インフレヘッジの王様だった「ゴールド」が上昇しない謎とは?

インフレヘッジ ゴールド

インフレヘッジの王様だったゴールド。しかし、待望のインフレ到来にも関わらず、大きな上昇を見せていません。不思議な感じがしますよね。

それでは、なぜ、インフレなのに、ゴールドが上がらないのか。その理由を見てみましょう。今回のお話は、ゴールドやビットコインなど暗号資産に興味のあるあなたにぜひ、読んでいただきたいと思います。

インフレなのに、上昇しないゴールドの謎

まず、ゴールドのチャートをご覧ください。インフレなのに、上昇のスピードは弱い。ようやく、ダウントレンドを脱したレベル。

ゴールド 週足チャート

●ゴールド/米ドルの週足チャート

インフレなのに上がらないゴールド。私が、その説明として考えたのは、以下の3点。

  1.  ゴールドは、時代遅れな金属であり、ミレニアル世代に好まれていない
  2.  暗号資産にシェアを奪われた
  3.  インフレは一時的なもの

ゴールドは、ミレニアル世代に好みに合わない

ミレニアル世代は、欧米を中心に、良く使われる用語。1980年以降に生まれ、ミレニアム(新千年紀)が到来した2000年前後から社会に出た世代。この世代は、デジタルと共に生きてきました。彼らの動向は、マーケティングだけでなく、投資の世界にも大きな影響を与えています。

彼らは、リーマン・ショックこそ味わったものの、「オンライントレードによる株式・FXトレード」の恩恵を十分に受けています。特に、米国株の上昇では、大きな利益を上げた世代。

そんな彼らにとって、「ゴールドは、価値を産まない資産」。時代遅れの遺物と思っている可能性があります。ゴールドは美しいけれど、博物館で王様や貴族の装飾品にするのがふさわしい。聖闘士星矢の黄金聖闘士にワクワクドキドキした世代としては、ゴールドへの冷めた見方には、共感しにくいのですが。

ゴールドよりも暗号資産が好み?

こんなセリフも聞いたことがあります。「ゴールドよりも、熱くなるのは、ビットコインやイーサリアム。どの暗号資産がナンバーワンになるのか予想する方が楽しいから。」

暗号資産は、ゴールドと違い、手に取ることも触ることもできません。しかし、そんなことは、ミレニアル世代には関係ないようですね。銀行預金も株式投資もオンライン口座で管理することに慣れた人にとっては、デジタルでしか存在しない資産を欠点とは思わないでしょう。

ゴールドも、商品先物取引やCFD(差金決済取引)で売買できますが、暗号資産・株式・FXといった金融商品に比べると、少々、人気面で見劣りします。

つまり、コロナバブル&インフレで、ミレニアル世代の投資家がダンスを踊る中で、ゴールドは、出遅れている可能性があります。

それでは、実際に、暗号資産の動きを見てみましょう。暗号資産が、大きく上昇しているようであれば、ゴールドのシェアが、奪われている可能性ありとの話を信じることができると思います

はい、ドーン。こちらは、ビットコイン/米ドルの週足チャートです。

ビットコイン 週足チャート

●ビットコイン/米ドルの週足チャート

おっと、一時は、30,000ドル前後まで下がったビットコイン。インフレが強まった夏以降に、急上昇。なんと、65,000ドルを超えて上昇しています。

ゴールドとビットコインの週足チャートを比べてみると、両者の上昇スピードが大きく違うことがわかりますね。おそらく、インフレヘッジとして、大きく買われているのは、ビットコインの方だと言えるでしょう。

そういった点では、ゴールドの上昇幅が小さいのは、やはり、暗号資産のせいだと言うこともできます。ただ、暗号資産は、価格変動が激しくて、手を出すのは難しいところがあると思います。

インフレは一時的=そのため、ゴールドが上がらない

さて、それでは、もうひとつの理由であるインフレが一時的だという考え方。暗号資産の急上昇からもインフレ楽観論は眉唾な気はしますが、そこは置いておきましょう。

止まらないインフレ

米国では、消費者物価指数の上昇に加えて、賃金や住宅価格の上昇が目立ちます。

そして、ついに来ました。日本にもインフレの足音が聞こえています。2021年10月の企業物価指数は、前年同月比8.0%と大きく上昇。石油・石炭などを中心に半分以上のモノが上昇。今後、しばらく、デフレからインフレになっていくと思った方が良さそうです。

なぜなっら、この冬は、エネルギー価格の上昇、新型コロナウイルスの変異株による感染再拡大などのインフレリスクが待ち構えています。

そのため、米連邦準備制度理事会(FRB)でも、ウォラー理事やボウマン理事達が、インフレの上方リスクや長期化リスクを懸念しはじめました。

バイデン政権による110兆円のインフラ投資もこれから

現在、起きているインフレの要因として、世界的な脱炭素化の動きが挙げられます。グラスゴーで開催されているCOP26(気候変動枠組み条約会議)で脱炭素は、止まらず強まることになるでしょう。

脱炭素は、タダではできません。新たなテクノロジーを活用したインフラ投資が必要。それは、電気自動車・水素自動車・自然エネルギーの活用がとなり、たくさん、お金がかかります。すなわち、その分だけ、価格に転嫁されることになりますから、インフレを強める方向に経済は動くでしょう。

つまり、今後もインフレが止まらない可能性が高いと思います。

となれば、暗号資産に比べて、出遅れ気味のゴールドも、インフレの波に追っかけられながら走り続けることになるのではないでしょうか