なぜ?2000年以降にゴールドが不死鳥のように復活した3つの理由とは

ゴールド 復活 理由

一時は、金融商品としての価値を失いかけていたゴールド。それが不死鳥のように蘇ったのは、どのような理由だったのでしょうか。その原因を読むと「有事の金」という言葉のしぶとさもおわかりいただけると思います。

1990年代後半のITブームのさなか、忘れられたゴールド。

2001年よりゴールドは、明らかに、上昇トレンドへと完全にトレンドが変わりました。ここでは、いくつかある上昇した要因から大きな3つを取り上げます。

ゴールド 動き

●金価格の月足チャート

2000年以前の安値からは、スケールが違うほど、上昇し続けた金価格。

この3つが、ゴールドが上昇した大きな要因です!

  1. ITバブルの崩壊
  2. 米国同時多発テロ
  3. 欧州の中央銀行がゴールドの売却数量を制限(ワシントン合意)

IT革命 ゴールド

ITバブルの崩壊で、リスク資産のゴールドが脚光を浴びる

米国を中心に起きていたハイテクバブルは、2000年に崩壊。業績とは無関係に、ITやドットコムを掲げるだけで、成長していたIT企業の株価は、暴落。破綻する企業も続出するなど、世界景気の悪化は、深刻化。

当時、株式投資に興味のあった方は、ワールドコムやグローバルクロッシングといった米国のIT大手が破綻したことを覚えているのではないでしょうか。世界的にも、大きなニュースになりましたしね。

とはいえ、ITへの投資自体が失敗だったわけではありません。ご存知の通り、IT産業は成長し、世界経済の大きな部分を担っています。しかし、当時のインターネット回線は、まだまだ脆弱。多くの企業は、バラ色の未来と立派な計画書を携えているだけで、金融機関や投資家からお金を引き出すことができました。ただ、その多くは計画倒れ。それに加えて、過当競争が勃発していたことから、バブルは崩壊しました。

そう、今でいうなら、電気自動車業界に、テスラのような新興の会社が何百社も登場して、競争しているようなもの。そんな中で、すべての企業が、生き残るのは難しいものです。

そんなITバブルのさなかで起きたのが、さらに、大きな影響を世界に与えたのが、同時多発テロ。

2001年の同時多発テロで有事の金が復活

2001年9月11日に起きた事件で、米国の中枢がテロという手段で攻撃され、多くの人が亡くなる非常事態。これによって、世界の平和や安全は、まだ遠いということが改めて思い知らされました。

すなわち、有事の金が復活。この事件は、ゴールドに対する見方をまたもや変えることに。前回、お伝えしたように、冷戦の終わりは、有事の金という考え方を過去のものにしました。

しかし、米国同時多発テロは、有事が終わっていないことを世界中の人々に知らしめたのです。米ソ冷戦というわかりやすい戦争は、終わりを告げたものの、ブッシュ大統領の始めた対テロ戦争も大変な戦い。イスラム過激派の台頭、北朝鮮やイランの存在など、小国や過激派組織であっても、テロという手段を取れば、大国にダメージを与えることができると証明したのです。

そうなると、安全資産として、再びゴールドが評価されるようになりました。何しろ、同時多発テロの舞台になったのは、覇権国の米国。これ以降、米国は、イラク戦争・タリバンとの戦争・ISとの戦いなど、多くの戦争を戦うことになります。

当然、国は疲弊し、米ドルの価値は弱くなっていき、オバマ大統領の時代には、「世界の警察」としての役目を降りると宣言するほど、

地政学リスクの高まりで、安全資産が大事に

米ソの対立時のような世界的な核戦争の危機こそなくなったものの、地政学という言葉が台頭していきます。米国一強時代が終わり、隣国同士の対立など地域紛争のリスクが高まることで、有事が起きるリスクは高いまま。

人類は、戦争のない世界を実現できるのでしょうか?

実際、米国は、イラクやアフガニスタンに侵攻。ロシアは、ウクライナをはじめとした周辺諸国への圧力を強めています。中国の行うチベットやウイグル・香港への圧力を見ても、紛争は収まりません。アフリカや中東では、戦争や紛争が継続中。

それは、相対的に、安全資産であるゴールドの価値を上げることになります。

ワシントン合意で、中央銀行が金売却を制限

さて、3つ目の要因を取り上げましょう。

1999年9月 下がり続けるゴールドの価値を維持するため、欧米の中央銀行を中心に、ワシントン合意がなされたのも大きなターニングポイント。これは、ゴールドの価格を下支えし、上昇トレンドの下支え要因。

一時、金価格が下がり続けたことで、大量の金を保有する中央銀行は、困った事態に陥ります。万一のため、外貨準備として金を保有していても評価損が膨らむだけ。それでは、いざというときに使えませんし、自国通貨の担保にもなりません。

金市場において、中央銀行の行動は、大きな意味を持つ重要なプレイヤーですからね。そのため、中央銀行が売却できる金の量を制限し、金価格を維持しようという方針が固まりました。

現代まで続く、金価格の上昇トレンド

これらの要因で、下がり続けた金価格は、2000年に歯止めがかかり、今に至る上昇トレンドを描くことになりました。その間には、リーマン・ショックなどもありましたが、その価値を失うことなく、安全資産&インフレヘッジとしての役目を果たし続けています。

また、金投資好きな人が常に語る「米ドルの失墜」は、まだ起きていません。しかし、暗号資産や不動産の高騰を見ると、米ドル単独ではなく、通貨全体の価値が下がっているといえるのではないでしょうか。