トルコ・エルドアン大統領に学ぶインフレ対策としての利上げ

トルコ

FX(外国為替証拠金取引)をされている方なら有名かもしれませんが、トルコリラが通貨暴落に見舞われています。度重なる利下げと大統領発言などによりすすんできたトルコリラ安が、一気に加速しました。

筆者も損切りをしましたが、ロスカットが大量に発生したような動きを感じましたので、再度安値近辺から少しずつ買い上がっています。なお現状ではとても買える通貨ではありませんので、ポジションについては参考にしないようご注意ください。

あまり馴染みがないかもしれませんが、今回はこの歴史的なイベントから、金融政策としての「利上げ」について考えていきたいと思います。

トルコリラ暴落!

11月23日(火)は「勤労感謝の日」ということで祝日でしたが、FX業界をざわつかせたのがトルコリラです。

低金利志向のエルドアン大統領の影響による度重なる利下げ、本人の発言などを背景に、ジワジワとトルコリラ安が進んでいた中で、前日比15%安、年初から40%安というショックに見舞われました。

米ドル/トルコリラも、トルコリラ/円も、大きくリラ安が進み、そして翌日には若干沈静化しました。

「神(アラー)と国民の助けで経済的な独立戦争に勝利する」
「競争力のある為替レートが投資や雇用につながる」
「金利が下がればインフレ率が下がる」

国内で物価上昇(インフレ)に歯止めがかからないなかで、通貨安を維持すれば輸出産業が恩恵を受け、やがて経済は落ち着きを取り戻す、というような発想のようですがはたしてうまくいくでしょうか。

米ドルの外貨準備が枯渇してきて、打つ手がなかなか見つからないことによる開き直りであればまだ救いですが、エルドアン大統領は本気で、インフレ対策としての「利下げ」を推進していく覚悟を感じます。

利上げはインフレ対策

バブル期の日本がそうであったように、一般的に利上げは好景気や物価上昇が続いた際に、その勢いを鎮静化させるための金融政策として位置づけられています。

景気や経済の流れが一方向にいきすぎてしまうと、その反動で大きな混乱を生む可能性が高まってしまうため、よりなだらかにすることを狙い、利上げなどを行います。

ただし一部の富裕層はともかく、インフレ進行による利上げは、多くの一般国民や貧しい方々を直撃するのも事実です。経済的に弱い立場の国民をどう救済していくかという問題がついてまわります。

今回のエルドアン大統領の真意はわかりませんが、経済の一般常識からすれば、無謀な打ち手ともいえますし、場合によっては壮大な実験ともとれるのかもしれません。

Inflation mechanism

トルコを笑う余裕は日本にはない!

ところが、トルコの話は他人事ではないのが、いまの日本経済の哀しいところです。トルコリラほどではありませんが、すでに認識されているように、実は日本円も対ドルで大きく円安が進んでいます。

日本は相対的に財政出動が少なくなってしまいましたし、一部増税の話もでてくるほど無神経な発言もありますし、なかなか満足に経済成長のための政策について、アクセルを踏み込むことができないでいます。

アメリカがちょっと「やりすぎてインフレになった」とするならば、日本はあまりやらなかったために「インフレにすらならなかった」という哀しい状況です。

うまくいくかどうかは別にして、良くも悪くも、アメリカやトルコのように、もっと明確な政策を打ち出してほしいものですが、今後の日本に期待しすぎるのはまだまだ早いのかもしれません。

自民党総裁選や衆議院選挙にてメインテーマとなった「国の財源」問題。トルコの現状をきっかけに再度、日本でも議論が深まることを期待しています。