ジワリ広がる「予想分配金提示型投信」とは?

予想分配金提示型投信

一時期、大ブームを巻き起こした毎月分配型の投資信託。今は鳴りをひそめたかと思いきや、違うタイプの毎月分配型に資金が集まっています。それは「予想分配金提示型投信」というもの。いったいこれは、ナニモノなのでしょうか?

そもそも毎月分配型投信とは

投資信託には、運用中の利益を「収益分配金」として定期的に投資家に還元する「分配型」と、利益は信託財産に残して複利効果を高める運用をする「無分配型」があります。

分配型の投信は、決算をして利益の一部を収益分配金とします。決算の頻度は、年に1回という投信もあれば、年に4回(3ヵ月に1回)や、年に6回(隔月)や、毎月などがあります。この回数は、投信の設定時に、あらかじめ決められています。

毎月分配型の栄枯盛衰

分配型投信のうち、毎月決算を行い、比較的高い収益分配金を投資家に払うタイプの投信が、一時ブームになりました。投資対象が高金利債券や公益関連株、高い配当利回りの不動産投資信託(REIT)などで、高めの収益分配金を出していました。毎月分配型の純資産総額のピークは2015年です。

とはいえ、やはり投資対象は、市況に左右されます。運用の良い時もあれば悪い時もあるわけです。そのような中でも、過去の実績に捕らわれ、運用があまり芳しくなくても高い収益分配金を維持していた投信も多く見られました。

元本を取り崩してまで分配するのは本末転倒です。純資産を取り崩して高い収益分配金を払っていた投信は「タコ足配当」などと揶揄され、2017年、ついに金融庁が問題を指摘。運用実績に見合う収益分配金を払うように是正され、2018年に分配金の金額を引き下げる投信が相次ぐと、毎月の高い分配金を求めていた投資家は、離れていきました。

再び、毎月分配型投信にジワリ人気が

ブームが過ぎ去ったかに思われた毎月分配型投信ですが、最近はちょっと違うタイプの毎月分配型に資金が集まっています。「予想分配金提示型」または「分配条件提示型」というタイプ。

予想分配金提示型の投信は、決算期末の前営業日の基準価額に応じて、その期の分配金額を決める方針。目論見書などに、判断基準になる基準価額と分配金の目安が示されています。それを基に、決算の都度、市場動向を考慮して実際の分配金額が決定されます。

毎月でなく隔月などの決算頻度でも、この分配方針を採っている投信はありますが、特に本数が多く、資金も集まっているのは毎月分配型です。

予想分配金提示型の一般的な分配ルール

基準価額が高ければ収益分配金が多くなり、値下がりしたら少なくなります。

【ある投信の例】(1万口あたりの収益分配金、税引前)

決算期末の前営業日の基準価額が、

11,000未満:基準価額の水準等を勘案して決定
11,000円以上12,000円未満:200円
12,000円以上13,000円未満:300円
14,000円以上:500円

ただし、決算時の市場動向によっては、この通りに支払われないこともあります。

従来の毎月分配型とは投資対象が違う

予想分配金提示型は、毎月分配型といっても、従来の毎月分配型投信と大きく異なる特徴があります。

従来、ブームを呼んだ毎月分配型は、高いインカムゲインが期待できる投資対象が主流でした。高利回りの債券や、公益関連株、REITなどです。また、世界各地に分散投資をする投信も多くあります。「定期的お小遣いを受け取って、年金収入を補いたい」と思うような人が保有しています。

ところが、予想分配金提示型の多くは、値動きが大きくなりがちな外国株やIT株、成長株で運用する投信です。決算の都度、基準価額によって収益分配金の額が決められます。定期収入という目的よりも、「利益をこまめに確定させる機会」が頻繁に設けられていると考えた方が良いでしょう。

つまり、運用の目的が違うということです。運用が低迷すれば、分配金は支払われません。「毎月分配型」という文字につられて、収益分配金をあてにしないように気をつけましょう。

まとめ

最近人気の毎月分配型投信は、「予想分配金提示型」または「分配条件提示型」という投信です。以前に流行していた、比較的高い分配金を毎月受け取れた投信とは運用対象が異なります。外国株、IT株、成長株などが投資対象で、値動きが大きめの投信といえます。毎月決算を行い、収益分配金を支払う趣旨は、利益をその都度現金化する機会と考えられます。