日本ではまだ認知度が低いアンティークコインによる資産運用。
イメージで言うと江戸時代に発行された大判小判を、現代人が希少性と人気を基にコレクション、売買しているようなもので、それが昔から世界規模で行われていると認識して頂ければ分かりやすいと思います。
つまり、投資対象となる希少性のある古いコインに対して投資するのです。
アンティークコインの本場はヨーロッパやアメリカが中心となっていますが、ここ10年は中国、ロシア、インド、ブラジルといった方面の富裕層もこの市場に参入しつつあります。
そのアンティークコインが注目されるきっかけとなった一つは、2008年のリーマンショック時にも価格の変動が無かったことです。
多分野で資産価値が大暴落し、多くの投資家は打撃を被る事になったのですが、アンティークコインの相場は2001年頃からずっと右肩上がりで、年平均125%ともいわれ、高額なものは年平均150%を超えるものも存在しています。
ここ数年、景気後退が来るかもしれないと考える人が増えており、もしも景気後退が来ればそれぞれの資産の価値が見直されます。
証券や紙幣といった形の無いものより、不動産や金といった現物資産に目が向いていきます。
そのような背景もあり、アンティークコインにスポットライトが当たっているという事もあります。
目次
アンティークコインの業界構図について
前提の知識としてアンティークコイン業界の構図を理解する必要がありますので、説明しておきます。
この業界は鑑定会社、オークション会社の仕組みと切り離せないものとなっています。
コインの鑑定を専門に行っている会社が世界には存在し、それらの鑑定会社の中で世界的に権威のある会社が2つあります。
2社ともアメリカの会社になるのですがNGC社とPCGS社です。
この鑑定会社ができるまではコインの「価値の指標」が存在せず、購入者は偽物を掴まされることも非常に多くありました。
その2社の設立と鑑定スキームの確立により、アンティークコインの業界に透明性が生まれ、多くの人がアンティークコインを投資の対象にできるようになりました。
そしてこの仕組みが都合よくコインの値上がりにつながっているのです。
まず、鑑定会社の収益は鑑定する手数料になります。
そのため儲ける為には数をこなしていく必要があります。
そこで鑑定会社はコインの評価額を少しずつ上げていきます。それは所有者が喜び、価値が上がったとなればさらに鑑定をしたくなる、という仕組みなのです。
その為、コインの価格改定が定期的に行われています。
こうなるとコインのオークションも活気づき、オークションでコインが高く売れたという実績が増えて取引量が増えていきます。
オークション会社も取引手数料ビジネスなので数をこなせばそれだけ儲かることになります。
このようなコインの所有者、鑑定会社、オークション会社の3社とも儲かる循環の仕組みが出来上がっていることがアンティークコイン業界の強みでもあります。
アンティークコインのメリット
それでは、アンティークコインのメリットから見ていきましょう。
- 価格が安定して上がる
- 投資予算が自由
- 価格が暴落しない
- いつでも換金可能
- 維持費がほとんどかからない
- そのもの自体に優位性がある
- 匿名性が高い
こちらを1つ1つ解説していきますね。
価格が安定して上がる
アンティークコイン自体の発行数がすでに決まっていますので、そもそも数に限りがあります。
また安全資産に注目が集まっているという背景、投資家だけではなくコレクターの収集により、市場に出回る数が今後減っていくことが予測されます。
とくにアンティークコインに注目する人々は富裕層が多く、一度手に入れるとなかなか手放さない場合も多くあるのです。
前段でのべた業界のスキームも安定値上がりの大きな要因です。
投資予算が自由
アンティークコインは富裕層が行うイメージが強いと思われがちですが、各自の事情に応じて投資額が設定できるようになっています。
数千円から数万円とコインの値段は幅広く、それぞれの懐事情、嗜好に合わせて購入が可能になっています。
コインの価格の伸びは、そのコインごとになる為、何が急激に値上がりするのかは分かりませんが、コインの性質上、価値の暴落が無いという実績が多くあることも確かです。
価値が暴落しない
暴落しない要因として、世界中に強い購買力があること、長期投資の対象商品である、保有者の売る理由が少ない、世界経済の動向に巻き込まれにくい。があげられます。
海外では本格的な投資目的、コレクターの購買対象になっていることが多いので、コイン相場は下がったとしてもすぐに買いが入ります。
また株式のような相場による一斉売りなどはコイン相場では起こりません。
そもそも短期売買で利益を上げる投資商品ではないので相場のプロがいないというものあります。
そしてコインが売りに出される際はやむを得ず手放すといった理由が多いということも価格の暴落がしない理由になっています。
いつでも換金可能
コインの換金はコイン店で行います。
全国に100か所程度存在していますが、オークションなどでの売却も可能です。
また、世界各国でも盛んに売買されており、海外でも換金も可能です。
相場は誰でもがわかるようになっており、インターネットで情報は公開されていますし、コインカタログなども存在しており、相場が載っています。
鑑定会社のサイトに行けば細かい情報まで確認することが可能です。
維持費がほとんどかからない
現物資産では、例えば不動産なら維持費(管理費、固定資産税、修繕費)がかかり、家賃収入までの労力を考えると非常に手間も費用もかかります。
絵画やクラッシックカーなどもメンテナンス費用、管理費用が必要になります。
それに比べるとコインの保管はほったらかしでも良いと言えます。
そのもの自体に優位性がある
コインは他の資産に比べると保管に手間もかからないし、形状も小さく持ち運びしやすい、そして隠しやすいといったメリットがあります。
過去の歴史をたどると戦争や災害から持ち主の命と共に逃げてきたものであるとも言えます。
匿名性が高い
株式や投資信託、為替取引、積み立てNISAなどは投資を行う際に金融機関を使わないといけません。
金融機関の口座を開設する際には個人情報を開示する必要があります。
金・ゴールドを購入する際にも身分証明書の提示が必要です。
しかしコインの売買ではその義務はなく、海外のディーラーから買う場合でも個人情報の開示は不要です。
私たちが通常行っている投資商品の裏側で取引されていた歴史を垣間見るようですね。
アンティークコインのデメリット
次にデメリットを見ていきましょう。
- 盗難のリスクがある
- 長期で考えるのが基本
- 値上がり幅がコインの価値に比例する
- 偽物リスク
- 遺産相続時の問題
こちらも1つ1つ解説していきますね。
盗難のリスクがある
皆さんのご想像通り、コインは小さいし持ち運びしやすいのでその分、盗難されやすくなります。
保管の際は非常に気を付ける必要があると言えます。
長期で考えるのが基本
価値が上がる速度が遅く、株式のような相場で考える事は出来ません。
10年単位で持ち続ける事が業界の基本的な考え方です。
ですからすぐに現金化しないといけないような状況がある人には向いていない投資と言えます。
値上がり幅がコインの価値に比例する
コインを投資対象としてみた場合、小額のコインをたくさん買うよりも高額のコインを一点集中で買う方が値上がり幅が大きいという実績が多くあります。
購入者に富裕層が多いという状況を考えても、利回りを考えるのであれば、勝負するコインを選んで高額なコインを購入しておく方が良いでしょう。
偽物リスク
商品の性質上、偽物を掴むリスクは切り離せません。
鑑定会社が保証しているケース入り以外のものを購入する際は気を付ける必要があります。
またインターネットなどで販売者の顔が見えないような状況で購入する際も細心の注意を払うべきでしょう。
遺産相続時の問題
もしも保有している方が亡くなった場合、その遺族の方々がコインをどうするのかという問題が発生します。
遺族の方にコインの知識がない場合には、その価値を発揮できずに処分される場合もあり得ます。
まとめ
アンティークコインは日本ではまだまだマイナーな投資商品ですが、世界的に見ると数百年もの昔から行われてきた資産運用です。
コインの性質上、他の金融商品と随分と違った投資対象にはなりますが、これからの世界動向を考えると有効な投資対象の一つと言えるでしょう。
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