株式投資で稼いでいくのであれば、確定申告は避けては通れません。
無事申告を済ませたつもりでも、実は申告不要だったり、節税制度を活かしきれていないこともあるため、直接お金に関わるポイントについては学んでおくべきです。
そこで本記事では、株式投資で確定申告が必要になる条件、また関連した節税ポイントについて分かりやすく解説していきます。
少しでもお得に確定申告を済ませたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
株式投資では確定申告が不要となるケースが多い
株式投資で利益を得たからといって、即座に確定申告の義務が生じるわけではありません。
一定の条件を満たしていない、あるいは仕組みや制度上により、確定申告が不要なケースも多々あります。
株の合計収入が20万円未満なら税金がかからない
給与以外の所得が年間で20万円を超えなければ、確定申告する必要はありません。
ただし所得には様々な種類があり、株式投資の利益が20万円未満でも、不動産所得や副業アルバイト所得と合算して20万円を超える場合には、やはり申告の義務が生じます。
また仮に株式投資の利益が20万円を超えていても、不動産等その他の赤字と合算させて課税対象額を減額することで、申告不要となるケースもあります。
特定口座(源泉徴収あり)なら自動的に税金が差し引かれる
証券会社で口座開設する際、一般口座と特定口座いずれかを選択します。
特定口座では「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の選択があり、「源泉徴収あり」を選択すると、利益に課される税金が源泉徴収されるようになります。
源泉徴収によって自動的に納税が完結するため、確定申告が不要になるというわけです。
ただ「源泉徴収あり」の場合においても、後述する「損益通算」や「繰越控除」を利用するためには申告が必要になりますので、状況に応じて申告の要否を判断していかねばなりません。
NISA(少額投資非課税制度)なら税金自体かからない
株式投資に詳しくなくとも、「NISA」や「積立NISA」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
NISAとは、NISA口座で生じた金融商品(株式・投資信託・ETF・REIT)の利益が、年間120万円の範囲内で5年間非課税になるという制度です。(2023年時点。2024年以降は年間投資枠が2~3倍に拡大し、非課税の期限もなくなります)
課税される対象がNISA口座によって非課税になれば、当然納税する必要もなくなるため、確定申告書の作成も不要です。
株取引で損失が生じたときは確定申告で節税できる可能性あり
株式投資で損失を出してしまうのは、誰にとっても喜ばしいことではありません。
しかし、出してしまった損失が必ずしも無駄な出費になるわけではなく、「損益通算」「繰越控除」の制度によって節税に利用することができます。
損益通算によって課税対象の利益を減らせる
損益通算とは、利益と損失を合算することで、対象となる課税金額を引き下げられる制度です。
例えば以下の図のように、A口座の取引で利益100万円、B口座の取引で損失100万円の結果であった時、トータル収支は「0円」です。
しかしここで損益通算を利用せず、A口座の利益分のみを申告してしまうと、約20万円ほどの税金が課せられます。
課税されるのは、最終的に残った利益に対してのみになりますので、うっかり利益分だけ申告しないよう注意しましょう。
繰越控除によって株取引の損失を3年間繰り越し可能
繰越控除とは、株式投資で生じた損失を3年間にわたって繰り越して控除できる制度です。
例えば、ある年に100万円の損失が生じて、それから3年間以内に100万円の利益を出した場合、損失と利益を合算して課税対象金額を「0円」にすることができます。
ただし繰越控除の制度を利用するためには、損失分もきちんと申告しておく必要があるため、利益が出ていなくとも申告する意味があるということを覚えておきましょう。
株式投資における確定申告の手続き方法
ここからは、確定申告の流れや必要書類についてステップ形式で解説していきます。
ステップ1:収入を示す書類の準備
まずは自身の収入状況を示す書類を準備しましょう。
サラリーマンの人であれば給与の源泉徴収票、自営業の人であれば前年度の確定申告書類を手元に置いてください。
今回初めて確定申告を行う方で、会社等の組織に所属されていない方は、ここのステップは飛ばしていただいてOKです。
ステップ2:控除に関する書類の準備
社会保険や医療費控除を適用させるのであれば、社会保険料や生命保険料の控除証明書が必要です。
会社員の方で、年末調整が既にお済みの方は準備する必要はありませんが、自営業の方や年金で暮らしている方は、事前に取り揃えておきましょう。
ステップ3:株取引関連書類の準備
証券会社の「特定口座」で取引されている方は、日頃から利益が源泉徴収されており、自動的に納税が完結するため確定申告の必要はありません。
一方、繰越控除の目的で損失を計上したい場合は、年間取引報告書が必要になります。
年間取引報告書は、特定口座であれば証券会社から毎年一月中旬に送付されてくるので、忘れずに残しておきましょう。
ステップ4:申告書B(第一表、第二表)の作成
確定申告のメイン書類となる申告書B(入手先:国税庁ホームページ)では、名前や住所等の基本情報、本業の収入金額や税金の計算を行います。
- 住所・氏名
- 収入金額
- 所得金額(収入 – 経費)
- 所得から差し引かれる金額(所得控除額)
- 税金の計算
記入する内容については、ステップ1~3で準備した書類があれば楽々と記入できるはずです。
記入するのが大変そう…と不安に思われる方は、「freee」や「弥生」などクラウド会計サービスの利用をおすすめします。
質問に従って数字を入力するだけで、必要な書類が自動的に出来あがりますので、確定申告に対するハードルを大きく下げられるのではないでしょうか。
ステップ5:申告書第三表(分離課税用)の作成
株取引に関する所得や納税額をまとめた書類が、申告書第三表(入手先:国税庁ホームページ)と呼ばれるものです。
基本的には、ステップ3で準備した年間取引報告書を転記するだけでOKですが、不明な点があれば国税庁ホームページに詳しい記入方法が載っておりますので、そちらを参考にしてみてください。
ステップ6:必要な書類の提出
ステップ1~5で作成した書類を提出して、確定申告は完了です。
提出方法は大きく分けて以下の3つになります。
- e-Taxで作成:オンラインで提出
- 国税庁WEBサイト「確定申告書等作成コーナー」で提出
- 税務署で書類をもらって手書き後に郵送または持参
以上で、株式投資の確定申告は完了です。
最近では、確定申告の専用ソフトや「freee」や「弥生」などクラウド会計サービスも充実しておりますので、従来よりも比較的簡単に済ませられるでしょう。
まとめ:株式投資の確定申告は基本不要!ただし損失の申告は忘れずに!
本記事では、株式投資で確定申告が必要となるケースについて、以下のポイントを中心に解説しました。
- 確定申告は不要となるケースが多い
- 損失が生じた時でも確定申告で節税できる可能性あり
- 株式投資における確定申告の手続き方法
株式投資の確定申告は、「NISA」や「特定口座」といった制度により、基本的には不要と考えてOKです。
ただし損失を出した際には、繰越控除や損益通算といった節税制度を利用するために、申告を済ませることをおすすめします。
以上、参考にしていただけると幸いです。
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