アフガニスタンをタリバンが制圧。現金持って逃げるよりゴールドを!

アフガニスタン

アフガニスタン紛争で多国籍軍が、タリバンを壊滅させたのは、2001年のこと。それから、約20年。平和・国造りってムズカシイですね。なんと、ここにきて、アフガニスタンは、ふりだしに戻ってしまいました。公約通り、米軍の撤退が進む中、20年前、多国籍軍が叩いたはずのタリバンが勢力を拡大。2021年8月15日に、全土をほぼ制圧。

タリバンによるアフガニスタン制圧でゴールドに注目

これにより、マーケットに緊張が走りました。タリバンは、アルカイダとの連携や同時多発テロを思い出させるため、金融市場では、有事の金との発想で、ゴールドも上昇。でも、慌てて、ゴールドを買わず、様子見しながらがいいでしょう。急騰しているわけではありませんから。

ゴールド価格

タリバンは、今後、どうするのか

アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領は、逃亡。なんと、現金を大量に持って逃げ出したようですが、ヘリに積みきれず。世界銀行出身なのに、慌てましたね。ゴールドや宝石の方が、持ち出しやすかったはずです。さらに、タリバン政権に交代することから、アフガニスタンの通貨「アフガニ」は、大暴落。今後のアフガン情勢に注目する必要が出てきました。

タリバン側は、記者会見を行い、アフガニスタン以外に出ていくつもりはない。アルカイダをはじめ外部のテロ組織と提携する予定はないと言い切っています。今後は、周辺諸国との連携・イスラムに則ったアフガニスタン政府の樹立を目指すなど、イメージよりは、穏健な印象を与えています。

もし、タリバンが、アフガニスタンだけに留まるのなら、米軍は、このまま鉾を収めそうです。バイデン大統領は、アフガニスタン軍が戦わないのに、米軍が戦って死ぬことはないと宣言していますからね。そして、しばらくの間、タリバンは、他国を侵略するような勢いはないでしょう。

中国とインドのリスク拡大

ただし、アフガニスタンの陥落は、他のところにも影響を与えます。タリバン政権に接触している中国の動きは注目。そして、タリバンと関係の深いパキスタン。米国・インドに対して、タリバン・パキスタン・中国という対立軸が強まるとやっかいです。米側は、外交交渉を駆使して、パキスタンとタリバンを切り離さないといけません。

そうしないと、インド周辺への中国の影響力が強まりますし、インドは、枕を高くして寝ることができなくなります。ということで、インド周辺の地政学リスクは、高まっています。

中国の勢力拡大につながる

中国は、ウイグル自治区の人権問題を抱えています。タリバンが、同じイスラムとして、ウイグル自治区の人権問題に首を突っ込むとやっかい。しかし、タリバンと中国の間は、話が付いていると見るのが妥当。実際、タリバン政権を中国は、いち早く承認する意向ですからね。水面下で話をせずに、いきなり、話が進むことは、ほとんどありません。

そうなると、中国は、またもや駒を一歩進めたと見るべきでしょう。台湾に対して、米国は最後に見捨てるとの脅しをかけはじめており、アジア・アフリカでの米中バランスが、中国側に傾いた感は否めません。

そんななか、台湾の蔡英文総統は、「唯一の選択肢は、よりしっかりと自主防衛すること」と与党のオンライン会議で話しています。これ、我々、日本人も同じ。

すなわち、有事リスクは高まっており、インド・台湾をはじめとしたアジアの各国で、ゴールドへの需要が増えていくのではないかと思います。なお、アフガニスタン中央銀行が保有していたゴールド20.9トンは、FRBに預けられており、タリバンが引き出すことはできなくなっています。

ゴールド 上昇

弱まる米国の対外影響力

オバマ政権は、世界の警察官という米国の役割を放棄しました。続くトランプ大統領は、アメリカ・ファーストという諸外国より米国を優先する方針でしたね。そして、バイデン政権もアフガニスタン放棄によって、米国優先の方針を打ち出したことになります。

タリバンによるアフガニスタン制圧を受けた会見で、バイデン大統領は、こんな答えを返しました。記者の質問に対して、「ウイグル人のために、中国と戦争をしろというのかね」。正論だとは思います。でも、世界の平和維持に対しては、ちょっと疑問。

米軍の力が弱まれば、世界各地で争いが生じるでしょう。米軍の力がなくなる=平和になるという単純なものではありません。軍事力で平和を保っていたところに、争いが起きるのです。そして、勢力を伸ばそうとする中国・ロシアの両国。いわゆる統一帝国の衰退による戦国時代が、進行中なのが、現在の世界観。

現金を持って逃げるのは大変

アフガニスタンのガニ大統領の逃亡。そして、アフガン人がカブールの空港に押し寄せる映像を見た人々は、考えるはず。いざというときのために、何を持って逃げなければいけないのかを。ID・パスワードを覚えていて、ハッキングされない自信があるなら暗号資産。そして、持って逃げるなら、現地の紙幣よりも米ドルやゴールドをおすすめします。

とはいえ、闇雲にゴールドを買えばいいとは思いません。ゴールドは、様々な変動要因によって値動きしますので、今回の事件だけを見るのは片手落ち。タリバン復活が、今後の世界情勢にどのような影響を与えるのかを確認していくことが大切です。