金投資は、中長期的に高いリターンを叩き出すも「実質金利が4%を超える」と危うくなる

金投資は、中長期的に高いリターンを叩き出すも「実質金利が4%を超える」と危うくなる

上手な金投資家になるためには、実質金利と金価格の関係を深堀りする必要があります。

今回は、金投資の金利について解説していきます。

金投資と実質金利の関係

これまで、米国の実質金利と金価格に強い影響があるというセオリーを覚えてもらいましたね。ここまででも、十分な知識を得られています。ただ、さらに上を目指すため、今回はさらに深い話です。

まず、少しだけ前回までの金利についてのおさらいを。

  1. 金は、配当も利息も付かない資産。金利が上昇すれば、利息をもらえる他の資産の方が魅力的になり、安くなる傾向があります。
  2. 金利の中でも、実質金利が大切。特に、米国の実質金利との関係が深い。

今回は、実質金利が何%になれば、金価格に不利なのかを確認していきます。

金に関する世界的な機関として権威のある「ワールドゴールドカウンシル(WGC)」が、実質金利と金価格の関係について、調べた結果を2013年に公表してくれています。今回は、その調査結果をご紹介いたします。

※実質金利(米国債3カ月物利回りから米国の総合CPI(消費者物価指数)の上昇率を差し引いて算出)

実質金利のレベルによる金価格の動き

WGCの調査では、1975年以降の金の月間リターンは0.6%。年率に換算した名目リターンは7.5%。平均値でこれですから、かなり高いレベルで運用できているということ。しかも、2013年以降もゴールドは上昇しているので、それを加味すればもっと利益を叩き出していることになります。

月間リターン0.6% 名目の年率リターン7.5%

それでは、金価格と実質金利の関係を見てみましょう。

WGCは、米国の実質金利について3つのパターンに分けて調べています。

  1. 実質金利「0~4%」の期間を中程度の金利⇒ゴールドの月間リターン0.7%
  2. 実質金利「0%以下」をマイナス金利(低金利環境)⇒ゴールドの月間リターン1.5%
  3. 実質金利「4%超」を高金利環境⇒ゴールドの月間リターン-1.0%

近年、実質金利は0-4%のレベルで上下動しています。この時、金のリターンは月間で0.7%。長期的な平均より少しだけ上。

そしてマイナス金利状態の場合、金投資はなんと「月間1.5%」とかなり高いリターンとなっています。

  • 実質金利と金価格には、深い関係がある
  • 中長期的に、金価格は上昇トレンド
  • 実質金利が低いと金投資に有利

このセオリーを覚えておいて損はありません。

実質金利が4%を超えるとゴールドに不利

実質金利は何%

ただし、実質金利が4%を超えてくると話は変わります。この場合は、逆にマイナス1.0%。年間にすると12%近くのマイナスですから、大きいですね。

もし、米国の実質金利が4%を超えてくるようなことがあれば、金投資に不利となる可能性を考えるべき。金の保有を減らす、決済するなどの対応策を考えた方が良さそうです。

実質金利の方向はどちら?

次に、実質金利が上昇しているのか下落しているのか方向性について。

これもまた予想通り。実質金利が上昇していく場面では、金のリターンは0.3%と平均の0.6%から少し下がります。逆に、実質金利が下落する時は、0.8%とリターンが上昇します。

  • 実質金利の上昇局面:金のリターン0.3%
  • 実質金利の下落局面:平均リターン0.8%

どちらの場面も、結果的に上昇しているとはいえ、実質金利が上昇していくような場面は金投資を抑え気味にしたいところ。

一方、かつてに比べると金価格と米国の実質金利の関係は、弱くなりつつあるとの意見も登場しています。

その理由として取り上げられているのは、新興国の台頭

世界は、米国一強時代が終わり、中国をはじめとした新興国の力を無視できなくなりました。

中でも、中国・インドは、ゴールド大好きな国。風水での金運や中華のキラキラ装飾。インドの民族衣装や結婚式が、ゴールドで散りばめられているのを見たことがある人は多いのではないでしょうか。

中国・インドをはじめとした新興国の力が伸び、金への需要は増えました。そのため、米国の実質金利とはまた違った要因として、新興国の景気や政策が金価格に影響するようになっています。

米ドルとの関係

金は、通貨の一つとしてもカウントされており、米ドルの代替としての需要も強まっています。実際、ロシアや中国は外貨準備として用意している資産の割合を変化させています。金の保有量を増やすことで、米ドルのリスクを分散。

そういった原因から、米ドルが下落すると金が上昇するという米国実質金利と同じような関係が成り立っています。

そのため、実質金利が高くても米ドルが下落するような場面では、金価格は上昇する傾向にあります。

1980年代は、米国の実質金利が高止まりしていた時代でした。にもかかわらず、金価格が上昇したのはオイルショックによるインフレや米ドル下落などが理由でした。

米ドルとの関係は、また次の話で詳しく見ていこうと思います。

高い実質金利はリスクあり

米国の実質金利と金価格のまとめ

  • 金価格と米国の実質金利は、強い関係を持つ
  • 米国の実質金利が上昇(下落)すると金価格は下落(上昇)しやすい。
  • 米国の実質金利は、低いほど、金価格は上昇しやすい。
  • 米国の実質金利が4%を超えるような高金利の状態だと、金価格は下落しやすい
  • 中国やインドの需要も大きく影響する
  • 米ドルの動きをはじめ他の要因も大きい

様々な理由で動く金価格。米国の実質金利・米ドルの動きを重視しながら、そのほかの要因も値動きに大きく影響するということが分かりましたね。

とはいえ、兼業投資家・サラリーマン投資家である私達がたくさんある変動要因のすべてを追いかけるのは大変です。そのため、金利・米ドルを優先すれば、金価格の大きな変化を掴んでいけるようになります。