欧米に続き、ついに、日本でもインフレ率上昇の話がでてきました。生活に直結する食料やエネルギーの上昇というニュースは、毎日のように届いています。例をあげると、日清フーズは、2021年10月25日に家庭用小麦粉を3~6%値上げすると発表。レギュラーガソリン価格は、10月27日に、164.1円まで上昇し、2018年10月の高値(155円)を超えて来ています。
それでは、世界のインフレは、どのような状況になっているのでしょうか。そして、インフレになれば、ゴールドは買われるのか。今回は、具体的な動きを見ていくことにします。
目次
インフレ率と金利が上昇すれば、金価格はどうなるのか?
さあ、見てみましょう。
なんと、米国は、5月に少々をはるか上をいく5%超え!、欧州も3%とこれまで目標にして超えられない壁だった2%を軽々とクリア。日本だけこデフレ状態ですが、さすがに、これから、上昇してくる可能性があります。
これだけ、インフレが進むと金価格が気になるところ。何しろ、インフレで価格が上がるインフレヘッジとしての役割が期待されるところ。一方で、インフレが進むと金利が上昇し、金利の付かない金に不利なことがジレンマ。
インフレと金価格に関するセオリー
- インフレ率上昇⇒金価格は上昇しやすい。
- 金利上昇⇒金価格は下落しやすい。
- インフレ率上昇⇒金利は上昇しやすい
というのが基本的なセオリー。じゃあ、結局、インフレで金価格はどうなるのというところですよね。幸いなことに、実戦で状況を確認できる場面が到来しています。
NY金価格は、6月初めをピークに下落。7月~9月と横ばいを続けた後、10月に入り、上昇しています。
FOMC:今後の金利上昇を見込んで下落
6月15-16日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げ時期が早まるのではないかとの予想。これにより、金価格は下落。さらに、8月6日発表の米7月雇用統計も非常に良い数字だったことから、大きく下落しました。
つまり、初夏から夏にかけて、米国の金融政策が引き締め気味になる=米国金利の上昇を見込んで、金価格は、下がったのです。
これは、「セオリー2:金利上昇で金価格下落」にピッタリと当てはまりますね。
2021年10月に金価格は上昇
ところが、金価格は、10月に上昇しています。インフレ率自体は、最近も収まっていません。それどころか原油価格をはじめとして、エネルギー価格が上昇していく気配は強く、今年、北半球が厳冬になれば、相当、厳しくなるとの予測があるほど。つまり、インフレや金利上昇に負けない勢いが、金価格についている可能性があるのです。
その要因は、2つ。
- 実質金利は上昇していない。
- インフレ&金利上昇による景気減速リスクへの警戒。
では、それぞれの要因を見ていきましょう。
実質金利は上昇していない
まず、米国の長期金利は、2021年8月以降、上昇に転じています。しかし、これは、名目金利だけのこと。金価格にとって、本当に重要な実質金利は、たいしてあがっていません。
ちょっとむずかしいかもですが、これ、大事な情報なので、しっかりとお読みください。
実質金利の7月末は、-1.16%。そして、10月27日は、-1.11%とほぼ同レベル。つまり、実質金利ベースでは、金利が上昇していない。そのため、金価格は、下落せずに上昇していると見ることができます。
実質金利は、名目の金利から物価変動の数字を差し引いた金利。この実質金利と金価格の相関関係は、非常に強い。金価格を予想するためには、この実質金利は、必ず見なければいけない指標。
経済の景気悪化リスクが表面化
さて、もう一つ大切なのが、景気が悪くなるリスク。
今後も、インフレ率は上昇していくでしょう。そして、このインフレのせいで、景気が悪化していくリスクがあるということ。
今回のインフレの原因は、新型コロナのパンデミックで混乱した供給網。そして、エネルギー価格の高騰。とすると、景気に悪影響をもたらす可能性は大きいはず。すでに、部品や燃料が足りないという悲鳴が世界のあちこちで上がり始めています。エネルギー価格が上昇して、工場が稼働できなくなるというのは、イメージしやすいと思います。
スタグフレーション?
そうなると、インフレやデフレよりも怖い現象の登場。すなわち、インフレ+景気悪化=スタグフレーションになってしまうリスクが出てくるということ。
また、その状況に陥れば、中央銀行が、金利を上げても、意味がないかもしれません。インフレ退治で金利を上げたくても景気が悪化していれば、景気を冷やすことになる金利上昇はしにくい。それこそ、インフレ率をある程度、放置する可能性もありますね。
つまり、最近の金価格が上昇しているのは、インフレ率が上昇していくのに、実質金利が上がらないという「金の大好物」が来る可能性もあると市場が考え始めたということになります。
最初にお伝えした「金利上昇⇒金価格の下落」というセオリーが通用しにくい相場環境になっていくのではということになります。