暴走機関車となったエルドアン大統領に見るゴールドと暗号資産の必要性とは?

金融政策

ゴールド暗号資産は、政府や中央銀行の管理下にない資産。

そのため、中央銀行や政府が、「間違った金融政策や通貨コントロールを行うリスクがない」というメリットがあります。

とはいえ、日本で暮らしていると、そんなことって起きないでしょうと思いがち。しかし、世界は広い。

このことを痛感させられる出来事が、とある国で生じています。

政府や中央銀行が間違った金融政策を取ることはあるのか

はい、ファンタジーでも過去の歴史でもなく、現在も間違った政策の元、自国通貨を人為的に下落させている国があります。

そう、かつてのオスマン・トルコの末裔。中東の大国「トルコ」とその通貨「トルコリラ」は、変わった考えを持つエルドアン大統領の元、現代経済学の理論と反対の政策を行っているのです。

トルコは、大統領の権限が非常に強く、国際機関も止めることができず。トルコの中央銀行は、大統領の言いなり。「中銀の独立性も画に描いた餅」。

エルドアン体制のトルコでは経済理論が機能しない

エルドアン大統領は、オリジナルの金融政策を採用しており、現代経済学を受け付けません。

常識と反対の信念 金利と闘うエルドアン大統領 トルコリラの運命はいかに

常識的には、インフレ率が上昇すれば、金利を上げる。つまり、インフレ=金利上昇が通例。

ところが、エルドアン大統領は「金利が高いとインフレが進む」という常識と逆の金融理論を信じています。

そのため、一貫して、中央銀行に金利を引き下げるように要求中。「金利と闘う」という信念の元に行動していますから、中央銀行もたまったものではありません。

中央銀行はエルドアン大統領の言いなり

エルドアン氏は、2007年に首相。そして、2014年の大統領選挙に当選。それ以降も権力強化につとめており、強い実権を持っています。

2017年には、国民投票によって、大統領の権限強化に成功。

その結果として、トルコ国内で絶大な権力を握り、娘婿のベラト・アルバイラクを財務大臣にするなど、経済政策そして中央銀行も支配下。中央銀行総裁は、エルドアン大統領の言いなりのまま、インフレ率を下回るレベルに金利を引き下げる以外に地位を保つことはできません。

なんと、腹心だったはずのアルバイラク財務大臣すら解任していますからね。さらに、エルバン⇒ネバティと財務大臣は交代。中央銀行総裁も利下げに反対すると解任されてしまうため、だいたい、1年ほどで交代しています。

これでは、中央銀行の独立性などあったものではありません。
三点セットで通貨の信任は下がる一方。

  • インフレなのに、金利を引き下げる
  • ワンマン独裁で、中央銀行の独立性はゼロ
  • 結果として、トルコリラは暴落

トルコの通貨「トルコリラ」は、ほぼ一貫して下落中。インフレ率より政策金利が低いため、実質金利は、大幅にマイナス。トルコリラを持っていても、インフレで資産が減る一方。

ゆえに、売られる売られる。さらに、外為市場でのトルコリラの下落が、売りに拍車をかけています。

トルコリラ円の動き

【トルコリラ/円の月足チャート】

見事な下落トレンド!!

これでは、まともに経済運営しにくいですね。名目GDP総額は、2018年の779.6(10億ドル)から2020年の719.5(10億ドル)へとダウン。

そのため、トルコでは、トルコリラ売り米ドル買いの動きが強まる一方。資産を守るために、ゴールドや暗号資産は、人気化。

人間の愚かさから資産を守れるゴールドや暗号資産の必要性

うーん。現代社会かつ人口8,000万人超の大国で、こういったことが起きるのは驚きですね。

しかし、けっして、非合法に政権を得たわけではありません。エルドアン大統領は、選挙で民主的に選ばれた大統領。もちろん、選挙に対する疑惑や反対派への弾圧という負の側面は否めずなのですがね。

今のトルコの現状を見ると「中央銀行及び通貨コントロールの難しさ」について、考えさせられます。過去の人類が積み重ねてきた叡智によるストッパーをことごとく乗り越えてきましたからね。

【ストッパー】民主的な選挙・中央銀行の独立性・経済学者による研究や現在経済学の理論・合議制

国や中央銀行が発行・管理する通貨は、人・組織が、間違った判断・行動を取る可能性がある。ならば、国や中央銀行が関与しない通貨を作ろうということが、暗号資産の魅力&意義の一つ。

その点は、ゴールドも同じ。

ゴールドと暗号資産は、国や中央銀行の管理下にないからこそ、大幅な通貨安・価値低下が起きにくいというのが大事なポイント。

人間がコントロールする通貨 市場がコントロールするゴールド どちらの価値が保たれる?

中央銀行の自動化はありえるのか

スポーツのサッカーは、ゴールやオフサイドといった人の眼で判断すると間違いやすいプレーについて、自動化を進めています。

ゴールラインテクノロジーやオフサイドの自動化などがその典型。ただし、機械やAIが判断すると、試合を壊さないための審判独自の判断がなくなってしまいますね。

金融政策も暗号資産という壮大な実験を通じて、中央銀行総裁をAI化する時代が来るかもしれません。そうすれば、通貨価値の維持というテーマを与えれば、政治や株価に左右されることなく、金融政策を取るようになるでしょう。

それまで、政府や中央銀行の暴走による通貨の下落。ゴールドの存在価値は、健在でしょう。

中国も似た体制

さて、今回の通貨問題。トルコおよびトルコリラの特別な事情といえるでしょうか。

お隣の国。中国もトルコの政治体制と似たようなところはあると思います。共産党の一党独裁という点では、トルコ以上に民主的な手続きを取っていません。

そして、民主的な選挙や政治がすべて正しいと言い切れるでしょうか。米国や欧州・日本が金融政策で、絶対に失敗しないとは言えないと思います。

だからこそ、これだけ、金融分野が進化しても、ゴールドの価値は高いままですし、暗号資産も生まれたのだと思います。