2021年は、新型コロナのパンデミックからの景気回復やインフレが、金価格に影響。NY金価格は、1,800ドル前後で推移と、横ばいトレンド的な動きの年でした。そして、米国の中央銀行「FRB」は、「量的緩和縮小・利上げ」という金融政策における一大転換期を迎えています。
2020年:2,000ドル超えの高値をピークに下落から横ばいへ。
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2022年の金相場は、米国の金融政策の行方に大きく左右される
2022年の金相場は、どうなるのでしょうか。「予想はうそよ」と言われるように、そうそう的中するものではありません。とはいえ、シナリオを予想しておくのは大事。私個人としては、2022年後半から2023年にかけて、大荒れになるのではないかと考えています。
そのキーは、利上げスケジュールの動向と長期金利及び実質金利の動き。
ただし、当面、これらの要素は、金相場の押し下げ要因になるでしょう。なぜなら、緩和縮小と利上げによって、長期金利が上昇する可能性が高いから。そうなると、金利の付かない金投資は、他の資産に対して相対的に魅力が弱まり、価格が下がりやすい傾向にあると予想できます。つまり、2022年の金相場は、米国の利上げを受けて、下落するリスクありというのが基本シナリオ。
しかし、これがいつまでも続くとは限りません。インフレのスピードが激しくなれば、利上げが追いつかずに、実質金利低下で、金価格が上昇するというシナリオも予想できますしね。
リスクシナリオ:利上げで景気後退や金融資産の暴落
さらに、もっと大胆なリスクシナリオも予想できます。新型コロナのパンデミックは、まだ終わったわけではありません。しかも、今、起きているインフレは、かつて、目標にしていた2%どころではありません。4%や6%というレベル。何しろ、米国の家賃は、2021年上期に、9.2%上昇というブルームバーグのニュースもあり。ちょっとシャレにならない状況です。
急激なインフレに対抗するのは難しい
強いインフレに対しては、政治的にも放置不可。相当、厳しくインフレ退治に動くことになるでしょう。現状、米国の利上げは、2022年中に、3~4回行われるのではと予想されています。
でも、0.25%か0.5%の利上げを4回。ということは、「4回利上げしても、1~2%」しか金利は上がりません。そして、これ位の利上げですら、株式市場は、耐えられず、大きな調整があるのではないかとの意見が有力。
- 金利とインフレ
さて、シンプルな算数です。金利が2%の時、インフレ率が6%であれば、人々はどうするでしょう。2%でお金を借りて、値上がりしそうなモノを買えば、なんと4%も儲かります。インフレとは、単純計算すれば、そういうこと。これでは、インフレ退治などできないのではないかと思ってしまいます。かといって、いきなり、金利を6%にすれば、株式市場をはじめとした資産価格は、耐えられるのでしょうか。
インフレ退治を目的に利上げを急ぎすぎると、株式市場が崩れるリスクや景気後退リスクが登場。だからといって、利上げを遅らせるとインフレが加速するリスクが浮上。
元NY連銀総裁のダドリー氏は、FRBの利上げは甘いと批判し、年4~5回の利上げもありえると指摘。内部にいると言いにくい率直な意見からも、金融市場と経済に対するジャブだと考えることができます。
強弱要因入り交じる金相場
金価格にとって、利上げはマイナス要因。そして、インフレはプラス要因。このような強弱入り交じる環境が、2022年は続くことになります。
もし、急激な米ドル安や株安といった緊急事態が生じれば、避難先の安全資産としてのニーズが、一気に出てくることを予想。
でも、一つ大事なことがあります。リーマン・ショック時、一時的にゴールドすら売られたように、とにかく、現金化という動きになれば、ゴールドも下がってしまう可能性がありますから、大きなレバレッジをかけての投資はリスクが大きい年と言えるでしょう。
結果的に、2022年の金融市場は、大荒れになる可能性があることを覚えておきましょう。
米国の強いインフレは、米ドルの減価につながる
そうなると、株式市場やドルは危ない。インフレ率の5~6%は、すなわち、その分だけ、米ドルの価値が減少していくということ。さらに、FRBが少し舵取りを間違えれば、インフレ加速の可能性もあり。
インフレ=通貨価値下落ですからね。米ドルが信用できないとなった時、人々が飛びつく通貨は何でしょうか?
ユーロ・・・うーん。米国と同じ。インフレの勢いは強く、遅かれ早かれ、利上げせざるを得ないでしょう。そして、EUは、脱炭素を強く推し進める立場から、エネルギー政策で右往左往しており、インフレの影響を受けやすくもあります。
ということで、日本円、スイス・フラン、ゴールド、暗号資産などがピックアップされてきそうです。日本のインフレは、欧米の後追いをするのか上昇しないのか、ちょっと不透明なところがあります。そのため、米ドルの代替通貨候補の中で、どれがもっとも安全か「最強の代替通貨」を決める戦いが、2022年から2023年にかけて起きる可能性があることを予想しています。
もし、欧米のインフレ率が、為替レートに反映されれば、一気に米ドル安やユーロ安などの通貨安競争に動く可能性があるのが、2022年の為替相場と金融市場の動向だと考えています。後、気をつけないと行けないのは、株式相場とリスク資産の買いポジション。
それを見極めるためにも、株式投資中心の個人投資家にも、金価格やスイス・フランの動向を追いかけてほしいと切に願うところです。
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