退職金で資産運用するときのポイントと注意点を徹底解説

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資産運用を始めるタイミングとして、退職金のように大きな額が入ってから始めようと考えている方は多いのではないでしょうか。

また、金融商品を扱う営業から進められることもあるかと思いますので、まずはこの記事を読んで、冷静に運用方法を考えていただきたいと思います。

退職金で資産運用をする時の注意点

まず、退職後に資産運用を考えた場合、絶対やってはいけないことを述べます。

ここはとても重要な項目となりますので、必ず目を見開いてしっかりと読んでくださいね!

「退職金で一気に高額投資をやってはいけない」

もし、金融商品を進められたときには、孫の名前を思い出せなくてもこのフレーズ「高額投資デビューはご法度」を思い出してください。

下記、ダイヤモンドオンライン(2020.6.15)の記事からの抜粋ですが、

退職金での高額投資デビューはご法度
金融機関は虎視眈々とあなたの資産を狙っている。
退職金が口座に振り込まれると、振込先の金融機関が営業をかけてくることは珍しくない。
だが、銀行の営業員の言うことを真に受けると、思わぬ痛手を負いかねないので注意したい。というのも、大金を手にした資産運用の知識が浅い“投資素人”は、手数料の高い商品を勧めて囲い込み、収益につなげる上で格好のターゲットとなるからだ。

こうした点を踏まえ、経済コラムニストの大江英樹氏は「投資経験のない初心者が、退職金をつぎ込んで投資デビューすることだけはやってはいけない」と警鐘を鳴らす。

退職一時金を手にした退職者に、金融機関が勧める代表的な金融商品には、外貨建て保険や個人向け社債、仕組み預金やファンドラップなどがある。また退職者向け優遇金利を適用する定期預金と投資信託をセットで販売する「退職金プラン」では、年5%など高い利回りをちらつかせながら、対象となる投信の手数料は3%にも上るといった仕掛けが組み込まれていることが多く、決して飛び付くべき商品群ではない。

退職金を手にした際に訪れるかもしれない危険について、より具体性を感じていただく為に実際の記事を引用しましたが、これは巷に溢れている事例の一つです。

この罠にはまり、大切な退職金が何割も減ることになってしまったり、思うような運用利益を出せていない方が数多く存在しています。

このような事態にならない為にも、退職後で一息つきたいところではありますが、資産運用については新たな気持ちで向かい合い、今までの人生経験と同様、しっかりと勉強してから始めて下さい。

老後必要な資産額

お金の計算
では、退職金で失敗をしない資産運用を計画するために「シニアライフに必要なお金はどれくらいなのか」を見ていきましょう。

生命保険文化センター令和元年度「生活保障に関する調査」によると、夫婦2人(高齢夫婦無職世帯)で老後生活を送るための「最低日常生活費」は平均22.1万円という調査結果が出ています。

また、日常の生活費以外に余暇を楽しみながら暮らす場合の「ゆとりある老後生活費」は平均で36.1万円という結果でした。

「総務省の家計調査報告(令和元年)」を確認すると、高齢夫婦無職世帯の消費支出の合計は23万9,947円

さらに税金などの非消費支出分の30,982円を加えると、実支出は27万929円。実支出とは、消費支出と非消費支出を合計した支出のことです。

統計による「最低日常生活費」より上回る結果が出ています。

一方、収入を見てみますと平均は23万7,659円となっていますので、

27万929円-23万7,659円=3万3,270円
毎月ごとに3万円以上の赤字が出ている計算となります。

年齢と必要な資産

次に年齢と必要な資産の計算をしてみましょう。

平成30年簡易生命表の概況によると男女合わせた平均はだいたい85歳なので、65歳を起点とするとまだ20年間という時間があり、その期間に想定される赤字は、

33,270円×12ヶ月×20年=7,984,800円
日常生活費だけでも20年間で、700万円以上足りなくなるという試算結果になります。

学歴や所属していた会社の状況により、退職金の額面は変わってきますが、想定される医療費や、老人ホームへの入居費用など、生活費以外の支出があることを考慮すると、計算上ではありますが経済的に非常にシビアな生活になってしまう可能性があります。

あくまでもここで書いたことは、老後の計画をきちんと立てるために考え方なのですが、実際のところ、各家庭に必要な老後資金は各家庭に応じた年間赤字を算出する必要があります。

2019年には老後2000万円問題が大騒ぎとなり、老後は2000万円もショートしてしまうのか、と心配された方もいるかもしれませんが、心を落ち着けて自分の現状を分析してみて下さい。

そのような現実から考えてみても、楽しいシニアライフを送るためには退職金を元手に運用を考える必要があると言えるでしょう。

では次に退職金を運用、投資するにあたっての考え方を具体的に見ていきましょう。

退職金の運用で押さえておきたいポイントとは?

ポイント
退職金を運用するにあたり、押さえておきたい注意点がいくつかあります。

営業窓口や人任せにせず自分で運用方法を見極める

今まで資産運用をしたことがない方は、いざ退職金の運用を検討しても何をどうすればいいか分からないかもしれません。

退職金を受け取る年齢になると、多くの金融機関から退職金の運用方法について提案を受けるようになります。

プランナーやアドバイザーと呼ばれる担当者が運用商品を勧めてくれるので、こちらに知識がない場合は、それらの金融商品がとても良いものに感じがちです。

しかし、退職金の運用方法は決してアドバイザーのような人任せにせず、自分自身でもしっかりと勉強し、商品や運用方法が自分に合っているかどうかを見極めなくてはいけません。

金融窓口のアドバイザーは運用益を出せるプロではありません。

金融商品知識が多くある人と捉えるくらいの方が良いかも知れません。

失敗を避けるためには、それぞれの運用方法におけるメリット・デメリットを自分自身でしっかりと把握することが重要です。

リスクが低い運用を心がける

退職金は目の前にある老後の生活資金に直結するため、減らすわけにはいきません。

できるだけリスクが低く、安心して運用できる方法を心がけて下さい。

リスクを恐れすぎて資産運用に手を出さないという思考になるのではなく、リスクの少ない投資先に投資して、資産運用を続けていくこと自体が重要なのです。

金庫お金を入れておいても増えることはありませんが、資産運用をすれば少しずつでも手元資金を増やすことが可能です。

リスクのない投資をメインにして、リスクのあるものは余剰資金の10%程度を投資にまわしていくのが良いでしょう。

分散投資を心がける

退職金のすべてをリスクの高い金融商品に投資するのはご法度です。

もしも失敗した場合、大きな損失を被り、取り返しがつきません。

まずは退職金を当面の生活に必要な資金と余裕資金に分け、余裕資金だけを運用するようにして下さい。

万が一、失敗するようなことがあっても一定の生活資金は確保しておくことが必要です。

また、資金をひとつの金融商品で運用した場合、失敗すると損失額も大きくなります。

資産運用を始める際の基本的な考えでもあるのですが、リスクを軽減させるためにも複数の商品に分散して投資することを心がけて下さい。

貯蓄を2つに分けて管理する

60代からの資産運用では、「残すお金と使うお金」について考えることが大切です。

すべての資産を投資に回すことは適切ではありません。
その場合、

  • 流動性資産(安全性資産が高い)
  • 収益性資産(長期に保有する)

この2つに分けて考えるとよいでしょう。

使う予定がある資金は値下がりすることも無く出金がしやすい預貯金などに置いておきます。

資金の安全性と流動性は確保できますが、金利はほぼ無いでしょう。

特に使う予定がない資金は、長期の保有を前提として運用をおこないます。

株式や外貨建て資産、不動産などは長期間での運用であれば、ある程度の収益が期待できるものになります。

定期的な見直しが必要

退職金の運用を始めても、そのままにしておくのではなく定期的な見直しが必要となります。

「流動性資産」「収益性資産」の割合は、自分やご家族の状況に変化があった際に行います。

特に「収益性資産」は価格変動がある商品ですので、今後の見通しが運用のポイントになってきます。

例えば株式での資産運用を想定してみますが、状況が悪くなり一時的な値下がりをしていても回復が期待できるのならそのまま保有した方が良く、将来的な期待ができないような場合は投資割合の修正が必要となります。

運用初心者の注意点としては、短期的な動きに惑わされ頻繁に売り買いをしてしまい、長期的な成果も得られなくなるという点です。

自分なりに定期的な見直しの時期を決めて、保有資産の状況をチェックしていくとよいでしょう。

まとめ

退職金は老後の生活にも直結する大切な資産です。なるべく減らすことなく、増やしていくためにも、リスクの高い運用ではなく安全な運用を心がけて下さい。

人生を終えるまでに資産を使い切ってしまうことがあってはいけません。

老後の生活をエンジョイするためにも必要なお金を把握しながら資産運用のスキルもあげていってください。