まだまだ黎明期ではあるものの、新たな投資の一つとして注目されている「ソーシャルレンディング」。
皆さんも今までにクラウドファンディングという言葉を聞いたことがあると思いますが、この記事で説明する「ソーシャルレンディング」もクラウドファンディングの一種です。
しかし、クラウドファンディングとは違い投資家から見ると、より投資・より資産運用に近い感覚で行えるものになります。
業界としてはまだまだ発展途上の段階にあると言えますが、ソーシャルレンディングは高い利回りに対して今のところ貸し倒れの件数が少なく、効率的な資産運用手段の一つとしてここ数年で知名度も一気に上がってきています。
そんな「ソーシャルレンディング」とは何か、早速詳しく見ていきましょう。
目次
ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、お金を貸したい「個人投資家」とお金を借りたい「企業」をマッチングするサービスで、クラウドファンディングと呼ばれる投資手法の一つです。
「貸付型クラウドファンディング」と呼ばれることもあります。
ソーシャルレンディング事業を運営する会社はインターネットを活用し、ウェブサイト上で資産運用したい個人から小口のお金を集め、その資金を企業に融資します。
(※投資ではなく融資というところがポイントの一つです)
サービスによって違いはありますが、最少投資額は1万円からと元本が少なくても始められます。
なぜ企業がソーシャルレンディングの仕組みを使い、銀行ではなくそれ以外のところからからお金を借りようとするかというと、銀行の融資が受けられない事情があるからです。
理由としては、
- 創業年数や実績が浅く、銀行からの融資が十分に受けられない。
- 新規事業などの為、銀行からはリスクが高い融資案件とみなされてしまう。
- 銀行からの融資はすでに受けているが、事業発展のため追加で資金が欲しい。
といったことが多いです。
そのような事情のある企業に対して、ソーシャルレンディングの事業者がこの企業に融資をしても大丈夫かどうか厳正な審査を行い、審査を通過した企業への融資ファンドが組成されています。
ソーシャルレンディングの基本的な仕組み
基本的な仕組みと流れを簡単に説明しておきます。
- まず、ソーシャルレンディング事業者がファンドを組成します。自社のホームページ上にファンド情報を掲載、投資家はその情報を基に検討。
- 投資家が納得すれば、ソーシャルレンディング事業者のウェブサイト経由で、出資を決めたファンドへ出資申込を行う(契約形態:匿名組合契約の締結)。
- ソーシャルレンディング事業者がその対象となる企業に対し資金融資を行う。
- その後、融資を受けた企業は、ソーシャルレンディング事業者に対し、元利金(元本に利息を加えた金額)を返済。
- その対象企業から受け取った元利金を、ソーシャルレンディング事業者が投資家に対し、分配・償還を行う。
具合的な数字を使って説明すると、借り手に対して13%の貸出金利で融資を行い、ソーシャルレンディング運営会社が5%の手数料を取得した場合、個人には8%の利回りが分配されます。
ソーシャルレンディング運営会社は、融資先の企業から支払われた利率から数パーセントを営業者報酬として取得し、残りが投資家への利回りとなります。
これらのリスクの度合いと、リターン率からみるとソーシャルレンディングは債権と株の中間に位置づけられる投資商品と言えるでしょう。
このソーシャルレンディングに対する理解を深める為に、取り巻く背景、状況についても補足しておきます。
日本のソーシャルレンディングはまだまだ発展途上である
日本においてソーシャルレンディングの歴史はまだ長くありません。
maneoがソーシャルレンディングの運用を日本で始めたのが2008年。
そしてSBIソーシャルレンディングがソーシャルレンディング事業を始めたのは2011年です。
その後、各ソーシャルレンディング会社の参入が相次ぎましたが、現在ソーシャルレンディングに参入している業者は20社程度しかないのが現状です。
直近で新しくソーシャルレンディング業界に参入した会社はほとんどありません。
下記、TSR(東京商工リサーチ)2020.02.17日付の記事ですが、
ソーシャルレンディング最大手だった第2種金融商品取引業のmaneoマーケット(株)(TSR企業コード:297202863、千代田区、以下マネオ)と、マネオのプラットフォームを使いパチンコ店の遊技台などの設備資金を集めていた(株)Crowd Lease(TSR企業コード:016377834、東京都港区、以下クラウドリース)は、ソーシャルレンディングブームに乗り、年利10%を超える投資利回りで人気を集めた。成立したローン総額は約160億円に達する。
だが、2018年7月、マネオが関東財務局からファンドの取得勧誘に関して「虚偽の表示」などで業務改善命令を受けると状況が一変する。2019年4月、クラウドリースは手がけていた全ファンドの出資金の返済停止をマネオに通知。クラウドリースのファンドから返済の延滞が続くとマネオは東京地裁にクラウドリースの破産を申し立てた。今年1月7日、保全管理命令が下り、今も破産手続開始の審査が続いている。
といった事件もあり、高い利回りで資金を集め不透明な融資をしていたケースもありました。
もちろんすべてのソーシャルレンディングの会社がそうではないのですが、まだ発展途中の業界でもあり利息が高い分、投資先の精査については投資者がきちんと見ていく必要があると言えそうです。
業界の規模
そのような事件はあったものの、利回りの魅力からなのか、業界の規模は徐々に大きくなっています。
2014年には143億円ほどだった市場規模も2015年約310億円、2016年約533億円、2017年約1,316億円、2018年約1700億円、2019年約2000億円と成長しており、もさらに市場の拡大が進むと予測できます。
概要がわかったところで、次にソーシャルでンディングのメリットとデメリットについて見ていきましょう
ソーシャルレンディングのメリット
ソーシャルレンディングのメリットは、下記の通りになります。
- 債権や預金より利回りが高い
- 時間や手間、運用コストがかからない
- 小額からの投資が可能
- 保全性が高い
- 短期運用も可能
債権や預金より利回りが高い
定期預金などと比較すると利回りが高めになっています。
最低標準でも4%を切らず、平均利回りは8%ほどあります。
マイナス金利が普通の現代においてかなり魅力的な高金利です。
複利計算すると約10年元本が2倍になるので興味を持たれる方も多いでしょう。
このような高い貸出金利が実現できる理由の背景には、財務的には健全でも銀行から融資を受けられない企業が多く存在しているという点が考えられます。
銀行による審査基準だと創業年数が浅い企業や、借入期間の短い融資である場合は融資を受ける難易度は上がってしまいます。
一方、ソーシャルレンディングは銀行とは違った視点で柔軟に融資審査を行います。
借り手企業が借入金を返済できるかという確実性は非常に厳しく審査しますが、必ずしも創業年数などに縛られない審査体制を築いています。
現実的、合理的に判断しているのです。
時間や手間、運用コストがかからない
ソーシャルレンディングは元本の価格変動がありません。
また、時間や手間などの運用コストもかかりません。
一度資金提供を行えば、運用期間終了まで待つだけの投資の形になります。
そもそも株式のように値動に一喜一憂する金融商品ではないのです。
小額から投資が可能
株式投資では通常、数十万円以上の投資資金が必要となることが多いですが、ソーシャルレンディングは最小で1円から始められる投資です。
そのような点からは初心者でもハードルが低いと言えると思います。
保全性が高い
(参考記事):2015年~2017年に募集が開始されたファンドを対象とした、クラウドポートによる計測と各社へのヒアリングに基づく(2018/07/04)によると過去3年の間におけるソーシャルレンディングの貸し倒れ率は1.47%となっています。
SBIソーシャルレンディングの不動産担保ローン事業ファンドでは、2012年9月から7年間、貸し倒れの発生が無く、利回りも3~4%確保し続けています。
オーダーメード型ローンファンドではデフォルト率が0.35%となっています。
平均してみると保全性は高いと言えますが融資という特性上、今後デフォルトが起こる可能性はゼロとは言い切れません。
デフォルトが起こった際の損失を最小限にするよう、分散投資を心がけた方が良いでしょう。
短期運用も可能
ソーシャルレンディングの運用期間は、多くの場合3カ月から1年程度になっています。
数カ月の運用で済むため、まずやってみたいという人には非常に試しやすいと思います。
次にデメリットを見ていきましょう。
ソーシャルレンディングのデメリット
ソーシャルレンディングのデメリットは、下記の通りになります。
- 株式やFXのような大勝ちを狙えない
- デフォルトのリスクがある
- 一度投資をすると満期まで解約ができない
株式やFXのような大勝を狙えない
ソーシャルレンディングでは高くとも利回り13%ほどです。
株式投資やFXなどのように元本自体が価格変動をできる投資、また、レバレッジをかけられる投資のように元手資金を数倍にすることはできません。
元本の価格変動がないため、大きな損失を被りづらい一方で大勝は狙えません。
着実に利益を重ねていく投資商品であると認識して下さい。
デフォルトのリスクがある
最大のリスクはデフォルト、元本割れ、貸し倒れなどです。
企業へ融資するという構造上、何らかの理由で借り手が返済不可能に陥った場合デフォルトとなります。
殆どの、ソーシャルレンディング業者はノンリコースローンで投資家から資金を集めています。
ノンリコースローンとは担保にしている範囲以上の損益の責任を負わない形で資金調達をする仕組みで「ノンリコースローン=遡及されない融資」と捉えることができます。
ソーシャルレンディングにおける担保はプロジェクトの進捗になるので、そのプロジェクトが行き倒れた場合に債務不履行になり元本割れとなってしまいます。
投資元本を毀損する可能性があるため、ファンドや事業者を選択する際には注意が必要です。
一度投資をすると満期まで解約ができない
ソーシャルレンディングは投資したい個人から集めた小口の資金を、大口化して借り手企業に融資するというスキームです。
融資という仕組みの為、一度投資を行うと、借り手企業が返済を完了する「満期」まで途中解約することはできません。
何かの事情で急に現金が必要になったとしても、投資資金を引き上げることはできません。
投資資金は余裕資金で行うようにして下さい。
最後に、これからソーシャルレンディングをしてみたいと考えた際の案件を選ぶ視点を説明しておきます。
ソーシャルレンディング投資の視点
ソーシャルレンディングの保全性や利益を高めるために気をつけたい点を解説します。
分散投資をする
分散投資により投資対象を多様化させ、リスクの集中を避けるよう心掛けて下さい。
分散投資を考える際のチェック事項は、下記の通りになります。
- 事業者(ソーシャルレンディングの)
- テーマ
- 金額(ファンド)
- 融資先(業種・事業内容、利害関係の状況、資金用途等)
この4点で確認してもらえば、本質的なところが見え、判断材料になるでしょう。
ソーシャルレンディングを行う際はリスク管理を十分にしながら投資する事が大切です。
まとめ
いかがでしたか。
ソーシャルレンディングは、株式投資やFXのようにレバレッジをかけられる投資ではないので、短期間で元手資金を数倍にすることはできませんが、大きな損失を被りづらい分着実に利益を積み重ね資産を増やしていくことでできます。
また、一度資金提供をしてしまえば後は運用期間終了まで待つだけの投資スタイルなので、やはり資産運用初心者の方でも取り組みやすい投資のひとつと言えるでしょう。
気になったかたは、この機会に取り組んでみてもいいかもしれませんね。