株式投資に回す割合が少ない?海外との比較から日本の投資割合を考察

株式投資の実践状況と、投資に回す資産の割合をプロが解説!!

自分の資産のうち、どれくらいの割合を投資に回すべきか?
周りに投資の経験者がいなければ、投資に振り分けるべき資産の割合などは検討がつかないものです。

しかし、働いて得られる収入だけでは、なかなか生活はよくなりません。
将来を見据えて、早めに投資を始めておきたいところでしょう。

今回の記事では、投資のなかでも代表的な株式投資を中心に、投資に振り分けるべき資産の割合についてお話しします。

この記事をお読みいただければ、株式投資の必要性や、投資に回す資産の割合の考え方が分かります。
どうぞ最後までお読みください。

1.アメリカ人が株式に資産を回す割合は日本人の約3.8倍

投資を実践する日本人の割合は、アメリカなどの欧米諸国と比べると、圧倒的に低いのが現状です。
日本と欧米における、金融資産の保有割合を示したデータをご覧ください。

◎家計の金融資産の構成(2021年3月末時点、一部抜粋)

日本 アメリカ 欧州
現金・預金 54.3% 13.3% 34.3%
株式等 10.0% 37.8% 18.2%
参考 資金循環の日米欧比較日本銀行

データが示す通り、海外は、運用リターンが見込める株式投資などの割合が高めです。
外国人は、「いかに効率よくお金を増やすか?」を重視しているためでしょう。

一方で、日本人は資産の約半分を預貯金として持っています。
株式投資の保有割合を比べると、日本人対アメリカ人で約「1:3.8」と大きな差が開いています。
日本人対ヨーロッパの人々を比べても、約「1:1.8」ほどの差があります。

欧米人と日本人の間で保有割合に差が生じる原因は、2つほど考えられます。

1つめは、日本人が美徳を重んじるからです。
美徳とは、「お金は真面目に働いて手に入れるべきもの」「コツコツ貯めるべきもの」といった考え方です。
株式投資などから利益を得ることは、日本人の美徳に反する行為なのだと考えられます。

一方で外国人にとっては、お金はおそらく「生きていくためのツール」に過ぎないのでしょう。
日本人のような稼ぎ方に対するこだわりは、外国人には特に見受けられません。

このようなお金に対する考え方の差が、株式の保有割合などに表れていると考えられます。

2つめは、金融経済の教育について、日本が欧米と比べて遅れているからです。

たとえば、イギリスでは小学校から金融教育がカリキュラムとして盛り込まれています。
貨幣の役割や資産形成などを、子供のうちから学びます。

また、アメリカには国家を挙げて投資教育に取り組む法律があります。
2003年に制定された「金融リテラシー教育改善法」です。

全米共通の教育課程がない代わりに、若年層を対象とした金融教育を担う組織が存在します。
その結果、アメリカでは、各団体や地域ごとにハイレベルな金融教育が進んでいるのです。

対する日本は、欧米に比べると金融教育が普及していません。
2022年4月から、ようやく高校で金融教育が義務化されたばかりです。

そのため、学生時代に株式投資などについて学んだ方は、極めて少数でしょう。
日本人の多くは、金融リテラシーを身に付けないまま社会に出ています。

以上2つの理由から、株式投資などの割合において、海外よりも日本は少ない状態にあります。

参考 米国の学校における金融教育の動向損保総研 参考 イギリスにおける金融教育北海道教育大学学術リポジトリ

2.金融資産の増加は20年間でアメリカ約3倍、日本約1.5倍

海外に比べて、株式投資などに消極的な人の割合が多い日本。
それでも全世代の平均では、ようやく欧州の水準に近づいてきました。

◎株式投資に回す資産の割合(2021年時点、年齢・世帯別)

単身世帯 二人以上世帯
全世代 21.13% 18.97%
20代 23.84% 13.66%
30代 15.34% 17.95%
40代 19.71% 18.54%
50代 15.58% 16.49%
60代 25.71% 18.12%
70代 20.20% 22.32%
参考 家計の金融行動に関する世論調査知るぽると

しかし、表をよく見ると、水準を引き上げているのは主に60代以上ということが分かります。
60代以上の一部富裕層による積極的な株式投資が、全体の数字を引き上げていると考えられます。

したがって、「株式投資に回している資産の割合が少なめ」という世帯が、依然として多いのが実態であろうと推察できます。

ちなみに、日本人の株式投資に回す資産の割合が低いのは、投資全般に対するイメージが良くないことが原因でしょう。

自身が金融教育を受けた経験がなく、身近に投資の経験者も少ない。
そのような状況が、「投資はギャンブル」といった誤解を招いていると考えられます。

結果的に、元本がほぼ保障されている預貯金が、日本人の資産構成において高い割合を占めています。

とはいえ、現在の日本では、超低金利政策が採られています。
預貯金だけでは、お金はほぼ増えません。

それどころか、金融緩和と円安による物価の上昇、増税などが進めば、預貯金は目減りしていきます。

株式などの投資に回す割合が異なることで、日本人と欧米人が持つ資産の差は一段と開きました。
1995年~2015年の20年間における金融資産の変化について、アメリカが約3倍に増えた一方で、日本は約1.5倍しか増えていません。

したがって、日本人も資産形成のために、株式投資などに振り分ける資産の割合を見直す必要があります。

参考 平成28事務年度 金融レポートについて金融庁

3.投資スタイルによる投資に回す資産の割合の決め方

金融教育を受けていない日本人であっても、投資のハードルは決して高くありません。
株式投資であれば、最低限の知識があれば始められます。

そこで、まずは投資スタイルについて、簡単に理解しておきましょう。
なぜなら、投資スタイルごとに、資産を投資に回す割合の決め方が異なるからです。

投資スタイルには大きく分けると、短期投資・長期投資の2つがあります。
投資に回す資産の割合の決め方について、株式投資を例にそれぞれ紹介していきます。

短期投資:3ステップで割合を慎重に決める

短期投資とは、細かく変動する株価の差益を狙う投資スタイルです。
デイトレードと呼ばれる手法は、この短期投資に該当します。

短期投資では、すぐに値上がりしそうな株式を購入し、株価が高くなった時点で売却します。

売却時の株価 21万円 - 購入時の株価 20万円 = 利益 1万円
※取引手数料と税金は考慮していません。(以下、同じ)

短期投資で生じる利益は、当日や翌日に出金できる可能性があります。
そのため、資金効率に優れるのが特徴です。

ただし、もちろん株価は値下がりする可能性があります。
投資先の企業が倒産するリスクも、考慮しておかなければなりません。

売却時の株価 19万円 - 購入時の株価 20万円 = 損失 1万円

株価の変動のみで利益を狙う短期投資は、一般的に損失リスクが大きいため注意が必要です。

短期投資の場合は、損失が増えた場合の備えとして、資金管理が特に重要になります。
具体的には、以下の3ステップで、株式に資産を回す割合を慎重に決めなければなりません。

  1. 余裕資金の算出
  2. 目標金額の設定
  3. 損失リスクの確認

1.余裕資金の算出

まずは、今の資産のなかで、現実的に株式投資に回せる割合を考えます。

具体的には、資産から生活資金を差し引いた、余裕資金を算出します。
余裕資金が、株式投資に回してもよいお金です。

資産 - 生活資金 = 余裕資金

計算式にある資産とは、主に預貯金のことです。
すぐに換金できない物は、計算式の資産に含んではいけません。

生活資金としては、食費や家賃といった不可避な出費を、半年分ほど見積もっておきます。
結婚など、目安で3年以内に予定されているイベントがあれば、その費用も見積もりに入れておきましょう。

なお、計算した結果、余裕資金がゼロ以下になったときは、貯蓄を優先するべきです。

貯蓄しているときも、同時に株式投資を始める準備を進めておきましょう。
早いうちから株式投資に触れておけば、実践に入ったときに迷うことが少なくなるはずだからです。

株式の基礎知識を身に付けたり、デモトレードを行ったりするのがお勧めです。

2.目標金額の設定

次に、株式投資でどれくらいの利益を出したいのか、目標金額を設定しておきます。
余裕資金に加えて目標金額も定まれば、どれくらいのペース(目標利益率)を目指せばよいのかが明確になるからです。

目標金額 ÷ 余裕資金(投資額)= 目標利益率
※利益率とは、投資額から生じる利益の割合のこと。

目標金額を設定するのに欠かせないのが、資産を増やす目的の明確化です。
家族のため、将来の夢のためなど、資産を増やしたい理由を考えてみてください。

資産を増やす目的が決まったら、いつまでに、いくらお金が必要なのか、株式投資における目標金額を割り出しやすくなるはずです。

3.損失リスクの確認

最後に、損失リスクについて考えます。
投資に回す余裕資金は、損失の可能性をつねに考えておかなければなりません。

目標利益率が高くなるほど、投資に回す余裕資金の割合は多くなる傾向があります。

いくら余裕資金といっても、使いすぎれば資金管理が難しくなります。
余裕資金を使いすぎる可能性が高いときは、目標金額を再設定して、目標利益率を下げることも検討しましょう。

長期投資:余裕資金の範囲で株式投資すれば問題ない

長期投資とは、ローリスク・ローリターンで、長期的・安定的に資産を増やしていく投資スタイルです。

主な収益源は配当金で、株主優待が入る場合もあります。
定期的な収入が、労働収入に上乗せされるイメージです。

配当利回りが年間4%の企業に100万円を株式投資した場合、年間4万円くらいの配当金が見込めます。

投資額 100万円 × 配当利回り 年間4% = 年間利益 4万円

長期投資の場合は、短期投資ほどの厳密なリスク計算は必要ありません。
通常は経営が安定している企業の株式に投資するため、日々の値動きはあまり考えなくてよいからです。
一時的に株価が値下がりしても、いずれは元の水準に戻ると考えて差し支えありません。

ただし、短期投資で紹介した、「1.余裕資金の算出」だけは必ず行ってください。
投資である以上、損失リスクはゼロではないからです。

比較的安全な長期投資であっても、全資産のうち投資に回す割合が、余裕資金の割合を超えてはなりません。

全資産のうち株式投資に回す割合については、以下の基準を目安に決めるとよいでしょう。

投資時期 株式投資に回す割合 割合の水準
初期 15%程度 一般的な日本人
中期~ 20~35%程度 欧米人レベル
参考 資金循環の日米欧比較日本銀行

長期投資は比較的リスクが低く、短期投資よりも気軽に始めやすいといえます。
まずは少額でも株式投資を実践し、経験を積み重ねて理解を深めていくとよいでしょう。

4.まとめ

今回は、株式投資などの保有割合について、海外と日本の比較を中心に解説してきました。

アメリカ人が株式投資に回す資産の割合は、日本人の約3.8倍ほどです。
その結果、保有する金融資産について、日本人は欧米人に大きく水をあけられています。

ですから、日本人は株式投資などに本腰を入れる必要に迫られているといえます。

そこで知っておきたいのが、株式投資に回す資産の割合の決め方です。

この割合の決め方は、短期投資と長期投資という2つの投資スタイルで異なります。

短期投資の場合は、以下の3ステップで割合を考えます。

  1. 余裕資金の算出
  2. 目標金額の設定
  3. 損失リスクの確認

一方で長期投資の場合は、「1.余裕資金の算出」だけで問題ありません。
余裕資金の範囲内というルールを守りつつ、全資産のうち株式投資に回す割合を、最初は15%、慣れてきたら20~35%程度にするとよいでしょう。

資産形成においては、日本人に根付いた過去の常識にとらわれる必要はありません。
時代の変化に合わせて、最も効率のよい資産形成を実践するべきです。

そのためにも、貯蓄の何割かを株式投資に振り分けてはいかがでしょうか。

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