金融ジェロントロジーという言葉があります。
人生100年時代と呼ばれる今、長寿だけでは幸せな生活は営むことはできませんね。
健康と十分な資産があってこそ楽しめるのが長い人生です。
長寿社会ならではの「認知機能低下」と「お金の管理」という新たな課題から生まれた研究分野について知っておきましょう。
目次
金融ジェロントロジーとは
ジェロントロジー(Gerontology)は、和訳すると「老年学」です。
金融ジェントロジー(金融老年学)は、加齢に伴う身体能力や認知能力の変化が経済活動や金融行動にどのような影響を与えるかを研究する学問領域のことを指します。認知科学や老年学、金融研究と組み合わせて研究されています。
研究目的
金融ジェロントロジーの目的は、金融の分野で高齢者が抱える課題を解決しようとするものです。
わかりやすい課題としては、
- 高齢者の資産を適切に管理・運用される体制
- 平均寿命より先に資産寿命がきてしまうのを避ける(伸長させる)
点が挙げられます。
現状の問題
加齢で認知機能が低下すると、計画や段取りを立てられなくなったり、判断力が落ちたり、将来の備えを使ってしまったりということが起きてきます。
その結果、将来を見据えた資産管理ができなくなり、資産寿命を不用意に短くしてしまうおそれがあります。
そのため、金融機関なども対応していますが、一律対応でしかできていないという問題があります。
どういうことかといいますと、認知機能の低下は人によってその進行の速さや、訪れる時期などは異なります。
しかし、現在の金融機関は、そのような各個人の認知機能の状態を踏まえた対応が難しく、年齢等の基準で一律の対応をしているというわけです。
例えば、「80歳以上はこの商品は取引不可」というように、
顧客の認知機能の状態に関わらず制限します。しっかりと判断能力のある方だとしてもです。
逆に、認知機能が低下している顧客だったとしても、年齢に達していないということで、価格変動が大きくリスク高めの商品を案内するケースがあります。
社会の動き
高齢者が社会で増加したことをきっかけに、金融庁や慶応義塾大学をはじめとして、多くの金融機関なども金融ジェロントロジーの重要性を認知してきています。
社会的にも金融機関は金融ジェロントロジーを取り入れた対応を実施することが求められてきています。
米国では1988年にすでに「Financial Gerontology」の学問分野が確立されこれまで大学や諸機関で教育や研究活動が行われてきています。
今後、この分野をサポートする専門家や資格なども目にする機会が増えるかもしれません。
まとめ
金融ジェントロジーの普及と発展で期待されることは何でしょうか。
加齢に伴う認知判断能力低下もありうる中、一律の制限などではなく、顧客一人一人の認知能力に合わせて、商品を提案したり資産を運用したりするような、高齢者とその家族に寄り添った金融サービスのあり方に期待できます。
また、資産寿命の伸長することによって、質の高い老後生活の実現に期待ができます。
健康寿命と資産寿命は伸ばせるだけ伸ばしたいものですが、資産寿命が先に尽きてしまうようでは豊かな老後を楽しむことはできません。
長寿大国である日本ですから、「資産寿命の守り方・延ばし方」という大切な課題を、私たち一人一人も探求し、意識していくことが大切になってきています。
- 健康寿命
男性 72.6歳
女性 75.5歳
男女平均 74.1歳
※WHO発表2021年版の世界保健統計(World Health Statistics)より。日本の健康寿命は世界一。 - 平均寿命
男性 81.64歳
女性 87.74歳
※厚生労働省(令和2年簡易生命表)