不動産相続の必要な手続きと節税のポイントを伝授

不動産相続の手続き

不動産投資をやっていると、「自分が死んだら、この不動産はどうなるのだろう?」と、誰もが一度は考えるはず。

もともとは、豊かな生活をおくるために、不動産投資をおこなっているわけですから、自分が死んでしまった後に、残った不動産で、家族の生活に迷惑がかかってしまうのは、本末転倒ですよね。

そこで今回は、「不動産の相続には、なにが必要になるのか」そして、「節税することはできるのか」について、解説したいと思います。

不動産相続の流れ

不動産に限らず相続の場面では、必ずいくつかの手続きが必要になってきます。

あなたも何かを相続する可能性があるわけですから、その時のために、ぜひ参考にしてくださいね。

その1:遺言の確認

テレビドラマの中だけでなく、「遺言」は実際に存在します。

遺言を残していると、周りに伝えない方も、当然いらっしゃるので、財産を持つ親族が死亡した際は、まず遺言があるかどうかを確認してください。

遺言があれば、遺言の通りに相続が進行します。

ただ、不慮の事故であった場合は、遺言を残している確率は低いですし、そもそも、2019年に遺言が作成されたのは、わずか「113,137件」なので、日本人の0.1%の方しか、遺言は残していないんです。

なので、以降は遺言がなかった場合のお話をいたします。

その2:相続人の確認

遺産はすべての親族が相続できるわけではありません。
ですので、あなたが死亡したときの状況によって決まります。

結婚してお子さんがいる、ヒロシさんという男性が亡くなった場合は、以下の方々に相続が発生します。

基本的に相続が発生するのは、「配偶者」と「子供」です。

ちなみに、「配偶者」は、死亡時を指すので、離婚歴のある方は「元夫」や「元妻」に相続は発生しません。

しかし、元夫や元妻との間に生まれたお子さんには、現在の状況に関係なく相続が発生します。

もし、お子さんがいらっしゃらない場合は、ご両親に相続が発生し、ご両親もいない場合は、ご兄弟に相続が発生します。

その3:遺産を分ける

相続人が分かったら、次はいよいよ財産の分割です。

先述した通り、遺言書があれば、それに従って財産は分割されるのですが、遺言書がないときは、相続人同士で話し合う必要が出てきます。

この話し合いのことを、遺産分割協議と呼びます。

言葉を見るだけで難しそうな印象を受けますが、要は、相続人同士が話し合いさえできればなんでもいいので、電話やメールやSNSでのやり取りで終わってしまうケースもあります。

ただ、不動産などの財産を残すのであれば、さすがにしっかりと話し合ってほしいですよね。

なので、遺産分割協議をしてほしいのなら、その旨を遺言に残しておくことをおすすめします。

気になる分割の方法ですが、遺産分割協議では、全員の合意があればどんな形で分割しても大丈夫です。

つまり、全員の合意があれば誰か一人が遺産を相続することもできます。

ただ、相続人同士でモメないよう、法定相続という続柄別の相続割合をベースに話し合うことが多いです。

遺産相続でモメると、数年はかかると言われているので、遺言を残すことはかなり重要なことなんです。

3種類の相続について

テレビドラマの遺産相続では、数十億という莫大なお金を手に入れられ、一夜にして大金持ち。

なんてシーンがよく見られますが、実際の相続では、利益だけでなく負債も一緒に相続しなければいけません。

もしあなたが、1000万円の不動産を所有していても、ローンが2000万円あれば、相続人は2000万円のローンも強制的に相続することになります。

払えるなら問題はないのですが、払うことができない方もいるため、相続には3つの種類が存在しています。

相続①:単純承認

1つ目の単純承認は、利益も負債も両方相続することです。
こちらの形式が、一般的に知られている相続です。

単純承認は特別な手続きがないため、そのまま進めればいいのですが、先ほどもお伝えした通り、故人に借金があるなら「財産と負債」は強制的にセットになってしまいます。

なので、単純承認をしたくない場合は、これからお伝えする2つ目と3つ目の形式をすることになります。

相続②:相続放棄

2つ目の形式は相続放棄です。
読んで字のごとく相続自体を放棄することです。

相続放棄をすれば、当然資産はもらえませんが、借金を背負うこともありません。

この相続放棄は各個人に認められているので、他の相続人の合意は必要ありません。

相続③:限定承認

3つ目の限定承認とは、遺産の調査をしたけれど、借金がどれくらいあるのか分からないときなどで使用します。

簡単に説明すると、プラスの財産で借金を清算し、利益が残ればそれを相続するという形になります。

もし、プラスの財産が1000万円だったとして、調べた結果3000万円の借金があった場合、1000万円は借金返済にあてられてしまいますが、残りの2000万円に関しては支払う必要はなくなります。

ただ、限定承認は個別の判断で行うことができないため、遺産を限定承認で相続するためには、相続人全員の合意が必要になります。

限定承認は「利益は残ればもらえて、借金は余っても拒否できる」ので、一見便利に見えますが、実際そう甘くはありません。

限定承認をおこなうと、実質弁護士に依頼することになるため、別途費用が発生しますし、期間も半年程度かかってしまいます。

さらには、譲渡税も発生するので、4か月以内に確定申告をする必要が出てくるため、何かとめんどくさいので、お気を付けください。

相続放棄と限定承認は、「相続が発生したと知った日から3か月以内」に手続きを行う必要があるといことも覚えておいてください。

3ヶ月を過ぎてしまった場合は、単純相続とみなされてしまいます。

不動産は分割できるのか

いくつも不動産を所有していれば、「このマンションは長男」「この土地は妻」など、相続人ごとに割り振ることもできますが、所有している不動産が1つだった場合、1人しか相続することはできません。

つまり、「1階は奥さん、2階はお子さん」という相続はできないということです。

ただ、土地であれば、分割することができます。

もしあなたが、100坪の土地を持っていたら、「50:50」や「70:30」のように、分割して相続することができます。

これを「現物分割」と呼ぶのですが、土地を現物分割する際は、100坪よりも、もっと広い場合でないと、利用価値や資産価値が下がってしまうため、おすすめできません。

ちなみに、「自宅」も不動産にあたるので、投資目的の不動産を今は所有していなくても、持ち家があれば、不動産相続は発生します。

不動産相続と節税につて

不動産に限らず、遺産を相続すると必ず税金が発生します。
相続する遺産の総額によって、税率が決まるため、具体的にいくらとはお伝えできないのですが、気になることは「節税はできるのか?」ですよね。

最初に申し上げておくと、相続人が相続をする際にできる節税は特にありません。

相続が発生してしまったら、それに伴う税金を減らすことはできなんです。

なので、相続時に発生する税金を安く抑えるためには、生前から準備しておく必要があるんです。

相続と生前贈与

相続の知識が少しある方は「相続と生前贈与どっちが得だろう」と考えたのではないでしょうか?

不動産の場合、「相続」の方が得になります。

不動産を取得すると「不動産取得税」と「登録免許税」の2つが発生します。

1つ目の不動産取得税は、土地や自宅なら「固定資産税評価額の3%」
テナントなどの非住宅なら「固定資産評価額の4%」が課税されます。

2つ目の登録免許税は、生前贈与の場合「固定資産税評価額の2%」が課税されます。

しかし、これが相続になると、不動産取得税は「なし」になり、登録免許税は固定資産税評価額の0.4%まで下がります。

1000万円の不動産と仮定した場合、

    【生前贈与】
    不動産取得税:1000万円×3% = 30万円
    登録免許税:1000万円×2% = 20万円
    合計:50万円

が発生しますが、相続の場合だと、

    【相続】
    不動産取得税:0円
    登録免許税:1000万円×0.4% = 4万円
    合計:4万円

と、圧倒的に安くなります。

誰に相続させるのか

遺産は故人と相続人の関係によって、税率が変わってきます。

相続をする場合、配偶者が一番税金を優遇されます。

わかりやすく置き換えると、ご主人が亡くなった場合、奥さんが一番優遇されると言うことです。

金額でいうと、「最低1億6000万円」が非課税になります。
つまり、配偶者は最低でも1億6000万円はまるごと相続できるんです。

なので、配偶者に相続させることでも、節税になるんです。

不動産相続:まとめ

不動産相続の解説はいかがでしたか?

記事を読めばおわかりのように、相続とはとても面倒なことなんです。

場合によっては揉め事の原因にもなりますし、家族のためを思っていたのに、逆に生活を圧迫する結果を生んでしまうなど、「もう死んでるからいいや」では、済ましづらい側面もあります。

スムーズな相続と親族の良好な関係を続けるためにも、遺言を作成しておくことを、改めてオススメいたします。