ノーベル賞を支える資産運用

ノーベル賞 資産運用

この時期になるとノーベル賞の話題が出てきますね。
日本人受賞も毎回話題になるなど、世界的に注目と権威のある賞ですが、このノーベル賞の財源はどこからきているのでしょうか?
実は、賞の原資は財団の資産運用により生み出されています。

100年以上続くノーベル賞

ノーベル賞は、ダイナマイトの発明者として知られるアルフレッド・ノーベル氏の遺言に従って1901年から始まった世界的な賞です。
2021年は120年の節目となります。

以下の「5分野+1分野」で顕著な功績を残した人物を対象とします。

・ノーベル物理学賞
・ノーベル化学賞
・ノーベル生理学・医学賞
・ノーベル文学賞
・ノーベル平和賞
そして
・ノーベル経済学賞

ただ経済学賞に関してはノーベル財団がノーベル賞とは認めていません。
「経済学賞」はノーベルの遺言でできた賞ではなく、後年になってスウェーデン国立銀行が設立した「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」という賞であり、原資もスウェーデン国立銀行が拠出しています。

財団の活用で、地球、人類のためという公益性の高いものに、資産運用で得た利益を再分配していくというモデル・・・そんなことが、運用できちんと利益を出し続けることで、半永久的に継続することができるのは素晴らしいことです。

現在のノーベル賞の賞金

・1,000万スウェーデン・クローナ(約1億2,700万円)

この金額は運用成果により変動しています。
2001年から2011年までは、一つの賞につき1,000万スウェーデン・クローナ、2012年から2016年までは800万スウェーデン・クローナ、そして2020年から再び1,000万スウェーデン・クローナとなっています。

財源は運用益から

ノーベル氏の遺言の内容は以下です。

「私のすべての換金可能な財は、次の方法で処理されなくてはならない。私の遺言執行者が安全な有価証券に投資し継続される基金を設立し、その毎年の利子について、前年に人類のために最大たる貢献をした人々に分配されるものとする」

元々、遺言で託された遺産

・3,100万スウェーデン・クローナ
(現在の日本円だと約230億円相当)

この運用益を「人類のために、最大の利益をもたらした人たちに賞の形で毎年分配する」とされ今に至ります。

経済学賞以外のすべてはノーベル財団から拠出されますから、今年でいうと5,000万スウェーデン・クローナ(約6億3,500万円)が必要ということになります。
資産運用の成果によってこの金額も減ったり元に戻ったりと変動していますが、今年も6億円規模が必要ということですから、それ以上、運用で増えていれば運用で賄えたということになりますね。

運用規模

2020年末時点でのノーベル財団の運用している資産

・51億7,600万スウェーデン・クローナ(約660億円)

目標リターン3%

レポートによると年間の目標値は3.0%とのことです。
1%の運用成果でも6億円規模ですから、さきほどの賞金の原資はそのくらいの運用で可能になることがわかりますね。

現状のポートフォリオ

2020年末の時点での保有資産は以下でした。

・株式 :48%
・不動産ファンド:5%
・債券:15%
・オルタナティブ投資:28%
・その他:4%

株式比率が半分近くと多めな点、また、オルタナティブ投資といってヘッジファンドを含むような投資比率が28%と多めになっている点に気づきます。
上昇相場・下落相場の影響を受けにくくしっかり利益が期待できる手法をきちんと組み込んでいることがわかります。

【参考】
Table showing prize amounts (pdf)

The Nobel Foundation annual report 2020 (pdf)

まとめ

以前はノーベル財団は債券運用のみで手堅い運用方針だったようです。
しかしながら、収益が上がらなかったり、運営コストもかかることから、株式など一定のリスクをとる方針へと転換したことで、見事に資産規模を増やし、健全に運営できる体制まで整えました。

100年以上続くノーベル財団の資産運用方法から学べることは多いと感じます。個人投資家の皆さんにとっても、柔軟に時代に合わせていく、長く続けていける資産運用を参考にしてみてください。