老後にどれだけ年金を受け取れるかが不透明な今、着々と人気を集めている資産運用が『iDeCo(個人型確定拠出年金)』。
iDeCoは、働けるうちに自分でお金を積み立てることで、老後の資産を構築する資産運用です。
ただ実は、シンプルに積み立てていくだけで節税効果があることも人気の秘訣になっています。
要するに、「未来のためにお金を積み立てながら、いま現在の税金を節約できる」という、一石二鳥な資産運用なわけですが、控除など具体的にどんな節税効果があるのかまで知っている方は、案外少ないんですね。
そこで今回の記事では、iDeCoの節税効果にフォーカスし、「どんな時に」「どれほどの金額を」節税できるのか、詳しく解説していきます。
目次
iDeCoとは何か
それではまず、そもそもiDeCoとはどんな資産運用なのかを簡単に説明しましょう。
iDeCoは自分で申し込み、掛金を拠出し、好きな運用方法を選んで掛金を運用するというもので、掛金と運用益の両方を受け取れる資産運用です。
iDeCoの掛金は月々5,000円以上となっており、1,000円単位で自分の加入資格に沿った上限額の範囲内で設定できます。
そして、掛金と運用益を受け取れるタイミングに関しては『原則60歳になってから』という条件があります。
60歳になるまで受け取れないというのはつまり、「長期運用」が前提になっているということ。そのため、無理なく継続して拠出できる掛金額を設定する必要があるんですね。
好きなタイミングで利益を受け取れないのはネックとも言えますが、最終的には毎月拠出してきた金額にプラスして、運用益まで受け取れるので、ただ貯金するよりもお得と言えます。
そんなiDeCoは、主に3つのタイミングで税制上の優遇措置を受けることができるんです。
iDeCoで節税効果が見込める3つのタイミング
iDeCoで節税効果を見込めるのは、「積立時・運用時・受取時」の3つのタイミングです。
それぞれのタイミングで、どれほどの金額を節税できるのかを解説していきます。
①積立時:掛け金が全額所得控除される
まずは積立時に、税制上の優遇措置を受けられます。
驚くべきことに、iDeCoで積み立てた掛金はその全額が所得控除の対象になり、所得税と住民税がそれぞれ軽減されるんです。
例えば、30歳で年収450万円のサラリーマンの方が、毎月1万円をiDeCoで積み立てるケースを考えてみましょう。
すると、節税効果は以下のようになります。
-
1年あたりの軽減額
- 所得税軽減額 10,122円
- 住民税軽減額 12,000円
- 合計軽減額 22,122円
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30年(60歳になるまで)の軽減額
- 所得税軽減額 303,660円
- 住民税軽減額 360,000円
- 合計軽減額 663,660円
※所得税率や住民税率は現実に近い、仮の数値で計算していますが、あくまでもシミュレーションのため、実際の金額とは異なります。
このように1年あたり約2万円、60歳までの30年で節税効果は合計で約66万円にもなるんです。
もちろんこれらは、iDeCoで資産運用をしていた場合に得られる節税効果なので、iDeCoをやっていなければ節税効果はゼロになります。
②運用時:運用利益が非課税
また、運用時にも税制上の優遇措置を受けられます。
具体的には、iDeCoの運用益は課税されないので、再投資されるお金が増える、つまり積み立てる期間が長くなればなるほど、運用益が増えやすくなるということです。
通常、資産投資などの金融商品を運用する際は、運用で得た利益に対して一律で20.315%の税金がかかります。
ところが、iDeCoで運用して得た利益に対しては税金がかからないので、運用益がまるまる自分の利益になるんです。
そして、非課税の運用益はそのまま再投資に回されるので、他の資産運用よりも有利にお金を増やすことができます。
先ほど例に挙げた、30歳で年収450万円のサラリーマンの方と同じ条件で、年率3%で運用した場合を例に考えてみましょう。
すると、運用益の非課税分などは以下のようになります。
毎月掛金 | 10,000円 |
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運用益 | 2,227,369円 |
運用益の非課税分 | 445,474円 |
積立元金 | 3,600,000円 |
合計金額 | 5,827,369円 |
節税効果 | 445,474円 |
※あくまでもシミュレーションのため、実際の金額とは異なります。
ご覧の通り、積立時の約66万円に加えて、運用時にはさらに約45万円分もの節税効果が見込まれるわけです。
③受取時:一定額まで非課税
そして極めつけは、60歳以降に積み立てたお金を受け取る際にも、税制上の優遇措置を受けられます。
受け取る方法としては、大きく分けて“年金”と“一時金”があり、年金で受け取るなら「公的年金控除」、一時金で受け取るなら「退職所得控除」がそれぞれ適用されるんです。
例えば、30歳から60歳まで、30年間積み立てて一時金で受け取るのであれば、他の退職所得と合算して1,500万円まで非課税になります。
最近は退職金がない会社も増えているので、会社から受け取る退職所得との合算がネックにならない方も多いでしょう。
また、60歳から年金で受け取るのであれば、公的年金と合算して60万円まで非課税になります。
ちなみに、この両者では一時金で受け取る方が多いのですが、それは非課税になる金額が、一時金のほうが多いからというのも理由の一つに違いありません。
もちろん、年収や年齢、掛金額によって節税効果は変わりますが、少なくとも普通に貯金するよりはiDeCoのほうがお得にお金を増やせるのは確実ですね。
iDeCo控除:まとめ
今回解説してきたように、iDeCoの節税効果はかなり高いですし、働いていて所得がある方であれば誰でも始められます。
毎月コンスタントに掛金を支払えば、あとはほったらかしで運用益を狙ってくれますし、所得税や住民税を抑えることも可能です。
ただ、60歳まで積み立てたお金を受け取れないので、くれぐれも無理のない範囲の掛金で積み立てるようにしてくださいね。