投資を検討している初心者の方に、よく「REITと不動産投資はどちらが良いのでしょうか?」と質問されます。
REITは不動産による投資信託なので、REITに投資する場合と、自分自身で不動産投資を行う場合とどう違うのか?同じ不動産を扱うのに差はあるのか?
また、メリット、デメリットを知りたいというのが質問の本質です。
結論から言うと、REITは不動産投資は全く異なるものでどちらが良いとも言えません。
しかしこの「REIT」と「不動産投資」の違いを知っておくことは、これからいろいろな資産運用を考えて実践していく際に役に立ちます。
REITと不動産投資の両者は、比較的安定して高い利回りを出す投資運用方法なので、投資のレベルが上がってくると検討する日がくるでしょう。
その時のために、ここでREITの性質をよく理解しておきましょう。
目次
REITとは
REITは「Real Estate Investment Trust」の略で、REIT投資法人が投資家から資金を集め、その資金をもとに不動産への投資を行い、そこから得られる不動産の売買益や賃貸収益を投資家に配当する商品になります。
その利回りの高さから、REIT(リート)は他の投資商品と比べて非常に人気のある商品で、別名「不動産投資信託」とも呼ばれています。
REITが発生したのはもともとアメリカで、日本においてのREITの仕組みはアメリカと異なる点があります。
そのため、日本版のREIT(リート)は「J-REIT」と呼ばれています。
投資者はREITを買い入れることにより、間接的にいろいろな不動産のオーナーとなることができ、そこから生まれる利益を受け取ることができます。
「REIT」は現物不動産のように銀行からの融資を受けることができない
まず大きな違いとして、「REIT」は現物不動産のように銀行からの融資を受けることができません。
これは不動産投資を行う際の最大のメリットが無くなることになります。
融資されたお金で物件を買える(レバレッジをかけられる)というのが不動産投資の最大の魅力なのですが、REITは不動産を扱うものの投資信託なので株式と同じ部類にみなされ、銀行融資の対象にはならないのです。
現物不動産には不動産そのものに担保価値があるから、銀行の融資がおりるのです。
現物不動産と比べるとリートは儲からない
REITは投資運用会社に運用の一切を任せることになるので、掘り出し物物件や工夫で利回りを上げることは不可能です。
自分自身で不動産投資運用を行う場合は、現物不動産の価格交渉や運用の工夫などを行うことにより利回りを上げる事が可能ですが、REITはそれができません。
そのような理由から、現物不動産と比べるとREITは利回りが悪くなります。
ですが、その分投資家の手を煩わすこと無く、リスク分散も出来る利点があります。
節税のツールとして使えない
REITからの収益(分配金)は税金が20.315%かかります。
つまり、株と同じで、必ず20%取られてしまいます。
一方、不動産投資は事業なので、その事業に関するものが経費になるというメリットがあります。
結論として「REITは不動産ではなく株式に近い」と考えてください。
しかし、REITは悪い仕組みではありません。
REITと現物不動産は似てはいますが、投資家が利益を得る仕組みが全く異なるものなので、メリット・デメリットでは比べられるものではないのです。
たとえば、現物の不動産を持って成功している人にはREITは物足りないかもしれません。
というのも、不動産で成功している人は、不動産で稼ぎ出せる(高い利回りを出せる)ノウハウがあり、日々の運用もうまくいっているからです。
とはいってもすべての人が不動産投資で成功できるわけではないので、一般の投資家にとって見たらREITは十分に投資対象になります。
では「REIT」について詳しく見ていきましょう。
REITの特徴
REITとは簡単に言うと、
- 不動産投資を専門に行う会社のようなもの
- 投資家からお金を集め、そのお金で不動産投資、運用を行う
- 出た利益は分配金として投資家に配当する
- 日本のREITのことをJ-REITと呼ぶ
となります。
初めにREITの市場規模について見ておきましょう。
REITの市場規模は世界全体で約1.5兆ドル(160兆円)あります。最大の市場はアメリカで62.4%あります。次に日本9.6%、オーストラリア6.3%、イギリス4.1%となっており、日本とアメリカで全体の4分の3を占めています。
株式の市場規模と比べてみると、世界全体の株式市場規模は約50兆ドルなので、REITの市場規模は株式市場の3%くらいという計算になります。
REITの仕組み
次にREITに仕組みを実際の案件を例にして説明します。
ご存知の方も多いと思いますが、東京のお台場に「ヒルトン東京お台場」という有名なホテルがあります。非常に景色が素晴らしい立地にある高級ホテルです。
このホテルを一人の投資家が欲しいと思ってもなかなか買えませんよね。
なぜなら値段が624億円もするからです。
しかし、仮に62400人が集まって、一人100万円出したとしたらこのホテルを購入することができます。
REITはこのようなものなのです。(※2019年4月8日付で実際にジャパン・ホテル・リート投資法人がヒルトン東京お台場を624億円で取得したというニュースからの引用でした。)
多くの人が出資して、その集めたお金で不動産を買い、稼いだ利益を皆で分配する。それらの不動産はREIT投資法人のもの。という仕組みなのです。
REITのメリット
次にREITのメリットを見ていきましょう
- 小額からの不動産投資が可能
- 安定した高い分配金を期待することができる
- 不動産のプロがいろいろな不動産に分散投資してくれる
- いつでも売買できる
小額からの不動産投資が可能
大勢の投資家からお金を集めるので、一人当たりは少ない投資金額で済みます。
実物の不動産投資であれば数千万円単位での投資となりますが、REITは数万円単位から投資が可能となります。
また、個人では購入できないような良い立地に大型物件を持つこともできます。
安定した高い分配金を期待することができる
REITは投資保人という形態上、利益の90%以上を投資家に分配すれば法人税が課されない仕組みになっています。
そのためREIT投資法人は投資家に対して、多くの利益を分配してくれるのです。
また、不動産の賃料収入が分配金の源泉になるので、長期で安定した収益も見込めます。
J-REITでは平均利回り(配当金)は4%近くあります。
一方、東証一部の配当利回り平均は2%程度です。
安定した分配金を求める人には良い投資商品だと言えるでしょう。
不動産のプロがいろいろな不動産に分散投資してくれる
通常、不動産投資においては、投資対象の不動産の選定や売買、収益分析など専門知識が必要となります。
また、物件管理や契約手続きなど複雑で面倒な業務がたくさんありますが、REIT投資法人にはプロが沢山いるので、投資エリアから多種にわたる物件(オフィスビル、商業施設、住宅など)に分散してくれ運用全体を任せられます。
経験値のない個人投資家が物件を選ぶより、よほど高い利益を出せる確率が高いといえるでしょう。
いつでも売買できる
普通の不動産は売りたいときにすぐ売ることはできません。
相対取引なので、買ってくれる人を見つけるのに時間と手間がかかるのです。
そのような実物の不動産投資とは異なり、REITは東京証券取引所を通じて株式のようにリアルタイムで売買できるようになっています。
次にデメリットを見ていきましょう。
REITのデメリット
- 元本保証ではない
- 賃料、地価の下落により、分配金が減る可能性がある
- 地震、津波などの天災、火災などによる物件の破損リスク
- 金利変動リスク
元本保証ではない
REITは株式のように大きく値下がりする可能性もあります。
理由としては、投資法人におけるキャッシュフローの悪化などです。
また一般の企業と同様に倒産リスクもあります。
ただし所有する不動産の価値がゼロになるわけではないため、倒産時に不動産を売却し投資資金が返金される場合もあります。
証券取引所の上場廃止基準に該当してしまつたような場合は、上場廃止となるリスクもあります。
賃料、地価の下落により、分配金が減る可能性がある
不動産に対する投資という性格上、どうしても不動産市場の影響を受けてしまいます。
不動産の賃貸市場や売買市場、経済情勢など様々な要因によって不動産の賃料収入や評価額が変動します。
そのような場合、銘柄個別の業績に関係なく価格や分配金が減少する可能性があります。
地震、津波などの天災、火災などによる物件の破損リスク
REITは不動産を投資対象としているため、自然災害などによる建物の滅失、毀損や環境問題などにより不動産の価値が減少し、分配金が減少する可能性があります。
金利変動リスク
REITは投資家から集めたお金のほかに、銀行からも借り入れをしています。
したがって金利が上がると銀行に支払う利息も増えて、投資家への分配金が減ってしまう可能性もあります。
最後に、実際REITを検討している場合、どのような銘柄を選べばよいのか判断する上で必要な事柄を挙げておきます。
REITの銘柄選び
J-REITは下記に上げた6種類のどれかに該当する物件に投資しています。
- 住宅
- オフィス
- ホテル
- 商業施設
- 物流施設
- ヘルスケア
これらは各セクターで特徴が大きく異なり、これらの特徴を把握することがREITの銘柄を選ぶ判断基準になるので説明しておきます。
住宅REIT
居住用のマンションに投資するREITです。
景気の影響を受けにくく分配金が安定しています。
景気が良くても悪くても家には住むので、家賃の変動があまりありません。
また、ほとんどの投資法人において東京、大阪、名古屋、福岡などの都市部に投資しており、入居率は98%前後あります。
近年では単身世帯、共働き世帯の都心回帰、職住近接トレンドのおかげで業績は良くなっています。
オフィスREIT
オフィスは市場規模が最も大きいセクターになります。
これは景気の影響を受けやすく、賃料・稼働率ともに安定しないことがあります。
国内、海外の経済状況をよく見ながら投資する必要があると思われます。
ホテルREIT
ホテルなどの宿泊施設に投資するREITです。
オフィス同様、非常に景気の影響を受けやすいです。
外国人観光客の増減、オリンピック開催などのようなブーム、イベントの影響を見極める必要があるといえます。
商業施設REIT
大規模小売店舗、ショッピングセンターに投資するREITです。
近年、AmazonなどのEコマースの急激な成長で、小売業態の実店舗は収益が悪化しています。
いま最も将来性が危惧されており、割安に放置されているセクターと言えるでしょう。
物流REIT
倉庫などの物流センターに投資するREITです。
ネットショッピングが増えている影響で業績は好調です。
賃料、稼働率と共に安定しており、分配金水準の急激な増減はあまりありません。
Eコマースの伸びを考えると成長性が見込める分野といえます。
ヘルスケアREIT
高齢者向けのシニア住宅に投資するREITです。
少子高齢化の日本において、今後社会的ニーズが高く成長が期待できると思われます。
賃料・稼働率共に安定的で景気の影響を受けにくく、まだ歴史が浅く市場規模も小さいです。
まとめ
REITは株式、債券などと同様、投資する価値のあるまともな資産です。
資産の中にREITを組み入れることを検討する価値は十分あると言えるでしょう。
メリットは小額からの不動産投資が可能、高い利回りの分配金を期待できる、不動産のプロがいろいろな不動産に分散投資してくれる、いつでも売買できるという点です。
デメリットは、元本保証では無い、賃料地価の下落による分配金定価の可能性がある、地震津波などの災害による物件の破損リスクもある、金利変動リスクもあるという点です。
REIT自体は株式に近いものですが、根本的な商品が不動産なので、資金の保全という観点では他の金融商品に比べると安全と言えるでしょう。
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