「働き方改革」に伴い、副業を認める会社は大企業の中でも少しずつ増えてきています。
あなたの会社ではどうでしょうか?
「働き方改革」とは2016年9月、安倍晋三首相が内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置することによりスタートした、少子高齢化、生産年齢人口減少社会への対応策の一つです。
日本は今、とても速いスピードで少子高齢化が進んでいます。これから日本全体の生産性を上昇させるなど、何らかの対策を行わなければ、現在と同等レベルの社会を維持できるかどうかわからない状態になっている、と考えられています。
経済成長が鈍化すれば、私たちに明るい未来はありません。
「働き方改革」では「一億総活躍社会」を掲げ副業が推進され、この数年でさまざまな事情から副業を始める人が増えました。
副業は収入を増やす新たな機会になっているのです。
新たなスキルの獲得や新しい人的ネットワークの構築ができ、勤務先での解雇、勤務先の倒産にも備えられるという利点もあり、目の前に漠然とある不確実な未来に備えるために「自ら副業を持つことで新たな収入増に取り組んで下さい。」というメッセージでもあります。
ただ副業を認める会社が増えてきているとはいえ、会社に届け出をしなくてはいけない、本業と競業しない、本業の業務に支障を出さないなど、多くの制約があります。
サラリーマンとして就業規則に従わないといけないのは当然ですが、副業を始めると言っても漠然としていて、何から手を付ければよいのかわからない人も多いかも知れません。
ですが、はたしてサラリーマンの方々が収入を増やす方法は副業だけなのでしょうか?
世の中には「資産運用」という選択肢も存在しています。
個人の収入を増やすうえで、副業と資産運用にはどのような違いがあるのでしょうか。
ここから詳しく見ていきましょう。
目次
副業について
そもそも副業に明確な定義はありません。
しかし、多くのサラリーマンの方は就労規則違反になるのではないかと危惧されると思います。
前段階の説明として、なぜ企業が副業を就労規則により禁止しているのかというと、大きな理由としては3点考えられます。
本業を疎かにさせない
副業に時間と手間を割かれ、本業を疎かにされると会社としては大きなロスとなります。
夜遅くまで副業を行ったために、昼間の業務効率の低下につながるような事になるかもしれません。
情報漏洩の防止
企業はそれぞれ独自の技術、ノウハウなどを持っています。
それらが企業の武器の場合、情報が漏れた際に企業は損害を被る可能性があります。
特に競合他社や同業界で兼業していた場合、自社の秘密が漏洩する可能性があるためです。
トラブルが起きた際、会社の評判が下がる
例えばA社の社員が副業で不正を行いそれが話題になり、テレビや新聞でA社の社員が不法行為をしたと報じられてしまうと、会社のイメージが著しく傷つくリスクが考えられます。
また本業以外に別の仕事で収入を得ているようなことがあれば目につきやすく、そもそも就労規則でも禁止されています。
とくに公務員に関していえば国家公務員法で禁じられている保行為になります。
このような理由により、多くの会社では副業が禁止されているのですが、本業の妨げにもならず日々の業務を普通にこなせる範囲で収入を得られる方法があります。
それが「投資」による資産運用です。
資産運用について
投資による資産運用とは、株式投資や不動産投資、FXによる資産運用の事です。
一般的に投資は「資産運用」は副業に該当しないと言われていますが、そもそも「副業」と「資産運用」には本質的な違いがあります。
副業が個人が実際に労働し「対価としてお金を得る行為」であるのに対し、資産運用とは「資産を活用することで、収入を得る」という不労所得になります。
不労所得とは、その所得を得るために、労働する必要がない所得全般のことを言います。
配当、利息、家賃収入、売却益などがこれに該当します。
また、株式投資や不動産投資が副業にあたらない根拠はきちんと存在します。
法的根拠がない
過去の裁判の事例では就労規則により、兼業を全面的に禁止することは合理性に欠けると判断されています。
サラリーマンの副業禁止は民法や労働法にも特に規定が設けられておらず、就労規則に副業禁止が明記されても、会社は社員に副業を止めさせる法的根拠はありません。
株式投資、不動産投資、FXなどは資産運用の一部
投資は財産の一つの形であると言えます。
個人財産の保持形態はどのような企業であれ干渉することはできません。
時としては本人の意思とは関係なく、株式や不動産が相続されてしまう事もあります。
そのような理由から会社により規制することはできないとされているのです。
ただし、株式投資やFX取引(外国為替証拠金取引)を就業時間中に頻繁に行う。
会社、もしくは会社内での立場から得た機密情報を投資に利用する(インサイダー取引など)、運用に伴う作業を睡眠もせずに行ったため、昼間の業務に悪い影響が出たような場合には、服務規律違反や就業規則違反に問われる可能性があります。
事業所得と雑所得の違い
次は所得の違いの点から確認してみましょう。
事業所得とは
国税庁のホームページから引用しますと「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。」とあります。
一般的な考えでは、独立しており継続的に事業をおこない収入を得ている場合は事業性があると言えます。
例えば定期的に商品を製造し、その商品を売って利益を得るような場合は事業性があるとみなされて事業所得となり課税対象になります。
一方使わなくなった衣類、雑貨、本などの物品をネットで売って収入の足しにするような場合は、日常生活用品を売るだけの行為とみなされ事業とは定義されません。
雑所得とは
国税庁のホームページを引用しますと「雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金など非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。」とあります。
サラリーマンの人が何かしらの機関から依頼され、セミナー講師をして講師料をもらう事や、ちょっとした雑誌や冊子などの原稿を頼まれて原稿料を得るような場合は雑所得になります。
執筆業や講師業を専業にしている場合は事業所得になります。
(※9種類の所得は利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡・一時所得を指す)
「副業」と「資産運用」の税金の違い
また実務面での違いとして、副業と資産運用では税金の種類も異ります。
副業による収入
副業による収入は、雑所得という項目で捉えられる事が多く、売上から経費を差し引いた金額と他の所得とを合算したものに課税されます。
本業の収入が多かった場合、かなりの課税額(約15%〜約55%)になることがあります。
また、赤字だったとしても、いわゆる「損益通算」はできません。
資産運用による収入
資産運用にかかる税金は、金融資産への投資であればほとんどの場合約20%の分離課税の適用となります。
不動産投資の場合は売上から経費を引いた不動産所得を他の所得と合算した後に、所得額に応じて約15%〜約55%が課税されることになりますが、赤字だった場合は全体としての税額が減る「損益通算」が可能となり節税効果というメリットがあります。
資産運用の種類
では最後に、サラリーマンの方々が副業とみなされず、収入を得る手段「資産運用」を行う際の具体的な注意点を見ていきましょう。
副業にあたらず、それなりの利益を見込める運用手法には
- 株式投資
- 不動産投資
- 投資信託
- FX
などがあります。
しかしここで重要な事は資産運用と本業のバランスです。
サラリーマンや公務員の方が資産運用をする際、あくまでも主軸は本業であることを忘れないで下さい。
確かに各種の運用で利益を得ることができる可能はありますが、本業の水準に満たされるほど高い利益を出すためには、本業と同じくらいの労力(知的労力も含む)が必要な場合が多いのが現実です。
仮に利益が出たとしても安定性という面で、株式やFXは本業と比べて不安定と言えます。
サラリーマンや公務員であれば、毎月必ず入ってくる給料という安定的な収入があります。
その一方で株式やFXの利益というのは非常に不安定で、トレードの結果によっては損失も発生します。
そのため、株式やFXの利益を頼りに生活するのはあまり現実的と言えません。
運用で得る利益収入に主眼を置いてしまい、本業で得る給料を疎かに考えてはいけません。
給料の方が人生設計において重要であるということ心に刻み込んでおいてください。
実際的に資産運用で利益を上げていくためには、どうしてもある程度の時間や手間がかかってきます。
特に初心者のうちは、資産運用の勉強や調査に取られる時間もかなり必要になると思われます。
しかし自ら働いて時間を費やし、第三者から収入を得る副業と、自己責任の下で出資して自らの頭と時間を使って行う資産運用とでは精神的な疲労度合いが違ってきます。
自分の時間を切り売りした労働を収入源にしてしまうと時間の限界がある事から、得られる収入には上限があります。
資産運用では時間的な制約を受けることはありません。
運用を長く続けて資産が増えると、その資産を利用してさらなる収入を増やすことも可能になります。
まとめ
一般的な副業に比べると、資産運用による収入は魅力的なものには違いありません。
自分自身の労働力の対価として収入を得るのと、資産運用のように自分の手元にある資産を活用することによりさらに収入を得るというのは、考え方のシフトチェンジが必要です。
そこには大きな違いがあります。
資産運用は確かに有益であり、これからの日本社会の中で生きていく上ではあった方が良いスキルの一つではありますが、本業を疎かにせずそれなりの収入を資産運用で得るためには知的な努力も必要であることも忘れないで下さいね。
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