58%
- ブラジル:9.30%
- メキシコ:6.87%
世界の10年国債利回りをご覧ください。ドイツ・スイスは、マイナス表示になっていますね。これは、国債を持っている方が損をするマイナス金利。日本もほぼゼロに近いレベル。そして米国は、1.49%と先進国の中では良い方です。
ブラジル・メキシコこそ高金利ながら、先進国の金利は軒並み低レベル。これでは債券や銀行預金の旨味が小さい。ドイツ・スイス・日本の国債を持っているくらいなら、金を持っていても金利面では変わりませんからね。
ちなみに、2010年以降、米国10年利回りは1.5~3%あたりの動きを続けていました。しかし、コロナのパンデミックで大きく低下。このパンデミックによる金利低下も、金価格上昇の追い風になったのです。
では、世界の金利の中で一番大切なのはどれかというと、やはり米国債の金利。世界中のお金持ちやファンドが持つマネーも、米国債を大量に買っています。そのため、米国債の金利が上下すれば、金をはじめ株式などのリスク資産に大きく影響します。
日本・・・残念ながら、ここ数十年ほとんど金利が動かず。日本の国債金利の影響力は小さめ。もし今後、2%や5%に金利上昇すれば影響が出てくるかもしれませんけれどね。
では次に、金価格と米国債金利の2つを合わせて見てみましょう。その関連性がすぐにお分かりいただけると思います。
金価格と米10年国債利回りの月足チャート
チャート作成 TradingView
上が金価格の月足チャート、下が米国債の月足チャート。全体的な動きが逆向きになっていることがおわかりいただけると思います。
画像の右端、2010年から金価格は上がり、金利が下がっていました。
これは、米国で2010年11月から2011年6月まで実行されたQE2の影響。QE=量的緩和策の略称で、金融危機による景気悪化に対応するため金利を引き下げお金の量を増やすという政策を行いました。
金利を下げた分、金価格は大きく上昇したというわけです。その後、2012年12月頃からQE2で膨らんだマネーを縮小し、通常モードに戻していく「金融正常化」を行うため、金利は上昇へと変化。そのため金価格も下落していきました。そして2018年には4回の利上げ。
しかし、2019年には世界的な景気悪化が生じて金利を引き下げ。さらにその後のコロナウイルスによるパンデミックは、長期金利を大きく下げる方向へと向いました。
2019年は、米中貿易摩擦で、金利低下&金価格上昇
この2019年は、米中の貿易摩擦が激しくなった年。互いの輸入品に高額な関税を掛ける関税戦争とも言うべき事態にまで発展しました。世界経済や貿易に悪い影響を与えることから、長期金利は2.6%台から1.4%へと低下しています。その分、金価格は1280ドルから1550ドルへと大きく上昇しています。
そして、コロナウイルスのパンデミック。金価格は、2020年8月に2,000ドルを超える高値を付け、米10年債利回りは3月に0.36%まで下落した後、1%以下の低金利状態が続きました。
このように、米10年債の利回りと金価格には切り離せない強い関係があります。つまり金価格の先行きを予想する時、今後の金利を考えなければいけません。
そうはいっても、金利の予想なんてできないよと思っているあなた、大丈夫です。FRBという米国の中央銀行が、今後の金利を予想しています。次回以降、その辺りについてもお話いたしますのでご安心ください。