現在、金融庁や内閣府が発信している経済政策の柱の一つは、「貯蓄から投資へ」というもので、これは簡単に言えば、「銀行預金、郵便貯金をやめて株式、債券、投資信託を買おう」ということです。
とはいえ日本においてはまだまだ資産運用に積極的に取り組んでいる人は少ないですが、近い将来、資産運用もスタンダードな考え方になっていくと思われます。
資産運用を始めようと思ったときに、まず何をしたらいいのかわからないという方が多く、誰に相談したらよいのか?と考えたときに、一番に思いつくのは銀行かも知れません。
そこで、当記事では、銀行における資産運用の方法や具体的なメリット、デメリットまで解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
銀行での資産運用を考える際、まず知っておくこと
銀行での資産運用を考える場合は、金融業界を取り巻いている環境を知っておきましょう。
銀行の立場から見るとここ数年、住宅ローンは低金利化が進み銀行は利益を得にくくなっています。
融資も、ネットを介して資金提供者を募集するクラウドファンディングが台頭してきており、銀行の出る幕は減ってきています。
また、銀行口座が不要で個人間の送金ができる仕組みも整いつつあり、各個人が必要としていた銀行業務の概念が時代と共に変化してきており、従来の銀行が行ってきたビジネスモデルでは立ちいかなくなることが予測されつつあるのです。
さらにキャッシュレス化の波で、ATM手数料による収益モデルも陰りが出ており、銀行の経営はこれから安泰とは言えない時代に突入してきています。
そういった背景の中で銀行にとって金融商品の販売手数料は重要な収益源となりつつあるのです。
銀行を取り巻く環境が苦しい中、安易に相談したら窓口で自分のニーズに合わない運用商品をすすめられる可能性も無きにしもあらずだと思われます。
銀行ですすめられた金融商品が自分にとって適切かどうかを、しっかり見極める必要があるという事を認識してください。
銀行でできる主な資産運用
実際に、銀行における資産運用にはどのような種類があるのでしょうか。
銀行でできる主な資産運用をご紹介していきます。
- 円預金
- 積立円預金
- 外貨預金
- 積立外貨預金
- 投資信託
- 積立投資信託
- NISA(少額投資非課税制度)
- つみたてNISA
- ジュニアNISA
- 外国債券・国内債券・株式等(金融商品仲介)
- 終身保険・年金保険等
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 国債
- 地方債
- 相続・信託商品
- 貸金庫
ほとんどの方が銀行=(イコール)預金というイメージが強かったと思うのですが、これだけの金融商品を取り扱っているのです。
一見、これだけの金融商品があれば、銀行で運用すればことが足りると考える人もいるかと思います。
ですが、銀行での資産運用はメリットもありますが、デメリットも存在することを知っておく必要があります。
銀行で資産運用する2つのメリット
まずは、銀行で資産運用するメリットを2つご紹介します。
対面で相談できる
街中に数多くの店舗を持つ銀行のメリットは何といっても気軽に窓口に行くことができ、対面相談が可能というところです。
直接質問でき、その場で疑問を解消できるのは大きなメリットです。
近年はインターネットで金融商品の購入ができるようになり一面的には便利になってはいますが、第三者に相談できない点が大きな不安要素となっています。
メールやチャットでの問い合わせサービスを準備してくれているのですが、時間がかかることと、こちらの質問に含まれる微妙なニュアンスや気持ちをメールで伝えるのはなかなか難しくなります。
銀行なら顔を合わせて相談できるので、細かいところまで質問が可能です。
その為こちらの疑問も素早く解消できますし、時間も有意義に使え、安心感を得られる方も多いでしょう。
また、対応力の幅広さが銀行の大きな強みになります。
個別に金融商品を購入できることだけではなく、資産全体の相談をすることも可能です。
例えば、資産運用を専門担当に総合的、包括的に一任できるファンドラップ(銀行や証券会社に運用を全て丸投げできる口座のこと。担当者が投資家にあった運用スタイルを提案してくれる)では、個々の投資方針に沿った運用を行ってくれます。
お金の相談はオールマイティ
銀行は貸出し業務が本業ですので、当然住宅ローンを取り扱っており、教育ローンや多目的ローンなどもあります。
お金を借りる時は返済能力も考慮されるため、実際に融資を受けられるかどうかは別の問題なのですが、人生のさまざまなシーンでお金の相談ができるのは魅力の一つと言えます。
また銀行は、生命保険や個人年金保険などを取り扱っている点も見逃せません。
資産運用に興味はあっても今一つ踏み出せないでいる人には、将来の受取額が決まっている生命保険を活用するという方法も考えられます。
銀行なら投資と保険についてその場で比較することが可能なのです。
このように銀行で資産運用を相談する場合は、お金にまつわることはすべて対応できるというメリットがあります。
自分で多方面にあたって自己管理するのではなく、一つの窓口でサービスを受けたい人には銀行が向いていると言えます。
銀行で資産運用する3つのデメリット
対して、銀行で資産運用することのデメリットもいくつか存在しますので、しっかり把握しておきましょう。
手数料が高い
お金に関しては非常に幅広い業務を行ってくれる銀行ですが、運用商品の手数料にはよく注意してください。
銀行で金融商品を購入すると、資産運用にかかる手数料が高い傾向にあります。
窓口業務における人件費や実店舗の賃料などのコストが手数料の中に含まれているからでしょう。
同じ金融商品を購入する場合でも銀行とネット証券を比べた場合、1%以上の差がある場合もあります。
例えば、100万円分の金融商品の場合、価格差は1万円程度になりますが、1億円分購入した場合を考えると100万円もの差が出てきます。
コストが高くなってもその分、対面相談ができるから安心だし、それでも良いと考えるならデメリットとはいえません。
資産運用において自分は何を重視するのかよく考えてから行動した方が良いと思われます。
証券会社に比べると選択肢が少ない
先述しましたように銀行では多数の金融商品を取り扱っています。
銀行でNISAを開設することもできますし、銀行窓口には色々な商品のポスターが貼ってあります。
預金以外でも資産運用に適した商品は取り扱っているようにみえます。
ですが、銀行は世の中にある金融商品の総量から見ると、取り扱っている金融商品が多いとは言えません。
わかりやすい例でいうと、まず株式を購入することができません。
ETFやREITなども購入できませんので選択肢の幅は少ないといえます。
投資信託の購入は可能ですが、証券会社に比べて種類が多いとは言えません。
多くて数十種類でしょう。
現在、日本には5000種類以上の投資信託が存在しています。
積極的に資産運用をしたい方にとっては、この選択肢の少なさはデメリットと感じられると思います。
販売員との関係性が裏目にでることも
窓口で相談できる安心感とは真逆のものになるのですが、銀行での資産運用で気をつけなければならないのは窓口販売だったりする場合もあるのです。
特に給与振込みなどに使っているメインバンクの場合は注意が必要です。
それは顧客のお金の流れを銀行側が知っているからです。
口座内のお金の流れはすべて把握されていると思った方がいいでしょう。
銀行側からしてみれば給与がいくらで、どのくらい使ってどのくらい貯金しているのか、ボーナスがいつなのか、など筒抜けの状態なのです。
銀行側が知ってくれているなら、説明しなくていいから便利だと考える事もできますが、対象顧客が投資に使えるお金がどれくらいあるのかを把握した上で金融商品の提案をしてくるわけですから、疑った見方をすれば、銀行のカモにされる可能性もあり得るという事です。
そもそもの銀行の立場と顧客の立場を見比べてみると、銀行の利益と顧客の利益は一致していません。
銀行は手数料や金利差で利益をあげています。
銀行の利益は顧客のコスト、運用益のロスになります。
銀行は銀行の利益のみを考えたて提案をしてくる場合もあるのです。
すべての銀行、販売員がそうだとは言えませんが、銀行と顧客の関係の根本的な関係はそのようなものであると理解したうえで相談することをお勧めします。
銀行で資産運用はするべきか
結論から言うと、初心者にとっては選択肢の一つとして考られますが、中級者~上級者にとってはあまり必要ないでしょう。
銀行では扱う金融商品は少ないですが、初心者にとっては相談できるというのは大きなメリットです。
資産運用を始める場合、自分で情報の精査が必要ですし、普段インターネットを活用しない人にとっては難しい作業にもなるでしょう。
そう考えた時に、銀行でどのような資産運用をしていくか、相談してみることでその先のビジョンが見えることもありますので、資産運用の第一歩として活用するという意味では悪くありません。
反対に、ある程度金融商品の特徴を理解している中級者以上の人にとっては、選択肢が狭くなるので、あまり向いていないと言えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
資産運用を相談できる場は銀行以外にも存在しますし、自分で勉強することもできます。
こちらが資産運用とはどのようなものなのか、どのようなリスクとメリットがあるのか理解もさほどせず、また金融商品にも無知な状態で、初めから銀行さんの担当者はいつも親切だから、信頼して任せてみよう、という盲目的な考えは危険です。
先ずは自分自身で多方面にあたり、しっかりと資産運用の知識を付けてから相談することも考えてみてくださいね。