海外に目を向けると、日本より金利の高い国や地域があることがわかります。
各国の政策金利の10年間平均値(2006年4月~2016年3月)を見比べてみましょう。
(出所:Bloomberg L.Pのデータに基づき三井住友銀行作成)
- 日本 0.18%
- 米国 1.26%
- ユーロ 1.50%
- ニュージーランド 4.09%
- オーストラリア 4.13%
- 中国 5.95%
- 南アフリカ 7.08%
- ブラジル 11.21%
上記を見て頂くとわかるように、日本で円預金のお金を貯金していてもほとんど利息は付いていません。
そんな低金利の続く日本をさておいて、海外に目を向けると日本とは比べ物にならないくらい利息が付いている国があります。
この外貨での預金に始まる資産運用は、低金利の日本において非常に注目されています。
しかし、日本円を預金するのとはいろいろと異なる点がありますので、注意して行わなくてはいけません。
そこでこの記事では、これから外貨による資産運用を行う際に注意しておくポイントやメリット・デメリットについて説明していきたいと思います。
目次
外貨建ての金融商品について
外貨建ての金融商品にはいくつか種類があります。
外貨預金、外国株式、外国債券、外国投資信託、外貨建て保険、FXなどになります。
他の金融商品同様、種類が非常に充実しており、また外貨を使った投資には米ドル以外にもユーロや、豪ドル、ブラジルレアル、南アフリカランドなど、幅広くあります。
外貨投資を活用すれば、通貨の分散によるリスク分散ができる事にもなります。
外貨での資産運用、投資の中でも一番理解しやすいものは外貨預金です。
外貨預金を行う際の注意点を理解できれば、他の外貨金融商品への投資を検討する上での初歩的な注意点がわかるので、外貨預金について詳しく見ていきましょう。
外貨預金による資産運用について
外貨預金には、為替差益などの魅力的なメリットがある反面、元本割れなどのリスクも存在するためリスクをいかに減らしながら運用していくかが重要ポイントとなる資産運用と言えます。
外貨預金で利回り良く資産を運用し増やすことができていても、外貨預金特有の制度やシステムを理解していないとせっかくの利益が目減りしてしまう可能性があります。
はじめに外貨投資のメリットを3つ挙げておきます。
外貨投資のメリット3つ
- 為替差益で利益が出る。
- 金利が高い。
- 投資の選択肢が広がる。
為替差益で利益が出る
皆さんご存知のように、外貨預金の最大のメリットは「為替差益」が得られることです。
日本の銀行の金利の低さは諸外国に比べると著しく低いとしか言えません。
資産を増やすことを目的とした場合、このような低い利息では円預金を続けるメリットは無いに等しいと言えます。
為替差益を狙うには円高の時に外貨預金を行い、円安になったタイミングで円に戻すという手順が基本です。
例えば10万円を米ドルで運用した場合を考えてみましょう。
米ドルの為替が1ドル110円のとき、10万円÷110円で909ドルと両替できます。
1ヶ月後に米ドルが120円になった時点で、米ドルから日本円に両替すると、909ドル×120円で109,080円になり、差額はプラス9,080円、月利でいうと約9%の利回という事になります。
このように、通貨を交換して得られる利益を為替の差益といいます。
円安のタイミングで預けないように注意が必要です。
円高の底値を見極めて、預金するタイミングを判断するのが重要になってきます。
金利が高い
日本円での預金を行なっている場合、ほとんどの金融機関では年間の金利が0.01%以下です。
時間外にATMを数回利用すると、数回で利息分が無くなってしまいます。
外貨預金なら国内の金利よりも、高い金利の預金先もいくつかあります。
上記の各国の政策金利の表を見て頂くとわかるように、外貨預金では南アフリカランドやブラジルレアルといった通貨がかなりの高金利で取引されています。
また金利が高いと、受け取った利子を運用してさらに利子を生んでいく複利運用を行う場合も効率的に資産を増やすことが可能となります。
国家情勢の安定という視点から見ると、オーストラリアドルも利息が割と高いうえに、国家の情勢も安定しているので選択肢として考えても良いと思います。
しかし「金利が高い」という視点だけで通貨を選んでしまうと、元本割れするリスクも増えてしまうので注意が必要です。
この点は、後ほどのデメリットの一つとしても説明します。
投資の選択肢が広がる
外貨預金で成功するために必ず必要な作業が情報収集です。
世界経済の変化や各国の情勢は、為替の値動きに日々大きな影響をもたらしています。
このような情報収集を毎日行っていると、自ずと投資の選択肢も広がってきます。
外貨預金は国内だけなく、世界が投資の対象となります。
日本よりも高い金利の投資先を見つけよう、成長性の高い会社を見つけようとする行為は、これから海外投資を幅広く行っていく際に、きっと役に立つ力を培う為の基礎となるでしょう。
現在、自分がどこの国の通貨でいくら預金を行なっているのかを念頭に置きながら、新聞やインターネット、テレビなどで経済事情を中心に情報収集を行っていると近い将来、自分の投資の選択肢を広げる事につながっていきます。
つぎは外貨預金のデメリットを見ていきましょう。
外貨預金のデメリット5つ
- 元本割れの可能性がある。
- 手数料がかさむと、利益を相殺してしまう場合がある。
- カントリーリスクがある。
- 雑所得の申告の手間がかかる。
- 外貨預金はペイオフの対象外になる。
元本割れの可能性がある
外貨預金は為替の変動により、元本割れする可能性があります。
預けた外貨を円に戻した際、元々預けた金額(元本)よりも少ない金額になってしまうことを「元本割れ」と言います。
為替レートをきちんと確認せずに、預入した時よりも円高のときに引き出しをしてしまうと、円ベースでの元本割れが発生してしまいます。
為替変動による元本割れは、外貨預金において最も大きなリスクになります。
為替は常に変動しており、取り扱い時間によって適用されるレートも異なるということを念頭に置き、出し入れの際は必ず為替レートを確認するようにしましょう。
基本的な考え方としては、今後円安になるだろうというタイミングで外貨預金を行います。
為替変動のリスクを分散させたい場合は、一度にお金を預けるのではなく、定期的な積み立て預金にする、通貨選びの際にその国の金融事情を深く調べてみる、などの対応をするとよいと思います。
もっとリスクを減らす対策として、通貨を選ぶ際にも値段の振れ幅が大きいものと比較的安定しているものや、複数の外貨の種類を選んで同時に預金を行う分散投資をするなども効果的だと思われます。
手数料がかさむと利益を相殺してしまう場合がある
「外貨預金は高金利だから利益を上げられるのか」というと、そこまで簡単な仕組みではありません。
外貨普通預金では、円を外貨にして入金するときと、外貨を円に戻して出金するときの両方で為替手数料が発生します。
日本国内における円預金の感覚で気軽に出し入れをすると、その都度預金から為替手数料が差し引かれ、手数料だけで全体の数パーセントになってしまいます。
場合によれば、元本が目減りしてしまう事もあるので大いに注意が必要です。
為替手数料は金融機関によって異なりますので、お金の出し入れが多くなってしまうことが想定される人は、為替手数料が安い銀行で外貨預金を行う方がよいでしょう。
また、外貨預金を行なっている間は、銀行に対して年間数パーセントの手数料が金利から引かれているという点も記憶に留めておいてください。
手数料は取り扱う通貨や銀行によって数値は変わりますので、この点も事前にしっかりと確認してください。
手数料はネット銀行の方が安く設定されている場合が多いので、パソコン作業が苦でない人はネット銀行を利用した方がお得に外貨預金ができる事になります。
為替手数料は意外と見落としてしまいがちな部分なので、外貨預金においては、常にトータルコストで考えるよう気をつけて下さい。
カントリーリスクがある
戦争やテロなど、政治や経済状態の大きな変化によって為替市場が混乱に陥り、預金した資産が回収できなくなるような危険性のことを「カントリーリスク」と言います。
金利が高いという理由だけでその外貨を投資先として選んではいけない理由が、このカントリーリスクがある為だからです。
どのような投資においてもリスクは付きものですが、外貨を選ぶ際には金利の高さだけにとらわれるのではなく、その国の情勢についても事前に確認することをお勧めします。
雑所得の申告の手間がかかる
外貨預金の為替差損益は、日本の税法上では雑所得として取り扱われます。
また、確定申告時に税務署へ申告をする必要があります。
この申告は円預金には存在しない概念なので、忘れないよう確定申告の時期が近づいてきたら、ひと手間かかりますが外貨預金によってどれくらいの為替差益を得たのかを確認してください。
外貨預金はペイオフの対象外
外貨預金は、ペイオフの対象外とされています。
金利のよさだけに目を取られて、一つの金融機関に多額の外貨預金をするのは避け、万が一の事態を想定して複数の金融機関に分けておくようにして下さい。
(※ペイオフ:破綻した金融機関に代わって、預金保険機構が預金者に1000万円までとその利息を払い戻す制度)
外貨預金についての説明が一通り終わりましたので、参考までに各国の外貨の特徴を書いておきます。
米ドル(USD)
- アメリカの通貨
- 全世界の基軸通貨として知られ、外貨預金初心者向き
- 日本においても 情報収集がしやすい
ユーロ(EUR)
- イギリス以外のEU主要国にて統一された通貨
- 米ドルの次に取引量の多い通貨
- 高い信頼性を誇るが普通預金の利率は低い
ニュージーランドドル(NZD)
- ニュージーランドの通貨
- 豪ドルと同様に先進国の中では珍しく高金利の通貨
- 豪ドルとよく似た値動きをする
豪ドル(AUD)
- オーストラリアの通貨
- 先進国の通貨の中では珍しく高金利
- 国の情勢は安定しているが為替相場の値動きが大きい
ポンド(GBP)
- イギリスの通貨
- 円の次に取引量が多い通貨
- 非常に値動きが大きく荒いが金利は低い
スイスフラン(CHF)
- スイスの通貨
- 金利は相対的にやや低め
- 大きな為替差益は狙えないが安定志向の人には良い
カナダドル(CAD)
- カナダの通貨
- 国内の経済、政治情勢は極めて安定
- アメリカの影響を受けやすい
南アフリカランド(ZAR)
- 南アフリカ共和国の通貨
- 新興国通貨のため非常にリスクが高い
- 金利は非常に高いし、為替相場の値動きも大きい
香港ドル(HKD)
- 香港の通貨
- 値動きは米ドルと連動、米ドルより金利は低い
- 中国・アメリカの影響を受けやすい
通貨ごとにそれぞれ個性があります。
結論を言えば、為替手数料や情報収集の容易さ、リスクの度合いからみて外貨は米ドルや豪ドル、スイスフランがやり易いでしょう。
まとめ
いかがでしたか。
海外に目を向けると日本とは比べ物にならないくらい利息が付いている国があります。
この外貨での預金に始まる資産運用は、ポイントさえ押さえれば誰でも簡単に資産を増やせる資産運用になります。
気になった方は、この機会に挑戦してみてもいいかもしれませんね。
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