会社員から独立起業しようと考えている方向けに、今回の記事では個人事業主として事業を行っていく場合、その際に必要となること、個人事業主が支払う税金などについて書いていきましょう。
個人事業主になった場合、それはどこかの組織に属しているわけではなく、自分の両足でしっかりと立って事業を行っていかなくてはなりません。
正しく個人での事業の主になるわけです。これはフリーランスと似ているようで違います。
どちらかというと会社経営を一人でやっているという感覚で捉える方が良いでしょう。
会社員であった時の手取り収入や将来の年金も違ってきますし、自分の働き次第で得られる収入も格段に違ってきます。
早速、確認していきましょう。
目次
個人事業主とフリーランスの違いとは
今回は個人事業主になった場合の税金について詳しく書いていくのですが、その前に個人事業主とフリーランスではどのように違うのか理解しておきましょう。
わかりやすく言うと、会社員は勤務先と雇用契約を結んでいる人の事を指し、それに対して個人で事業を行っている人を『個人事業主』といいます。
一人で事業を行う場合だけではなく家族や雇用している従業員などがいてもそれが法人でなければ個人事業主と定義します。
例を挙げると家族で飲食店を営んでいる場合などがあげられます。
一方フリーランスとは単発的な仕事毎に契約を結び、案件ごとに業務を行う働き方をさします。
税務上、税務署に開業届を提出した人の事を個人事業主といい、個人事業主は個人の事業所得を申告します。
法人の場合は売り上げを法人所得として申告することになります。
次に一般的な税金について詳しく見ていきましょう。
税金について
サラリーマンの場合、勤め先の会社が税金の計算も行ってくれるし、毎月の給料から税金は天引きされることになりますので、自分が税金をどれくらい払っているのか、またどのような税金を払っているのかあまり気にしていない人も多いです。
しかし、個人事業主となると今まで会社が行ってくれていたような税金の計算も納税も自分で行う事になります。
初めは不慣れで手間のかかる作業になるかもしれませんが、個人事業主という道を選んだ場合は避けて通れませんし、税金についての知識があるか無いかで大きな差がついてきますので、しっかりと知っておいて欲しいと思います。
個人事業主になった場合の税金について
主な税金の項目として4つあります。
- 所得税
- 住民税
- 事業税
- 消費税
※注意点1:所得税と消費税は自分で申告・納税
※注意点2:事業税や住民税は市区町村などから送付される通知書に従って納める
上記以外にも、土地や家屋などの固定資産を所有している場合には「固定資産税」がかかります。
また、国民健康保険の保険料も納める必要があります。
もう少しそれぞれについて詳しく説明しますね。
- 所得税
内容:1月1日から12月31日までの1年間の所得の合計額から、各種所得控除額を差し引いた額に対して課税される。
納税方法:自分で申告・納税をする。
対象:一定の所得がある人が対象となる。
- 住民税
内容:都道府県民税と市区町村民税がある。
納税方法:市区町村から通知が来た場合に納税する。
対象:一定の所得がある人が対象となる。
- 事業税
内容:事業所得(青色申告特別控除前)が290万円超の場合に課税される。
納税方法:都道府県税事務所から通知が来た場合に納税する。
対象:指定された事業者のみ、一定の税率で課税される。
- 消費税
内容:預かった消費税と支払った消費税を精算する。
納税方法:自分で申告・納税をする。
対象:原則として、前々年度の課税売上高が1,000万超の場合に納税する。
これだけ見ると、税金の種類は多いし、どうやって計算するのだろうか?
手間がかかりそうだ、など不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし、税金の知識は自分で事業を行う上では避けては通れないものです。
また税金の知識があるほど無駄な支払いをしなくても済みます。
次に、さらに詳細の説明をしていきます。
所得税
所得税ですが、まず所得とは何かを理解しておいてください。
所得とは、収入−必要経費となります。
所得税は所得全体にかかるものではなく税金を課せられるのは所得課税金額といい、課税所得金額=所得―所得控除となります。
この課税所得金額に税率をかけてそこから控除額を引いたものが基準所得税額となります。
式で表すと、「課税所得金額×税率-控除額=基準所得額」となるのです。
※所得額の税率は所得が高くなれば段階的に税率が高くなる
所得税を理解する際に覚えておいて欲しいことは、所得が増えるほど支払う税率も高くなるという事です。
これは明確に決まっており、下記のようになっています。
課税される所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超え | 45% | 4,796,000円 |
住民税
住民税とは、地方公共団体(都道府県や市区町村)の住民であることで課税される税金のことです。
所得税と同じように所得に対する税金ですが、住民税の場合には前年の所得に対して1月1日現在の住民地で課税されます。
住民税は市区町村から納税通知書が送付されてきますので、それを年4回に分けて納税します。
自治体によっては、一括前納すると多少割引されることもあります。
サラリーマンの人は自動的に天引きされるのですが、個人事業主の場合は各自納税する必要があるのでご注意ください。
所得の額に応じて課税される
住民税は所得の額に応じて課税されます。
- 「所得割」と、所得金額に関わらず等しく負担することになっている
- 「均等割」の部分から成り立ってる
式で表すと、「住民税=所得割+均等割」になります。
事業税
事業税とは、個人事業主が事業を営む際に受ける公共サービスに対して課される税金です。
事業税の対象となる個人事業主は、70種類の法定業種のみであり、これらの業種に該当しない業種の個人事業主は、事業税を納める必要はありません。
細かく決まっておりますので、気になる方は
の4法定業種と税率(参照元:東京都主税局)をご参照下さい。
個人事業主の場合、事業主控除として年290万円の控除が認められるので、事業税は「事業税=事業の総収入金額-事業の必要経費-事業主控除」となります。
事業税は各都道府県税事務所から納付書が送られてきますので、8月と11月の2回に分けて納税することになります。
消費税
消費税は、前々年度の消費税の対象となる売上が1,000万円を超えた個人事業主に課されます。
消費税の計算は、課税売上にかかる消費税額(預かった消費税額)から、課税仕入にかかる消費税額(支払った消費税額)を差し引いて計算します。
※全前年度の売り上げが1,000万円をこえないばあいは支払いを免除されます。
預かった消費税の計算は比較的簡単ですが、支払った消費税額の計算は非常に面倒なルールがあり、計算が少し複雑です。
消費税は電話代や交通費の他、自動車やパソコンなどの固定資産などあらゆる経費に含まれており、決算の際に数多く登場してくるし、仕分けも手間がかかるからです。
中小事業者については、以下のように簡易な方法(簡易課税)で計算する特例が認められており、預かった消費税額-(預かった消費税額×みなし仕入率)=納付する消費税額と、算出することができます。
税率は、業種区分によって以下のように決められています。
個人事業主とフリーランスの税金:まとめ
上記で書いてきましたように、初めてみるととても難しそうだなと感じられることでしょう。
しかし、個人事業主にとって税金は克服しなくてはならない重要な課題です。
整理も大変ですし、厄介な業務かも知れませんが、健全な経営を行う上で避けては通れない事なので税金についての知識を深め、上手に付き合っていきましょう。