株式投資において、日本株よりも米国株を選ぶ方が増えています。
その理由に、投資リターンの大きさの差が挙げられます。
投資の効率性を重視するとなると、リターンの大きさは無視できません。
ただし、米国株には日本株と異なる特有の注意点があります。
最終的な利益に影響する可能性が高いため、事前に知っておくべきでしょう。
この記事では、米国株に株式投資したい方に向けて、米国株のメリット・デメリット、注意点などを一通りレクチャーいたします。
目次
米国株の魅力と投資する3つのメリット
米国株の魅力を語るとき、どうしても引き合いに出されるのが日本株です。
2023年4月時点では、日本株も再評価の機運が高まっています。
世界的投資家であるウォーレン・バフェット氏が、日本株重視の姿勢を鮮明にしたからです。
ほかにも、東証がプライム市場やスタンダード市場における企業価値の向上を促したりしています。
日本企業もようやく変わり始めるかもしれません。
とはいえ、現状ではまだまだ米国株のほうが魅力があります。
その理由を3つのメリットにまとめました。
《メリット1》成長性が高く長期的には株価が右肩上がり
バブル崩壊で幕を開けた平成の30年間、日本は株価(日経平均株価)がほとんど回復しませんでした。
一方、アメリカの株式市場は、同じ期間で株価(NYダウ指数)が約12倍ほどに上がっています。
もちろん、リーマンショックによる一時的な暴落などはありました。
それでも、たった数年間で株価が元の水準を回復し、再び成長軌道に乗せています。
日米で株価の上昇に明らかな差がついたのはなぜでしょうか?
その理由のひとつとして、企業の新陳代謝の差が挙げられます。
アメリカの株式市場には世界的に有名な大企業が多くあります。
いわゆるGAFAMを構成する5社の設立年に注目してみましょう。
企業名 | 設立年 |
---|---|
Microsoft | 1975年 |
Apple | 1976年 |
Amazon | 1994年 |
1998年 | |
Meta(旧Facebook) | 2004年 |
時価総額ランキングにおいて日本トップのトヨタ自動車は1937年の設立。
2位のソニーグループが1946年、3位のキーエンスが1974年の設立です。
このように新陳代謝に差がついた理由としては、以下のような日本の構造的な問題が挙げられます。
- 雇用の流動性が低く成長産業に人材が集まらない
- 新興企業に対する融資など起業を支援する環境が整っていない
- 新しいテクノロジーに関する教育に力を入れていない
結果的に日本が後れを取る一方で、産業の入れ替わりが進んだアメリカは劇的な成長を遂げました。
アメリカの株式市場は全体的にも成長していき、幅広い銘柄が株価を伸ばし続けています。
《メリット2》配当金が多く投資効率がよい
日本企業については、現金を貯め込む内部留保の多さがたびたび問題視されています。
利益を次の成長投資に回さず、従業員の給料にも反映せず、株主にも還元しない……。
そのような投資先として魅力の低い企業が、プライム市場のなかにも少なくありません。
一方で米国企業では、株主に対する利益還元策として配当金が重視されています。
内部留保が多くなるとアクティビスト(モノ言う株主)に批判されかねないからです。
そのため、米国株は全体的に高配当。
日本のような株主優待は基本的になく、その分配当金に回されていると考えられます。
また、なかにはP&Gなど増配(配当金アップ)を60年以上にわたり継続している企業もあります。
投資金額に対して配当金が多め(配当利回りが高め)なので、投資効率がよいといえます。
ただし、新興企業は利益を次の成長投資に回すケースが多いため、配当金がないことも珍しくありません。
ですが、ほとんどの場合は企業の成長に伴って株価が伸びますから、無配当でも問題ないでしょう。
なお、1年間に配当金を受け取れる回数は、一般的に日本株が年2回に対して米国株は年4回と多めです。
《メリット3》日本株と異なり米国株は少額の資金でも買える
日本株には、原則100株単位でしか買えない単元株制度があります。
そのため、1株2,000円の銘柄を買おうとしたら、20万円もの資金が必要となってしまいます。
この単元株制度が障害となり、個人投資家にとって日本株は手を出しにくいのが実情です。
それに対して、米国株は1株単位で買うことができます。
AppleやMicrosoftといったメジャーな銘柄でも、数万円あれば手に入ります。
駆け出しの個人投資家にとって、少額投資から始められることは大きな魅力です。
また、さまざまな銘柄に投資資金を分散させられるため、リスクコントロールがしやすいメリットもあります。
ただし、1株単位で売買すると手数料は割高になります。
頻繁に売り買いしたい場合は、事前に証券会社の手数料設定を確認しておきましょう。
米国株のデメリットを緩和するために必要な6つのポイント
米国株のデメリットとしては、以下の6点が挙げられます。
- 円高ドル安に動いて損するリスク
- 通貨交換のたびにかかる為替手数料
- 株価が急騰・急落するリスク
- 日米で二重課税される税金システム
- 日本株より高めの取引手数料
- 情報収集の難しさ
しかし、これらのデメリットは対策できるものです。
そこで、各デメリットを緩和するために心がけたいポイントを紹介していきます。
《ポイント1》為替変動はリスクヘッジとして活用する
米国株を買うにあたっては、円をドルに替える必要があります。
つまり、ドルを保有しているのと近い状態になるわけです。
そのため、もし為替が円高ドル安に振れると、株価が不変でも損失が生じます。
◎1ドル100円のときに1,000ドル分の米国株を購入したケース
1,000ドル × 100円/1ドル = 100,000円
・1ドル95円(円高ドル安)に振れると……
1,000ドル × 95円/1ドル = 95,000円
⇒「100,000円 - 95,000円 = 5,000円」の損失
※税制上適用される為替の違いや取引手数料は考慮していません。
この為替変動は、米国株に投資する以上避けられません。
そこで、視点を変えて円安ドル高に対するリスクヘッジと捉えるとよいでしょう。
日本株や日本円のみで資産を保有している場合、円安ドル高になるほど実質的に資産が目減りします。
アメリカの商品を買う場合に、より多くの日本円を用意しなければならなくなるからです。
しかし、資産の一部を米国株や米ドルで保有していれば、日本円に対する価値が上昇します。
より少ない米ドルで、日本の商品を買うことができるようになります。
もし日本株・日本円、米国株・米ドルを5:5で分散投資しておくと、理論上は為替変動リスクをほぼ避けられるようになります。
米国株にバランスよく投資しておくことは、リスクヘッジに繋がるのです。
《ポイント2》円貨決済ではなく外貨決済を必ず選ぶ
為替に関連するもう一つの注意点として、円貨決済と外貨決済の選択が挙げられます。
大事な点だけピックアップすると、以下のような違いがあります。
通貨の交換時期 | 米ドルの保有 | |
---|---|---|
円貨決済 | 米国株の取引ごと | 保有しない |
外貨決済 | 取引前に交換 | 保有する |
米国株を買うために日本円を米ドルに替える際、為替手数料が発生します。
一般的には通貨を交換するタイミングで25銭ほどかかります。
(2023年4月時点で、マネックス証券は買付時に限り無料)
円貨決済の場合、普段は米ドルを保有しません。
米国株を売買するたびに通貨の交換が必要になります。
そのため、為替手数料が頻繁に発生します。
一方で外貨決済の場合、事前に日本円を米ドルに替えておきます。
米国株を売って得た利益も米ドルのまま保有し、別の米国株を買うときは保有している米ドルを使います。
つまり、外貨決済では為替手数料がほとんど発生しません。
加えて、税金の計算で使われる為替レートにおいて、外貨決済のほうが有利になる仕組みも存在します。
したがって、為替手数料などのコストを抑えるなら外貨決済を選ぶのがポイントです。
《ポイント3》短期投資よりも長期投資を軸に考える
株を売買する際の取引手数料は、日本株より米国株のほうが高めに設定されています。
たとえば、ネット証券会社のマネックス証券の場合、約定金額の約0.495%(税込)です。
加えて、売却時に限り「SEC Fee」という現地取引費用が別途かかります。
取引手数料が高いということは、デイトレードのような短期投資は不利であるといえます。
銘柄を頻繁に売買するだけに、どうしても手数料がかさんでしまうからです。
したがって、米国株については長期投資で配当金を得ることを中心に考えるとよいでしょう。
すでに述べた通り、米国株は配当金の多さが魅力ですから、長期投資がお勧めなのは間違いありません。
《ポイント4》有利な価格で売買するために指値注文を使う
日本株にはストップ高とストップ安という仕組みがあります。
1日における株価の変動幅を制限することで、株価の急騰と急落を防いでいます。
しかし、そのような仕組みは米国株には存在しません。
それだけに、株価の急変には目を光らせておきたいところです。
ところが、アメリカの株式市場における取引時間は、現地時間の午前9時半から16時まで。
日本時間にすると、午後23時半から翌日午前6時※までとなります。
※アメリカでサマータイムが適用される3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までの間は、午後22時半から翌日午前5時まで。
時間帯を考えれば、株価を監視し続けられる方は少ないでしょう。
ただ、この点も長期投資を軸に考えていれば特に問題とはなりません。
経営的な問題がない限り、一時的に下がった株価はいずれ回復することが多いからです。
むしろ、株価の急変を上手く利用し、できるだけ有利な価格で取引したいところ。
取引金額を指定する指値注文を出す際は、少し低めの価格を設定するのがポイントです。
《ポイント5》二重課税を確定申告によって解消する
米国株で配当金が出た場合、日本とアメリカによる二重課税が問題となります。
配当金に対してアメリカが税率10%で課税したあと、日本も残りの金額に対して税率20.315%で課税する仕組みだからです。
この二重課税は、確定申告によって解消できます。
確定申告を済ませると外国税額控除の制度が適用され、アメリカに課税された10%分を還付してもらえます。
ただし、還付を受けるために確定申告した場合、結果的に納税額が増えるケースがあります。
所得の増加に伴い、扶養控除や社会保険料が変動する可能性があるためです。
納税額が上がるおそれのある方は、確定申告を行う前に税務署や税理士事務所に相談してみるとよいでしょう。
なお、NISA口座を使って購入した米国株については、そもそも日本から課税されていないため還付の対象外となります。
また、株価の売買益(譲渡益)についてはアメリカから課税されないため、二重課税の心配はありません。
《ポイント6》米国株に強い証券会社を選んでおく
米国株を買おうとすると、意外と得られる情報が少ないことに気付きます。
大手企業であっても、必要な情報が公開されているとは限りません。
情報があったとしても英語で書かれているため、ある程度の英語の読解力が求められます。
この点を解決するためには、証券会社選びが鍵を握ります。
米国株に力を入れているマネックス証券・SBI証券・楽天証券あたりが有力な選択肢となります。
マネックス証券 | 買付時の為替手数料が無料 |
---|---|
SBI証券 | 米国株の取り扱い銘柄数が多い |
楽天証券 | 楽天ポイントと連携できる |
特にマネックス証券は、情報の充実ぶりが群を抜いています。
ちなみに、どの証券会社を選んでも口座開設料や管理手数料はかかりません。
すでに日本株を取引している方であれば、簡単な手続きで外国株取引口座も作れます。
実際に米国株投資を始めるか迷っている場合も、ひとまず外国株取引口座を開設しておくのがお勧めです。
なお、口座開設後に米国株の銘柄選びに迷ってしまう場合は、ひとまずGAFAM、特にAppleやAmazonあたりを買ってみるとよいでしょう。
ただ、米国株は株価の変動が激しいので、特定の銘柄に資金を集中させることはお勧めできません。
1株から買える強みを活かして、複数銘柄・複数業界に分散投資することを心がけましょう。
まとめ
将来の成長を期待して資金を支援するのが、投資の本質です。
その点、人口の増加とともに成長し続けているアメリカは、投資の対象として魅力的といえます。
残念ながら現状の日本は成長が停滞しています。
2022年度の危機的な円安進行や貿易赤字を受け、ようやく国を挙げて改革に動き出したばかり。
このままではアメリカとの経済格差は開いていく一方でしょう。
それだけに、個人レベルでは成長スピードの早い米国株を通して資産形成を図ることは重要です。
まずは外国株取引口座の開設から始めてみませんか?
マネックス証券 | 買付時の為替手数料が無料 |
---|---|
SBI証券 | 米国株の取り扱い銘柄数が多い |
楽天証券 | 楽天ポイントと連携できる |