いよいよ、中国のデジタル人民元は、基軸通貨【米ドル】へと挑戦!

中国 デジタル人民元

いよいよ中国のデジタル人民元のスタートが近づいてきました。2022年2月に北京で開催される冬季五輪での本格スタートが当面の目標。これ、2022年以降の為替やゴールドに大きな影響を与えるリスクがあります。

デジタル人民元が基軸通貨「米ドル」の牙城を揺るがす?

デジタル決済の基軸通貨を目指す「デジタル人民元」。

2022~2023年に、通貨市場は、大きな波乱が起きる可能性があります。もし、この新しい方式が、成功すれば、基軸通貨「米ドル」「暗号資産」の大幅安に見舞われるリスクあり。

ゴールドについては、デジタル人民元の担保として中国政府・中央銀行が買い集めているのではないかという意見が根強い。また、本当に、米ドル安が起きたときのリスクヘッジとして、買われている面がありますので、他の通貨よりは、影響が小さいと思います。

デジタル人民元 動き

現在、約2%の人民元シェアが約18%へと上昇するシナリオ

野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストを務める木内登英(きうち たかひで)氏によると、2023年以降に、中国国外での利用が広がれば、3割程度の米ドル調整=ドル安が起きるのではと衝撃的な予想をしています。

世界の外国為替市場に与えるデジタル人民元の比率:木内氏の予想。

・一路一帯参加国をベースにした中国経済圏を形成
・人民元の構成比率は、2.2%(19年9月)から約18%へと上昇
・米ドルの構成比率が44.2%から28%に低下

週刊エコノミスト 2021年10月19日号

この数字、米ドルの比率が、44.2%から28%に低下とは、かなり衝撃的。シェアが下がれば、それだけ、需要も減ります。

これによって、3割もの米ドル安に見舞われれば、各国が抱える外貨準備やファンドが保有する米国債の価値にも大きなダメージを与えることになるでしょう。もちろん、日本の機関投資家・個人投資家にとっても他人事ではありません。

人民元の国際化を悲願とする中国

中国は、人民元の国際化を悲願にしていました。その夢と野望が、デジタル人民元にかかっているといっても過言ではありません。なにしろ、金庫を握られている限り、世界第二位の経済大国。アジア覇権の確立と叫んでいても砂上の楼閣。相手が、ダメージ覚悟で、金融包囲網を敷いてくれば、吹き飛ばされることになります。

もし、デジタル人民元で、決済システムに食い込めれば、米ドルに依存する必要はなくなるのです。

多くの人口を抱える中国が、世界1・2の経済大国としての地位を維持するには、世界に売れる商品・サービス作りと物資の確保が必須。

米ドルの決済システムに頼ると、米国の国益に反した場合、決済システムを止められるリスクがあります。ありえない話ではありません。IT大手のファーウェイ問題を見ても分かるように、中国にとって、現実的な課題。イランや北朝鮮などは、経済封鎖・金融封鎖で締め付けられていますからね。中国もそうならない保障はどこにもありません。

中国証券監督管理委員会の方星海副主席は、2020年6月、ドルによる決済が安全かどうか疑問を持つべきと話しています。そして、リスク回避のため、今後の10年間で人民元の国際化が必要であると訴えています。

自前の決済システムを作ろうと考えるのは当たり前の話。そのために、中国は、動いてきましたからね。

  • 人民元建てクロスボーダー決済システムCIPS:2015年
  • IMFの特別引出権(SDR)への人民元採用:2016年

と続いてきた人民元国際化への道。これまでのところ、米ドルの牙城を脅かすには至らず。しかし、経済的には、世界第二位まで成長したのに、通貨だけは、自由度も国際度も低いというのはいびつですよね。経済において、いびつさが長く続くと反動が大きくなるもの。

もしかしたら、このデジタル人民元で、次代の基軸通貨を巡る争いが、大きく加速する可能性があります。米ドルの代わりに、ゴールドを中心とする金本位制の話も出てきますが、現代に、それは難しい。となると、人民元がそれなりの地位を確保するのは、メインシナリオ。問題は、その程度。

小口決済 大口決済

★シナリオA:中国国内及び影響の強い国での小口決済に特化⇒国際的な貿易決済には利用されない⇒米ドルやゴールドの相場には影響しない。

 

★シナリオB:一路一帯参加国を中心に、国際貿易で利用される⇒米ドルの地位が低下し、米ドル安が生じる。

シナリオAだと、国際通貨の相場に大きな影響はありません。しかし、シナリオBは、大きな波乱要因。米ドルの大幅安となれば、セオリーは、ゴールドの上昇。

米ドルに挑戦するデジタル人民元

基軸通貨「米ドル」の地位に、デジタル人民元が挑戦すれば、大きな波乱が起きることになります。2022年以降、デジタル人民元の話題が出てくることが増えてくると思います。その場合、キーとなるのは、大口取引を行う国際貿易の決済でどれだけ利用されるか。

もう一つは、セキュリティ。暗号資産でよくあるハッキングなどによる盗難事故。デジタル人民元でセキュリティの問題が生じれば、大きな問題に発展するでしょう。

もし、米ドルの大幅調整の方向が出てくれば、どうなるでしょうか。デジタル人民元を流通させるためには、人民元の安定性が大事。一気に人民元の価格が上昇していけば、貿易に不利となりますからね。そうなると、米ドル安へのヘッジとして、ゴールドやユーロが買われるのではないかと思います。

2022~2023年にかけては、デジタル人民元の動きに、注目です。