米ドルや日本円などの通貨は信用できない。
いざという時、紙切れだからという説を聞いたことがあるあなた。
では、代案を出せと言われたらどうすれば良いのでしょうか。
そんな時に、スッと提案できるのが「金本位制」。
実は、この金本位制、メリットの大きい通貨制度何です。
今でも、学者や議員の中には、現在の通貨制度を止めて、金本位制を復活させるべきと言う方もいます。
(ロン・ポール氏やジュディー・シェルトン氏など)
中央銀行が管理する現在のシステムでは、「通貨の価値下落=通貨安」を解決できないというのが金本位制を薦める人達の主張。
それではこの金本位制は、どのような制度なのか見てみましょう。
今回は、メリット中心に見ていきます。
目次
金本位制の仕組みについて
金本位制は、金(ゴールド)を通貨の価値基準にする仕組み。
金本位制を採用すれば、中央銀行は、自由に紙幣を発行できません。
なぜなら、紙幣は、金と交換できる証書=兌換券。中央銀行が発行した紙幣や硬貨は、いつでも、金と交換できることを保証するシステム。
そのため、持っている金の分だけしか、紙幣を発行できず、通貨の流通量に「金を保有している量」という歯止めがかかります。
この制度、現代に比べて、政府や中央銀行が安定していない世界では、とても重宝されました。
欧州の歴史書を紐解いても戦争・飢饉・クーデターなどで、政府が倒れることは珍しくありません。
そんな世界で生きていれば、自分の財産を守る・商売をするためには、紙切れや硬貨を受け取る時、おっかなびっくり。
金の保証がない証書=紙幣など危なくて誰も受け取れないことが背景。お金を流通させるのに必要な信用が、国だけで賄えるようになったのは、現代社会になってから。
残念ながら、昔は、政府や中央銀行だけでは信用不足。
足りない分を金で補うという点も金本位制のメリット。
では、金貨や銀貨そのものを決済に利用するとどうでしょうか。
その場合、重さや利便性の点で不便。金貨は、希少なゴールドを使うことから、高額決済としての用途が中心。豊臣秀吉や徳川家康の活躍した戦国時代も天正大判や慶長大判など大型の金貨がありましたが、日常に使うものではありません。通常は、中国からの渡来銭などを利用していました。
そんなわけで、1816年の英国で、金本位制はスタート。
日本も1897年に金本位制を採用。20世紀前半の貨幣制度は、この金本位制が基本となる仕組みでした。
金本位制の3つのメリット
ざっと金本位制の仕組みをご紹介しましたね。
それでは、そのメリットをまとめてみましょう。
1:政府や中央銀行の信用を補完することができる
信用のない政府や中央銀行が発行する紙幣を受け取ることはできませんね。
紙幣を発行・流通させるには、一定の信用が必要です。アルゼンチン・ジンバブエなどのように、ハイパーインフレが起きれば、紙幣は、タダ同然。原油を生産することで有名な南アメリカのベネズエラでも、近年、ハイパーインフレが何度も生じています。
そこで、国の信用が足りない場合、金本位制にすることで、その信用を補完できます。
これなら、発行する政府や中央銀行の信用が弱くても大丈夫。いざとなれば、金と交換することができますからね。
2:通貨の価値を高く維持できる
金は、古今東西、高い価値を維持しています。
多少の高値安値はあっても、金の価値に異論を唱える人は少ないはず。
つまり、自国通貨と金の交換を保証すれば、自国通貨の価値が高く維持できることになります。
通貨の発行量上限は、金の保有量を上限とする。
こうしておけば、紙幣を乱発して、通貨安=インフレを招くこともありません。
高価な金と交換できる。
通貨発行量に上限ができる。
この2つのメリットがあれば、通貨の価値を高く保つのは、カンタンなはずです。
3:通貨の価値を安定させることができる
金の価値は、ビットコインや原油などに比べると安定しています。
何しろ、金は、希少な金属であり、工場や錬金術で作ることができない物質。
急に、巨大な金鉱山が見つかることもありません。
銀は、そんな例があったため、大暴落したことがあります。
銀は、16世紀、メキシコでの銀山発見、日本の銀山からの輸出などで、価値が大幅に下がったのです。
通貨は、価値を上げることも大事で。
そして、それ以上に、通貨価値を安定させることが大事。
日銀が為替相場に介入する時、お約束のように発する文言は、「為替相場の安定を目的とする」です。
緩やかな為替相場の動きは、仕方ありません。
しかし、急激な円高(円安)は、困ります。
ビジネスで価格を決めようにも、為替相場の急変には対応しにくい、そのため、為替相場を安定させるというのは、大事なテーマ。
その点、価格が安定している金を大元に置く「金本位制」を採用することで、為替相場の安定を図ることもできるのです。
まとめ:金本位制は役目を終えた?
さて、これまで見てきたように、金を主眼にする金本位制。
メリットも多く、とてもいい制度のように思いますね。
しかし、現代社会は、金本位制を採用していません。
今、起きているインフレも金本位制であれば、止められたのでしょうか?
そこで、次回は、金本位制が終わった理由。
今後も採用されないであろう理由をご紹介いたします。