冷戦終結から学ぶ。世界が平和になれば、有事の金はどうなる?

冷戦終結 金

は、終わったと言われながら、不死鳥のように蘇る資産です。

ゴールドは、貴金属としての価値を失ったことはありません。しかし、「資産運用・投資先として、死に体となった時代」を古くからの金投資家の方は、覚えているかと思います。一度は、投資家から忘れられたゴールドの復活劇。そこから、今後の金投資について、大事なことを学べると思います。歴史は繰り返すという言葉を噛み締めながら、お読みください。

1980-90年代:冷戦の終わりとともにゴールドは、忘れ去られた

1980~90年代。ゴールドは、魅力の無い投資先でした。オイルショックで急騰した後、ほぼ、一貫して下げ相場が続きましたからね。

ゴールド 終わったと 時代

19880年代は、日本がバブル経済化。そして、世界での大事件は、なんといってもこれ。1989年11月にベルリンの壁が崩壊。1990年に、東西ドイツ統一と冷戦の終結という世界史的なターニングポイントを迎えたのです。

世界平和にとっては、非常に嬉しいニュースだった冷戦の終わり。しかし、ゴールドにとって、これ、歓迎できない事態だったのです。なぜなら、平和の到来と米国一強時代は、「金よりも株式の時代」でもあったからです。

有事の金が終わり、IT革命へ

冷戦が終わり、米国中心の世界が始まると、非常時に輝くゴールドの光は、色あせたように見えました。中央銀行や個人投資家は、万一の資産として保有していたゴールドを売りに出し、代わりに株式を買い漁ったのです。

今、暗号資産が注目を浴びているのと同じように、IT、ドットコムと会社名に付くだけで上昇したとんでもない時代でした。

今では、ちょっと信じられないかもしれませんね。しかし、冷戦の終了は、人類最大の重荷になっていた核兵器=核戦争の恐怖を無くしました。マッドマックス・北斗の拳など核戦争後によって崩壊した世界を描くフィクションは、人類の愚かさと核戦争を起こしてはいけないという思いを強くアピールするお話でもあったのです。

冷戦終結で有事の金もお蔵入り

冷戦時代は、不意に核戦争が起きてもおかしくない世界観の元に、生きていました。もし、大きな戦争が起きれば、まちがいなく、米ソが巻き込まれる。そして、キューバやアフガニスタンといった局地的な戦争ですら、米ソの代理戦争となっていました。ということは、小さな地域戦争であっても、大規模戦争に発展するリスクが常に背中合わせだったのです。

そんな状態ですから、資産家は、米ドルだけでは不安という気持ちでいっぱい。もし、核戦争に米国が巻き込まれれば、金融システムや米ドルが暴落するリスクがあるわけですからね。そのため、有事のという言葉とともに、ゴールドの価値は、常に高かったのです。

しかし、冷戦が終わると有事のという言葉も、一旦、お蔵入り。戦争がなくなれば、有事もなくなるわけなので、仕方ないことでした。

ロケットサイエンティストからIT・金融革命へ

冷戦時代は、米ソとも国家予算の多くを軍事費に費やしていました。まあ、その間隙を突いて、成長したのが、軍事費をかけなくて良い日本だったという背景もあるわけです。そうです。冷戦の集結は、軍事費及び優秀な人材を軍事方面に振り分ける必要もなくしました。ここから、米国の復活が始まります。

冷戦が終わったということは、米露のロケットサイエンティスト(軍事研究の科学者)の失業という副産物も生みました。そして、彼らが、新たな就職先に選んだのは、金融機関。これによって、投資の世界に最先端の科学が投入されました。

これが、IT革命と金融革命のきっかけの一つ。今では、当たり前の会社になっているアップル・マイクロソフト・グーグル。日本のソフトバンク・サイバーエージェントや楽天などといったIT企業は、創業した時代の差こそあれ、こういった世界を背景に生まれたのです。

そして、彼らIT企業の株価は、天井知らずの上昇。堀江氏のライブドアもIT企業の代表でしたね。

IT革命 ゴールド 脇役

こうなると、ゴールドは不利。上昇を続けるIT企業の前には、金利を産まない金投資は、配当も持ってこないことから負の投資。日本こそバブル崩壊後の低金利であえいでいたものの、海外は、高金利や好景気を謳歌していたため、金の時代は終わった。金を買っても「きれいなだけ」と揶揄されていたのです。

捨て値にあえぐ金価格

ゴールドへの注目度も弱まり、価格も下がっていくばかり。オイルショックによるハイパーインフレで高値を付けたのも今は昔で、どんどん売られていきました。

貴金属商大手の田中貴金属工業が公表している価格で、当時の安値と2020年の高値を比べてみましょう。

1999年の安値

  • 米ドル建て:252.80ドル/オンス。
  • 日本円建て:917円/g

2020年の高値と比べてみてください。同じ物質だとは、思えないくらい。とんでもない安値ですよね。

2020年の高値

  • 米ドル建て:2,067.15ドル/オンス
  • 日本円建て:7,063円/g

現在の高値と比べると、いかに、ゴールドの魅力が弱まり、金価格が捨て値だったのかがおわかりいただけると思います。

「金に投資しても配当も利息も付かないからね。戦争が起きる心配もなくなったし、金なんてもう古いよ」という時代が20世紀の終わりにかけて続いたのです。さて、それでは、そこまで、落ち込んだ金が、どのような経緯で復活したのでしょうか。次回は、その辺りをお話をさせていただきます。