株式や経済のニュースで、最近見聞きする「金融相場から業績相場へ」というフレーズ。米国の金融政策の変更を視野に入れて、今後の相場見通しの文脈の中で使われることが増えました。では「金融相場」と「業績相場」は、どういう状況なのか、簡単にご説明しましょう。
目次
株式市場にはサイクルがある
株価が決まる要因は、企業業績、景気、為替、金利、政治、自然災害、需給などいろいろありますが、突き詰めれば企業業績と需給に集約されます。
企業業績は、その企業自身の努力によって決まるだけではなく、景気や為替、金利、政治や自然災害などの外部環境にも左右されます。また、これらの環境は、投資家の意思決定にも影響し、需給動向に反映します。
また、株価は1つの要因によって動いているわけではなく、さまざまな要因の組み合わせの影響を受けています。その上、時々において相場に影響の強い要因は変わります。さらには、それぞれの要因が、好景気・不景気、円高・円安といったように常に変化し、行き過ぎれば元に戻る動きをしてサイクルを形成しています。
最近「金融相場から業績相場へ」と言われることが多いのは、米国の金融政策が、低金利に誘導する「金融緩和」をやめる方向に動き出しているためです。低金利の環境から、金利上昇の影響を受ける相場に、サイクルが移りつつあるのです。
「金融相場」とは
では、金融相場とは、どのような相場なのでしょうか。ひとことで言えば、低金利政策を前提とする相場です。金融緩和によるカネ余りが背景にあります。投資家の資金が株式市場に流れ込み、投資の需要が高まることで株価を押し上げます。
景気が良いから株価が上がるというよりも、投資家の需要によって株価が押し上げられるという状況です。
また、低金利であれば、企業が資金を借りる際の利息が低く、設備投資などに資金が回りやすくなります。設備投資は将来的に企業に利益をもたらすものと期待され、株価を引き上げます。足元の業績にはまだ反映しないので、業績面では株価よりも遅れている状態です。
「業績相場」とは
次に、業績相場について解説しましょう。業績相場は、金利上昇を前提とする相場です。カギになるのは、企業の成長力や利益の拡大です。景気が良く企業の業績が好調で、企業の増益期待が株価を押し上げます。金利が高いと企業の利払い増になりますが、好景気によって企業の負担感も薄れています。
また、低金利の時期に行った設備投資が収益を生むようになり、好業績に貢献し始める時期でもあります。
投資家心理としては、業績が向上していることから株価上昇への期待が高まり、株価上昇への弾みがつきます。
戻りのサイクル「逆金融相場」「逆業績相場」
金融相場によって株価が押し上げられ、業績相場で株高になった後、そのまま株価上昇が続けば良いのですが、環境は移り変わります。
景気が拡大すると、物価は上昇します。また、高金利の業績相場の下で、高い金利の債券などが発行されます。投資家の資金は、株式投資よりリスクが低く、高めのリターンが得られる金融商品が出てくるがあるのならそちらに移ります。これは自然の流れです。
けれど次第に、物価上昇に耐えられなくなった消費者が悲鳴をあげるようになります。企業も、仕入れのコスト高や、借入金の金利負担に苦しみ始めます。また、高金利の商品に資金が移った後の株式市場では需給が悪化。株価は調整局面に入ります。
ここまでの流れが、高金利から業績悪化を招く「逆金融相場」からの「逆業績相場」です。
これはマズいと、中央銀行は物価の上昇を抑えるため、金融政策を切り替えます。金利の引き上げを止め、低金利に誘導します。これでサイクルが一周。「金融相場」に戻ってきました。
注目集まる米国の金融政策
今後の相場動向のポイントは、米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)です。物価上昇を背景に、すでに市場はテーパリング(資産買い入れ政策の縮小)を織り込んでいると見られています。
2021年の今後のFOMCは11月2~3日、12月14~15日に予定されています。FRB(米連邦準備制度理事会)がどのようなスケジュールでゼロ金利を解除するのか、そしていつ頃利上げに踏み切るのか、などに注目が集まっています。