夢それとも幻「ペーパーゴールドとリアルゴールド」という2つの金

ゴールド 金

さて、今回は、ペーパーゴールドとリアルゴールドのお話。

リアルゴールドといっても日本コカ・コーラの炭酸飲料ではなく、「ゴールドには、ペーパーゴールドとリアルゴールド」があるという話。

ペーパーゴールドとリアルゴールドとは:幻かもしれない?

ゴールドは、紙幣や電子マネー・暗号資産と違い、それ自体が、価値のあるモノとして、世の中に存在しています。貴金属として装飾に使われたり、電子部品の材料にもなります。そして、「金貨や地金」など、眼で見ることや手で触れることができるゴールドが「実際の金=リアルゴールド」と言うことができる本当の金。

ゴールドを安全に保管するのは大変

しかし、ゴールドにも欠点はたくさん。特に保管や運搬・盗難リスクを考えると保有するのは大変。

古代のお金=貝殻や石ころに比べれば、保管しやすく壊れにくい。とはいえ、紙幣や電子マネーに比べれば、保管しにくく盗難リスクも高い品物。自宅に多額のゴールドを保管しておくというのも、量が多くなればなるほど、現実的ではなくなります。大量のゴールドを飛行機や船・車で輸送中に、強奪というのも、現実にありますし、映画業界に格好のネタを提供することになります。

そのため、ホンモノのゴールドを手元に置かず、金を裏付けにした保管証券を発行する形が、金を保有する時のスタンダードになっています。その証券を「金担保証券(SKR)」などと呼びます。

ペーパーゴールドについての問題点

さて、ここからの話は、確実な話ではありません。推測がかなり入っていますので、話半分程度でお聞きください。

世界中の投資家や富豪が持つ大量のゴールドは、金庫に眠ったままなのでしょうか。確かに、巨額の金地金は、頻繁に売買や移動されるものではなく、大銀行の地下で、証券の名義が変わるだけの存在。

これは、もったいないですよね。

そこで、この金を担保にした証券を発行するのです。私が大富豪なら、金を眠らせたままにするのではなく、不動産と同じように、金を担保にお金を借りて、他の事業や投資を行います。

その事業や投資が、成功すればいいのですが。失敗することもあるでしょう。また、成功に味をしめて、同じゴールドを担保に何枚も金担保証券を発行する。こういった悪魔の誘いに乗る銀行家や富豪がいても不思議ではありません。人間、誘惑には弱いものです。

大量に増えるペーパーゴールドは、金庫にあるのか?

それが、世界中で起きれば、あら不思議。本来、倉庫に保管されてある金の何倍・何十倍もの金が市場に流通することになります。これが、ゴースト化したペーパーゴールドの闇。

世界経済の悪化でリスクが大きくなると、金を裏付けとする上場投資信託(ETF)や金のCFDや先物取引に買いが殺到します。これが、金融商品の売買で済んでいる間は平気。すなわち、ペーパーゴールド間で、取引が行われていれば、問題ありません。保有している権利を売買するだけなら、無尽蔵にペーパーゴールドを増やすことができますからね。

しかし、ペーパーゴールドの買い手が、一斉に、金の現物を欲しがったらどうなるでしょうか?

金ETF(上場投資信託)をはじめとする膨大な量のペーパーゴールド。下手をすると、「無いものは無い」と引き渡し不可能を宣言される可能性もゼロではありません。

金の専門機関、ワールド・ゴールド・カウンシルによると金の地上在庫は、地下に埋まっている分も含めて、約20万トン(2019年末)。どんなに頑張ってもこれだけしか「リアルなゴールド」は、ないということ。しかも、民間・公的な投資用の金は、もっと少なく約7.5万トン。

さて、それに対してペーパーマネーとしての金が、どれくらい出回っているかのか、わからないのが怖いところ。ペーパーマネーのゴールドが、全額、引き出されたら、銀行の取り付け騒ぎと同じような事が起きるのではないか。というのは、金の専門家をはじめ投資家達の間でテーマになるところ。

ゴールドだけでなく、金融全般の課題

では、ゴールドだけが、危険なのかというとそんなことはありません。現在の金融市場は、デリバティブ(金融派生商品)全盛。いわゆる元の資産(原資産)の何倍もの取引が行われている中、ペーパーゴールドだけが、水増しされているわけではないということをお忘れなく。

金に限らず、不動産をはじめあらゆるモノが証券化される時代です。絵画・ワイン・原油・資源あらゆるモノをカネに替えて、運用益を稼ぐのが、投資銀行やファンドマネージャーが持つ腕の見せ所。それら、金融に携わる人達は、超一流にふさわしいモラルをもっているなんてきれいごと。

すると、どうなるか。世界中の人々が、銀行に、自分の資産を引き出しにいけば、どんな優良銀行でも、顧客に渡せる資産をすぐに用意することはできないでしょう。良くも悪くも私達は、金融とテクノロジーの発達したそういう世界で生きているのです。それは、まるで、終わらない舞踏会・ケージの車を回し続けるハムスターのようではないでしょうか。

ご安心ください。それでも、それが、現実であり、舞踏会が続くという幻想がある間は、大丈夫だと思います。

さて、それでは、この話の教訓をまとめておきましょう。

・金には、現物と証券化(ペーパー)されたモノの2つがある
・最終的に、現物の金が一番強い
・金を取引する場合、信用や資産としての金保有の有無をきちんと確かめること
・巨大な金融市場の中、金に限らず、ペーパー&ゴースト化している資産があるということを知識として知っておく

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