株式投資は期待値の高さで銘柄を選ぶべき|期待値の活用方法を解説

期待値で株式投資せよ!!

株式投資で得られるリターンを予測する際は、期待値が役に立ちます。
期待値の高さを参考に投資先を決めていれば、投資を続けるほど利益が安定しやすくなります。

つまり、期待値には株式投資のギャンブル要素を取り除く効果があるのです。

期待値は数学の一分野に属しますが、計算方法は難しくありません。
この記事では、株式投資における期待値の使い方について、以下3つを詳しくご説明いたします。

  • 株式投資では期待値がプラスの場合のみ投資する
  • 株式投資の回数を増やして期待値に収束させる
  • 期待値を参考に株式投資するクセを付ける

どうぞ最後までご覧ください。

  

期待値は株式投資における判断基準になる

株式投資における利益のひとつに、株式の売買差益があります。
株価の低いとき株式を買い、高くなったら売る、という利ざやを狙う方法です。

ただ、株価が下がった状態で株式を売ることになると、損失(売買差損)が生じます。

損失は株式投資に付き物であり、100%避けようとする必要はありません。
その代わり、損失を上回る利益が出るような投資先を探す必要があります。

そこで、プロの投資家の一部は、株式投資に期待値を用いています。
期待値が、株式投資における判断基準になるからです。

起こりうる結果の平均が期待値から予測できる

期待値とは、得られる報酬にその発生確率をかけ、すべてを足し合わせた数値です。
(報酬がゼロやマイナスのケースも含みます)

報酬A × 発生確率a + 報酬B × 発生確率b +報酬C × 発生確率c
期待値
※発生確率a、b、cの合計は、必ず100%になります。

たとえば、サイコロについて考えてみましょう。
サイコロの目は6パターンですが、発生確率はすべて1/6と偏りがありません。

目ごとの発生確率が一定のため、期待値は平均値と等しくなります。

1 × 1/6 + 2 × 1/6 + 3 × 1/6 + 4 × 1/6 + 5 × 1/6 + 6 × 1/6
=( 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 )× 1/6
3.5(期待値かつ平均値)

期待値の“3.5”が示すのは、「サイコロを振ると平均で“3.5”の目が出る」ということ。
つまり、期待値から得られる結果が予測できるのです。

期待値が投資額を下回る場合は投資しない

サイコロでしたら、どの目も出る確率は同じです。
ただ、株式投資をはじめ、世の中で起こる事象の多くは発生確率に偏りが見られます。

たとえば、宝くじを考えてみましょう。

宝くじは、1等、2等、3等と、当選金額はもちろん当選確率にも差があります。
さらに、“外れくじ”が全体の80~90%を占めるケースも珍しくありません。

例として、1~3等の当選金額と当選確率を下表のように設定しました。
下表における期待値合計を算出してみましょう。

当選金額 当選確率 期待値
1等 10,000円 1% 100円
2等 5,000円 4% 200円
3等 1,000円 10% 100円
外れ 0円 85% 0円
期待値合計 400円

いくら1等が1万円、2等が5千円といっても、期待値はたったの400円にすぎません。
85%を占める外れくじが、全体の期待値を押し下げているからです。

もし、宝くじの販売価格が1枚500円だった場合、この宝くじは買うべきでしょうか?

期待値が400円ですから、理論上は500円を払うと100円の損失が生じます。
したがって、このケースでは「買わない」という判断が一般的に正しいといえます。

この考え方は、株式投資における投資判断であっても同じです。
期待値から投資額を差し引いてマイナスになる場合は「投資しない」と判断します。

株式投資に慣れないうちは、リターン(上表でいう当選金額)の大きさに注目したくなるかもしれません。
期待値を考えるクセを付けておけば、投資価値の有無を冷静に見極められるようになります。

株式投資の回数を増やして期待値に収束させる

実行回数が少ないうちは、期待値の通りになるとは限りません。
サイコロを2、3回振るだけなら、“1”や“6”が連続で出るケースも珍しくないでしょう。

しかし、実行回数を100回、1,000回と重ねていくと、しだいに期待値の“3.5”に近づいていきます。
この現象は「大数(たいすう)の法則」と呼ばれ、特に短期的に株式を売買するケースに活用できます。

短期投資では勝率より期待値を重視する

株式をすぐに手放すデイトレードやスキャルピング、数日中に売却するスイングトレード。
これらの短期投資に属する手法を使う場合、株式の取引回数が自然と多くなります。

取引回数が多くなると、得られる利益は期待値に収束していきます。
それだけに、短期投資においては期待値を投資判断の基準にすることができます。

ところが、実際のところ短期投資では期待値よりも勝率が一般的に重視されています。

勝率 = 利益が出た取引の回数 ÷ 全体の取引回数

株式投資において勝率を重視しすぎるのは危険です。
なぜなら、たった1回の損失で積み上げた利益が吹き飛ぶ可能性があるからです。
(「コツコツドカン」などとも呼ばれる現象)

たとえば、次の単純化したケースを考えてみましょう。

取引回数10回の内訳
9回 ⇒ 1万円の利益が発生
1回 ⇒ 10万円の損失が発生

10回中9回は利益が出ているので、勝率は90%。
しかし、1万円の利益が9回、10万円の損失が1回ですから、損益合計では1万円の赤字です。

ちなみに、上のケースを期待値に直すと以下のようになります。

1万円 × 90% - 10万円 × 10%
= 9,000円 - 10,000円
- 1,000円

期待値がマイナスですから、このケースでは「投資しない」と判断するのが正しいといえます。

反対に、「勝率は低いものの期待値はプラス」といった場合は、「投資する」と判断するのが適切です。

このように、株式投資においては期待値が重要な判断基準となります。

「期待値 × 取引回数」で将来の損益が予測できる
上のケースにおける期待値「-1,000円」に「10」をかけると、「-1万円」。
最初に計算した「取引回数10回」の損益合計「-1万円」と一致することが分かります。
つまり、将来の損益は「期待値 × 取引回数」で計算可能ということ。
それだけに、投資の成否は期待値のプラス・マイナスでほぼ決まってしまうのです。

取引回数が少ない場合はリスクも重視する

取引回数が少ないうちは、「大数の法則」があまり働きません。
そのため、期待値にこだわりすぎてリスクの大きい投資先を選ぶのは考えものです。

たとえば、以下のような2つの投資先があったとします。

◎a社における株価の期待値

好況 普通 不況
発生確率 60% 20% 20%
株価の動き +100円 変動なし -100円
期待値 100円×60% + 0円×20% - 100円×20% = 40円

◎b社における株価の期待値

好況 普通 不況
発生確率 40% 40% 20%
株価の動き +200円 0円 -200円
期待値 200円×40% + 0円×40% - 200円×20% = 40円

a社とb社、どちらも期待値は40円。
ですから、同じような投資案件で取引回数を重ねていけば、理論上は将来の損益が同額になるはずです。

ただ、a社よりもb社のほうが株価の変動幅が大きい点には、気を付けなければなりません。

株価の変動幅
a社:-100 ~ +100
b社:-200 ~ +200

特に取引回数が少ない場合、期待値が同程度であればリスクの小さい投資先を選ぶのが鉄則です。
株式投資においては、不要な損失リスクを避けて投資資金を守ることも重要だからです。

したがって、上のケースではリスクの小さいa社を投資先として選ぶのが、正しい判断といえます。

期待値を参考に株式投資するクセを付ける

現実の株式投資において期待値を弾き出そうとしても、なかなかうまくいきません。
期待値の計算に欠かせないリターンと発生確率に関する情報が、どこにも載っていないからです。

実は、株式投資においては、リターンと発生確率は自分で考えて設定する必要があります。
仮説を立てて期待値を計算し、投資結果を検証して次に活かすことを繰り返します。

ここでは、株式投資において期待値を利用する際の基本的なスタンスについてお話しします。

株式投資の期待値は正確に計算できない

サイコロや宝くじのように、得られる報酬と発生確率が決まっているものは期待値を簡単に計算できます。

しかし、株式投資はそうはいきません。
なぜなら、投資先の会社経営にしても株価にしても、「人の活動」という不確実な要素が入り込んでいるからです。

もちろん経済状況や業界環境の影響も、期待値の計算を複雑にします。
それだけに、期待値を実践で使おうとする場合、まず客観的に数値を付ける難しさを感じることでしょう。

それでも、「物言う株主」として知られる村上世彰(むらかみ・よしあき)氏をはじめ、期待値を重視する投資家は少なくありません。
村上氏の場合は、ファンダメンタルズ分析を徹底することで、期待値の精度を上げていると考えられます。

ファンダメンタルズ分析とは「経済の基礎的条件」ともいわれ、企業や業界、経済指標、為替レートなどを分析対象とします。

また、個人投資家のなかにも、期待値を使っていると公言する方が存在します。

村上氏のようなプロレベルの分析を行っている投資家は少数でしょう。
しかし、それほど期待値という考え方は重要であることがうかがえます。

つまり、「株式投資に期待値など意味がないのでは?」と不安になる必要はありません。

経験を積んで期待値の精度を高める

株式投資の期待値を計算する方法は、2通り考えられます。

①期待値に関わる要素をすべて洗い出し、各要素に重みづけしていく
②自分で勉強して理解できる要素から、期待値の計算に利用していく
※「重みづけ」とは、重要な要素ほど期待値に反映されやすくなる処置を指します。

①は前述の村上氏が行っている、もっとも理想的なやり方です。
しかし、株式投資の期待値に関わる要素の多さを考えると、個人投資家が簡単にマネできるものではありません。

したがって、一般的には「②自分で勉強して理解できる要素から、期待値の計算に利用していく」方法を実践することになります。

期待値に関わる要素は、次の3つのスケールに大きく分けられます。

国家レベル 経済指標(景気動向指数、為替レートなど)
業界レベル 業界内大手数社の株価動向、投資指標(PER、ROEなど)
企業レベル 財務・業績情報、株価動向、経営指標(売上高営業利益率の推移など)

最初は企業レベルを軸に分析を試みるのがおすすめです。
具体的には、売上高営業利益率の推移、負債と自己資本のバランスなどをチェックします。

なにか勉強の取っ掛かりが欲しい方は、簿記を学んでみるとよいでしょう。
簿記3級レベルの基礎知識を身に付けるだけでも、企業の経営状態を数値で表す財務諸表の意味が分かるようになるからです。

簿記 メリット 簿記を知ることで得られるメリットとは?くわしく解説

投資対象を絞っていくときには、経営指標が参考になります。
同じ業界に属する企業のPER(株価収益率)やROE(自己資本利益率)などを比較してみてください。

経営指標は、財務諸表が読めると理解するのは難しくありません。

株式投資における銘柄選びのコツをプロが解説!! 株式投資における銘柄選びのコツ|好みの銘柄を見つけたら指標で絞る

財務諸表と経営指標の数値が分かると、要素ごとの重要度を自分なりに仮説立てることができます。

ここまで来れば、期待値の計算も少しずつできるようになっているでしょう。
可能な範囲で構いませんので、分析結果を期待値に反映させるクセを付けてください。

最初のうちは仮説が外れて、なかなか利益に結びつかないかもしれません。
それでも、投資結果を用いて期待値の計算式を調整し続け、つねに期待値の高い投資先を選び続けることが大切です。

なお、投資初心者の方でも、国家レベルで経済を見る努力は欠かせません。
自分にとって都合の良い数字だけを切り取って考えないようにするためです。

初心者のうちは、必ずしも経済指標などを期待値に織り込まなくともよいでしょう。

景気の先行きや業界の発展性をざっくり把握するだけでも視野は広がります。
広い視野を持つことができれば、株式投資で極端な失敗を冒す心配も少なくなるでしょう。

まとめ

この記事では、株式投資における期待値の使い方について、以下3つを取り上げました。

  • 株式投資では期待値がプラスの場合のみ投資する
  • 株式投資の回数を増やして期待値に収束させる
  • 期待値を参考に株式投資するクセを付ける

期待値は投資先を決めるときの根拠となります。
期待値がプラスになる投資先を選び続けることで、最終的な収益もプラスになると考えられます。

ただし、株式投資において期待値を計算するのは簡単ではありません。
それだけに、まずは企業・業界について分析を行い、理解できる要素を使って期待値を設定していく方法がおすすめです。

個々における投資の失敗は、それほど気にする必要はありません。
仮説と検証を繰り返して期待値の精度を上げていき、トータルで収益がプラスになる状態を目指していきましょう。

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