フィンテックなどの技術が高度化したり、投資家や預金者のニーズが多様化したりして、金融商品の種類が増えました。複雑な仕組みの金融商品もあり、金融機関と顧客との間でのトラブルが多くなっています。
こうしたトラブルを解決するために、国の制度として「金融ADR制度(金融分野における裁判外紛争解決制度)」があります。金融ADR(Alternative Dispute Resolution)は、裁判よりも費用や時間がかからずに、金融のトラブルの解決を図る制度です。
目次
金融機関とのトラブル解決や相談・苦情に
金融ADRは、2009年の金融商品取引法の一部改正で創設され、2010年10月から施行されています。金融機関と顧客との間でトラブルが発生した時に、第三者が関わり、裁判を行わない方法で解決を図る制度です。金融分野に詳しい弁護士などの中立・公正な専門家が「紛争解決委員」となって、裁判によらずに、金融トラブルの解決を図るものです。
具体的には、金融機関が業態ごとに紛争解決機関を設立し、利用したい人のトラブル解決の申請を受け付けています。紛争解決機関は、紛争解決の申立てだけでなく、相談や苦情も受け付けます。
一般の商品やサービスなどの苦情を消費生活センターが受け付けているのと同じように、金融商品に関しては、紛争解決機関が相談窓口になっています。利用者の苦情や問い合わせなどを受け付け、解決に向けた取組みをしています。
金融ADRの特徴
中立・公正である
金融分野に詳しい弁護士などの専門家が紛争解決委員となり、和解案を提示するなどして、解決に努めています。
迅速に
裁判では長い時間を要するのに対し、金融ADRでの紛争解決にかかる標準的な期間は、2ヵ月~半年程度となっています。
低コスト
業態ごとに設置された紛争解決機関は、利用するのに無料か、かかっても少額の利用料です。
株式・投資信託・債券・外国為替証拠金取引(FX)の相談は
- 特定第一種金融商品取引業務(証券会社、投資信託の販売業者)
特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC:フィンマック)
株式、債券、投資信託、FXなどの取引でのトラブルがあり、困っている場合は、フリーダイヤル「0120-64-5005」に相談してみて下さい。価格変動リスクや信用リスクが比較的高い商品は、トラブルを引き起こしやすいものです。これらの困りごとは、証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)が受け付けています。
たとえば、証券会社が顧客に投資信託の話をした時に、リスクをきちんと説明せず、顧客はその話を信じて購入したが、後から値動きがあることがわかり、最初の説明と違ったというような場合、FINMACに連絡をしてみましょう。
ただし、当然ですが、投資相談には応じていません。投資情報なども提供しません。
相談は、電話、ファックス、オンライン郵便などの方法が可能。相談や苦情処理は無料です。相談員は、厳重な秘密保持の下、相談者のプライバシーに充分配慮して応じていますので、安心して相談することができます。
もしも相談事や苦情が解決しない場合は、あっせん委員である弁護士があっせん制度(紛争解決業務)を行っています。あっせんは費用がかかりますが、裁判に比べると低額。損害賠償の請求金額に応じて2,090円から52,360円(消費税込)となっています。
金融の業態ごとに紛争解決機関がある
その他の業態で、現在、国の指定を受けているのは次の団体です。
- 生命保険業務・外国生命保険業務
一般社団法人生命保険協会(裁定審査会) - 銀行業務・農林中央金庫業務
一般社団法人全国銀行協会(全国銀行協会相談室・あっせん委員会) - 手続対象信託業務・特定兼営業務
一般社団法人信託協会(信託相談所) - 損害保険業務・外国損害保険業務・特定損害保険業務
一般社団法人日本損害保険協会(そんぽADRセンター) - 損害保険業務・外国損害保険業務・特定損害保険業務・保険仲立人保険募集
一般社団法人保険オンブズマン - 少額短期保険業務
一般社団法人日本少額短期保険協会(少額短期ほけん相談室) - 貸金業務
日本貸金業協会(貸金業相談・紛争解決センター)