2021年の海外投資の見通しをはかる上で、日本人資産家の潮流を認識しておく必要があるでしょう。
金融や資産を取り扱う業界の間で、ここ近年のキーワードで上げられるのが、「キャピタルフライト」というものがあります。
これは日本の超富裕層(上場企業創業者や大株主等)の多くの方が、海外移住・海外への資産逃避を検討しているということです。
目次
なぜ、超富裕層は海外へ資産逃避をするのか?
海外移住・海外への資産逃避を検討しているのは、とくに40代の比較的、若い創業者達の中に多くみられます。
この世代の方々は、更に上の世代の方々(50代以上)と比較すると、日本を離れるということに違和感や抵抗が圧倒的に少ない世代で、日本にいるメリットがどんどん少なくなっていく昨今、移住の検討を真剣に始めたりしています。
かくいう私もその一人ということになるかもしれません。
政府としては、もちろんのことながらこの流れを止めたい意向です。
なので、海外にある資産5000万円以上に関しては、事前に申告をしておく必要がある「国外財産調書の提出義務」も策定されています。
- ※国外財産調書制度の概要
居住者(「非永住者」の方を除きます。)の方で、その年の12月31日において、
その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する方は、
その国外財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、
その年の翌年の3月15日までに所轄税務署長に提出しなければならない。
この流れは税制が軟化するか、外為規制が導入されるかしないとなかなか止まらないと思います。
〇 富裕層や経営者が納得できる税制へ
特に日本の法人税・相続税・所得税は海外から見ても非常に高いものです。
法人税に関しては、日本が約33%を超える中で、香港は16%、シンガポールは17%、台湾20%、韓国24%、中国・マレーシア・インドネシア25%など近いアジア地域と比べても圧倒的な差があります。
〇中国やタイ等の新興国で見られる厳しい外為規制の導入
例えば、タイでは(最近は緩和されてきている)長らく厳しい外為規制が存在し、タイバーツの持ち出しや外貨への交換は厳しく監視されてきました。
また、銀行は一定金額以上の両替を全て報告する必要があり、資金使途を全て説明する必要があります。
法人ですら外貨決済が難しくタイバーツでの決済を余儀なくされ、他国とのビジネス競争において不利な状態に置かれています。
ちなみにタイでは2008年に外為規制はかなり緩和されたが、今でもタイバーツから国外に投資した場合、以下のような多くのルールが存在しています。
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・投資はバーツで始めなければならず、
投資が終わるとバーツで投資家に投資額を戻すことになる。・投資家は外貨資産を国外の別の口座に移すことは出来ない。
・投資家は外株などを売却して得た外貨の80%以上を
売却後90日以内に再投資しなければならない。
もしそうでない場合は、資金をタイに戻し、バーツに換えなければならない。・送金額は一回につき50万米ドル(資産額10億バーツ以上の法人は
一回につき500万米ドル)を上限とし、
送金額の80%以上が使われないと次の送金は承認されない。
このように、そもそも日本円を外貨に換えることを規制し、また厳しく監視すれば自ずと国内から資産が流出することはなくなります。
ただこれは完全にガラパゴス化を加速させ、ある意味“鎖国”とも言える諸刃の剣的な政策と言えます。
海外送金等に厳しい報告義務を課すといった政策もありますが、現状でも各金融機関からの外送金はかなり厳しくなってきているのが現状です。
これらの流れから読み取るべきは「なぜ、金持ちは海外を求め、政府は海外に出ていくお金に歯止めをかけたいのか?」ということです。
その意図はシンプルで、海外を活用したほうが資産を構築しやすく、資産を防衛しやすいということです。
しかし、やみくもに海外を活用すればいいというわけではありません。
本当に信用・信頼ができる相談先を吟味する必要があります。海外金融に精通している職種の方、例えばプライベートバンカーのような方や、海外のファンド会社で実務をされている方、海外事業および運用事業を行っている方、このような情報ソースを頼りに判断していく必要があります。
私もいまの皆さんと同じようになんのコネクションもないところから、自分で勉強を始め、視察に行き、コネクションを作り、投資をし、目利きを鍛え、自分が運用側に回るというステップを踏んでいて、15年以上の時間が経過しています。
色々と経験していく中で、ヨーロッパ・アジア・アメリカなど海外の中でも、自分が得意なエリアや投資スタイルができてくるはずです。
言い換えれば、その地域や投資手法に精通している自分になるわけです。
まずは、自分が理想とする資産運用をされている方を見つけるといいと思います。そして、その方がなぜのそのような資産運用や投資を行うのかを理解することが、
自分なりの投資哲学を育てるのに一番の近道だと思います。
東南アジアのREIT市場に注目
そんな中、私が注目しているのは、東南アジアの不動産マーケットなわけですが、あるデータを切り取ってみてみたいと思います。
それは、市場規模として約10兆円あるといわれている東南アジアのREIT市場。
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- ※REIT(リート)とは、
「Real Estate Investment Trust」の頭文字をとった略称で、
日本語では「不動産投資信託」のことを指します。金融機関で販売されている一般的な投資信託の大半は、
株式や債券などの有価証券を投資対象としていますが、
REITは名前のとおり、不動産を投資対象としています。
REITでは、投資家から集めた資金をもとに、オフィスビルや商業施設、マンションなど不動産を購入・運用し、そこから得られる賃貸料収入や不動産の譲渡益を投資家へ分配します。
つまり、投資者はREITを通じて間接的に不動産のオーナーとなることで、運用の成果を享受することができるのです。
ちなみに日本は2021年1月現在62社のREITが存在しており、アジアでも不動産REITが本格的になってきました。
初上場 | 上場数 | |
タイ | 2014年 | 23 |
マレーシア | 2005年 | 18 |
シンガポール | 2002年 | 44 |
インドネシア | 2013年 | 3 |
フィリピン | 2020 | 1 |
そんな中、私がビジネスと投資を手掛けているPhilippinesにおいては、大手財閥であり最大デベロッパーのAYALAがPhilippinesでの初となるREIT上場を
2020年8月13日果たしました。
「2008年から準備してきた我が社にとって歴史的な1歩だ」と、Ayala Landの会長であるFernando Zobel de Ayala氏は述べています。
これは元々政府が2009年にREITを許可する法律を制定したものの、レギュレーションが厳しすぎて、それまでどこも名乗りをあげていませんでした。
しかし、今年の1月に規制緩和があったことで、国内初の上場が実現しました。
これにより、Philippinesでは土地の所有を基本的に禁止されている外国人が間接的に不動産に投資することが可能になることを意味し、開発側はREITに物件を売却することで投資の早期回収が実現し、開発スピードを速められる形となります。
これによりPhilippinesにおける不動産ビジネスはますます目が離せなくなったわけです。
ここで重要なのは、情報をどのように咀嚼し、自身に落とし込んでいくかです。
REITは不動産投資信託なので、最終的には金融商品の位置づけとなり、海外不動産とは異なります。
コンドミニアムや土地を自身で購入し、所有する分には不動産資産となるわけです。
もっというと、私はREIT自体は所有していません。あくまでも指標を見るためのものとして位置付けています。
Philippinesでは土地を仕込んでいるので、売却を考えるとREITがたくさん上場するほど、その売却効率も高まってくることになります。
是非、ご自身なりの市場の捉え方であったり、投資の方法を見つけるための、資産運用をスタートされてはいかがでしょうか?
アジア投資の鬼才 JACK 佐々木にインタビュー|前編