いよいよ始まるFRBの出口戦略。前回、バーナンキ議長の時、株とゴールドは、どう動いたのか?

テーパリング 株価 ゴールド

量的緩和終了時に株とゴールドは、どのように動いたのか

前回、バーナンキ議長によるQE2からのテーパリングは、初めての事だけに大きな話題になりました。QE2という新しい金融政策をいかに終わらせるか。出口戦略に失敗すれば、新たな金融危機を招くのではないかと心配の種はつきない状態だったのです。今となって、振り返れば、上手く成功したと思います。バーナンキ氏の後任としてFRB議長となり、現在、米国の財務長官を務めるジャネット・イエレン氏の評価が高いのは、この辺りに理由あり。

※テーパリング:資産買い入れの段階的な縮小。量的緩和を終わらせる出口戦略の一つ。

歴史は繰り返す。そして、相場は繰り返すをお忘れなく。

バーナンキ議長のテーパリングとテーパータントラム

前回のテーパリングは、下記のスケジュールで行われました。この時、金価格は、テーパリング中は、少し下落。その後、テーパリングが完了し、政策金利を引き上げだしたあたりから、やや上昇しています。

  • 2012年12月:FOMCでテーパリングの議論。1月の議事録公開で明らかに
  • 2013年5月:バーナンキ議長によるテーパリング示唆=テーパータントラム。
  • 2013年12月:テーパリング開始
  • 2014年10月:テーパリング完了
  • 2015年12月:政策金利の引き上げ
  • 2017年10月:保有国債の削減開始:バランスシートの調整

※テーパータントラムとは、金融政策の変更に伴う市場の大幅な動揺のこと。前回、2013年5月のバーナンキ議長が、株式市場の下落を誘ったことを言います。今回も同じようなことが起きる可能性は残されています。

テーパリングとゴールド&株価の動き

ゴールドとテーパリング

NY金CFD価格の月足チャート

一応、テーパリングによって、資金供給が絞られる&米国の金融引締となるため、米ドル高に動きやすい。つまり、米ドル上昇金価格安に動きやすいというのがセオリー。ただし、ゴールドは、前回のテーパリングで、それほど急激な動きは見せていません。

それよりも、その前段階で、金価格は下落。

2012年は、欧州のギリシャを中心に債務危機が深刻化。ギリシャをはじめとした南欧州諸国をいかに救済すべきか議論が行われていました。キプロス中銀の金売却話なども浮上し、欧州は荒れ模様。しかし、それでも、米国市場は、確実に回復へと向かい、量的緩和は終わろうとしていました。

そして、2013年1月3日に公開された米FOMC(連邦公開市場委員会)議事録。ここから、大きく流れは変化。12月に開催された会議で、数名の理事が、QEを速いタイミングで減速・停止すべきと考えているとの話が出てきました。ここで、テーパリングに向けた議論はスタートしており、金価格は、その議論を先取りして下落しています。

米国株とテーパリング

S&P500指数:月足チャート

株式相場の方も見ておきましょう。赤い四角が、2013年5月のテーパータントラム。しかし、ショックは、一時的。その後も力強く上昇。あまりにも上昇幅が大きすぎて、過去の下落相場は、くしゃみ程度の小幅な影響になっています。

近年の米国株式は、テーパリング・利上げ・バランスシート調整・・・何のそのとばかりに、上昇を続けていることがわかりますね。

今回も、ゴールドは、ある程度、テーパリングを先取りしてか、弱さを見せています。今後も、テーパリングが落ち着くまで、強気予想を出しにくい局面が続くかもしれません。

2021年以降のテーパリングスケジュール

現在のところ、FRBのテーパリングは、下記のようなスケジュール感で動いています。

  • 2021年11月:テーパリング開始
  • 2022年6月:テーパリング完了が有力
  • 2022年12月:政策金利の引き上げ予想
  • 2023年:保有国債の削減開始:バランスシートの調整

米金融大手のゴールドマン・サックスの予想は、11月のFOMCで正式発表。11月中旬からスタートし、毎月150億ドルペースで縮小。2022年半ばに終了とのスケジュール。

さて、インフレ率の上昇により、政策金利の利上げ時期は、早くなりそう。予想は、前倒しとなり、2022年中に利上げが行われるとの味方が有力。このままだと、インフレ率や経済状況次第で、2022年の経済や金融市場は、利上げを巡る話題に振り回されることになるでしょう。まあ、もしかしたら、市場やデータが、FRBを振り回すかも!

スタグフレーションのリスクはあるのか

FRBは、失業率とインフレ率が同時に上昇していくスタグフレーションのリスクは低いと見ています。米国では、インフレ率が上昇しても、テーパリングや利上げで対処ができますからね。

問題は、新興国。もしも、スタグフレーションが起きると大変です。政府打倒に立ち上がる民衆も出てくるリスクがあります。米国が利上げなどで米ドル高になれば、新興国の通貨危機や債務増加に繋がり、米国の金融引締めが、新興国危機へと発展する可能性があります。
そして、米FRBが、責任を負っているのは、米国と米国民ですから。新興国が少々の危機に見舞われても、金融政策のスケジュールを変更しないでしょう。

テーパータントラムは、このままないのか?

ここまで、FRBは、前回のテーパリングで起きたようなテーパータントラムを起こさずに済んでいます。とはいえ、上記にあげたテーパリング開始や政策金利の引き上げなどをきっかけに、市場が大きな下落を見せるリスクを常に考えておきましょう。ゴールドと株の両方を見ることで、その兆候に気づきやすくなると思います。株式投資家の方も、ゴールドに注目することをおすすめいたします。