日本国内の金価格と米ドル及び円高の矛盾したややこしい関係を学ぶ

金

日本国内の金相場、いわゆる「円建ての金価格」は、米ドル/円のレートに大きく影響されます。
この話、結構、ややこしいので、ゆっくりとお読みいただけると幸いです。

できるだけ、わかりやすくするため、為替相場とゴールドの関係を3段階にわけてご説明いたします。

為替相場とゴールドのややこしい関係性

1. 為替相場と日本国内の金価格
2. 米ドルと金価格の逆相関関係
3. 矛盾する(相殺される)両者の関係

1.為替相場と日本国内の金価格

金は、どこの国でも同じ価値を持つのが大原則。
もちろん、日本のゴールドも同じ。

世界中の金価格は、連動していますが、国際金価格と日本では、単位が違います。

●海外の金価格:1トロイオンス(31.1g)/米ドル
●日本の金価格:1g/日本円

このように、海外と日本では、ゴールドを取引する単位が「トロイオンス=グラム」「米ドル=日本円」と異なります。
そのため、日本の金価格は、為替レートによって、値段が変化。

たとえ、海外の金価格が変わらなくても、米ドル/円の値動きによって、「国内の金価格」は、上下するという事。
では、具体的に、米ドル/円が、円高・円安に動いた場合、どのように、国内金価格が動くか見ておきましょう。

海外金価格:1,800ドル。
為替相場が110円から、上下に10円変化した場合の国内金価格の計算値。

●米ドル/円が円安に 120円:6,945円
●米ドル/円     110円:6,366円
●米ドル/円が円高に 100円:5,787円

※理論値であり、実際の販売価格とは異なります。

米ドル/円が10円動けば、約578円の価格差。
このように、金投資を考える場合、為替相場を考えることが必須。

海外の金価格は下落。
しかし、為替相場が、大きく円安に動いたため、国内の金価格は、上昇するということがあり、為替と金価格の関係を知らない方がびっくりされることもありますからね。

日本国内の金価格と米ドル/円の関係

1.米ドルが安く、日本円が高くなる=「円高に動く」と、国内の金価格は、安くなる。

2.米ドルが高く、日本円が安くなる=「円安に動く」と、国内の金価格は、高くなる。

円高になると、海外から輸入されるブランド品の価格が安くなると同じような原理ですから、イメージしやすいと思います。

ただし、今回の話は、ここで終わりません。
次に、米ドルと金価格の関係をお伝えしなければ、画竜点睛を欠くことになってしまいますからね。

2. 米ドルと金価格の逆相関関係

ゴールドは、安全資産・代替資産としての強いニーズを持っています。
では、何に対しての代替資産なのかをあなたも考えてみてください。

株・不動産・・・その答えも当たりです。
そして・・・最大の代替ニーズは、

そう、一番の答えは、「米ドル」です。
もともと、第二次大戦後の経済体制は、米ドルと金のレートを固定し、いつでも交換できる「金本位制」でスタートしました。

残念ながら、21世紀の現代において金本位制は、終了したものの、世界の基軸通貨としての役割は、引き続き米ドルが担っています。

そのため、米ドルが安くなると、ユーロや日本円などと一緒に、ゴールドも高くなりやすいというセオリーがあります。

さらに、米国による経済制裁の効果も見逃せません。
米国は、世界の基軸通貨である米ドルを利用し、米国及び西側世界のルールに反した国に経済制裁を加えます。簡単に言うと、米国の銀行や米ドルの利用に制限や禁止することで、経済活動をしにくくするということ。

この経済制裁を回避したければ、自国の通貨・暗号資産・ゴールドを使うことになります。
でも、自国通貨に信用がない・受け取ってくれない可能性は否めません。そのため、米国との関係が良くない国(中国・ロシア・イランなど)は、金の在庫を増やしています。

ということで、米ドルと金相場は、以下のセオリーが成り立ちます。

●米ドル安=ゴールド高
●米ドル高=ゴールド安

3. 矛盾する(相殺される)両者の関係

さて、いよいよ三番目のお話の始まり。

日本国内の金価格・米ドル・国際金価格。
この三者は、三角関係のように矛盾していることに気づかれましたでしょうか。

日本人が、現物の金を買う場合。
地金・純金積立など「1g/日本円の円建て」で買うことが多いはず。また、商品先物取引で、金先物取引を行う場合も円建て。
その時に、注意してもらいたいのが、この三角関係。

いくら、海外の金価格が上昇しても、国内の金価格が上昇しないと国内で売買した場合の値上がり益は得られませんしね。
日本でゴールドを売買する場合、国内金価格の値動きを優先して考えなければいけません。そこで、「為替相場と金相場自体の値動き」を注意して見る必要があるわけです。

この3つの関係をまとめるとこのようになります。

1.国内金価格は、円高で安く(下落)なり、円安で高く(上昇)なる。

国内金

2.国際金価格は、米ドル高で安くなり、米ドル安で上昇する

国際金

3. 米ドル高は、100%ではないにせよ円安になりやすい。

そして、米ドル安は円高になりやすい。

つまり、米ドル安で、国際金価格が値上がり。
だからといって手放しで喜べません。
米ドル安によって、大きく円高に動いた場合、国内金価格は、円高分だけ相殺されてしまいます。
そのため、海外金相場を単独で見るのはリスキー。同時に、為替相場を見ておかないといけません。

結論として、日本国内の金価格を見る・ゴールドを売買して利益を得たい・投資したいと考える場合。
国際金価格・米ドル/円の2つの相場をしっかりと確認して理解しておく必要があります。