2001年10月に確定拠出年金がスタートしてから20年。高齢化の進行など環境の変化に伴い、確定拠出年金制度の見直しが重ねられています。2022年に改正される項目について、3回シリーズで解説していきましょう。
(上)加入できる年齢が拡大される
(中)受給開始時期が75歳に延長される
(下)企業型の加入者がiDeCoに加入しやすくなる
最終回は、『(下)企業型の加入者がiDeCoに加入しやすくなる』です。
2022年の確定拠出年金の改正点(上)加入できる年齢が拡大される 2022年の確定拠出年金の改正点(中)受給開始時期が75歳に延長される目次
企業型DCの加入者がiDeCoに加入しやすくなる
現在の制度では、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人が、個人型確定拠出年金(iDeCo)に入るためには、会社の労使合意による規約に定められている必要があり、かつ、会社が払うDCの掛金上限を月額35,000円に引き下げていなければなりません。
規約の変更が必要であるためか、この制度の利用率が低く、あまり活用されていませんでした。
2022年10月からは、ハードルが下がります。
まず、規約の定めが不要になります。もう1つは、会社の掛金上限額を引き下げなくてもiDeCoに加入できるようになります。
ただし、掛金は全体の上限を超えない額までです。次の表の通り、企業型DCのみの加入者と、確定給付年金制度にも加入している人とでは、上限額が異なります。
なお、企業型DCでマッチング拠出をしている人は、iDeCoには入れません。
企業型DC加入者がiDeCoに入るメリット
「会社が掛金を払ってくれているのに、わざわざiDeCoにも加入する必要があるのか」と思うかもしれませんが、日々の生活費や数年先の支出予定のお金を準備できているのであれば、老後のためにiDeCoにも加入すると良いでしょう。
特に企業型DCの会社掛金が少ない人は、税優遇の枠が余っている分をiDeCoで有効に使えます。また、iDeCoはいろいろな金融機関が取り扱っています。企業型DCで決められている運用商品以外の商品を自由に選べるのも魅力の一つではないでしょうか。
企業型DCのマッチング拠出と企業型DC加入者のiDeCo併用の違い
マッチング拠出とは、企業型DCの制度で、会社が払うDC掛金に加入者自身のお金を上乗せし、掛金を払う制度です。マッチング拠出が導入されている会社だからといって、利用が強制されるものではありません。
加入者が払った掛金は、全額が所得控除の対象。所得税と住民税が軽減されます。この点は、iDeCoと同じです。
掛金は、他の企業年金の有無により、限度額が決められています。また、マッチングの掛金は会社が拠出する掛金までで、会社の掛金と加入者掛金が拠出限度額を超えないこととなっています。
マッチング拠出は企業型DCの中での上乗せなので、運用商品は企業型DCの商品の中から選択します。
一方、企業型DC加入者がiDeCoを併用する場合は、企業型DCとは別の運用になります。自分でiDeCoの運営管理機関(取扱金融機関)を選び、契約などの手続きをし、掛金の支払い(口座引き落としなど)をします。一見面倒ですが、自分で自由に金融機関を選ぶことができます。
手数料に関しては、マッチング拠出に軍配が上がります。企業型DCの上乗せなので、口座管理料等のコスト(加入時手数料、事務手数料、資産管理手数料、運営管理機関手数料)は、一般的に会社が負担します。
iDeCoの場合、各種手数料は、加入者の掛金や運用資産から差し引かれます。
繰り返しになりますが、企業型DCのマッチング拠出をしている人は、iDeCoに加入できません。マッチング拠出とiDeCo併用のどちらも利用可能な方は、どちらが多く掛金を払えるか、確認すると良いでしょう。
その他の改正
ここまで「2022年の確定拠出年金の改正点」の(上)(中)(下)でご紹介してきた以外にも、今年はいくつかの改正を控えています。
5月には、脱退一時金の受取要件が緩和されます。帰国した外国籍の外国居住者は、拠出期間等の要件を満たせば、脱退一時金を受け取れるようになります。
また、企業型DCの脱退一時金を受け取るいくつかの要件のうち、「資産が1.5万円以下」という要件を満たさなくても受け取ることができるよう、別の新たな緩い要件が追加されました。
その他、同じく5月にポータビリティが拡充されます。これまでできなかった、終了した確定給付年金(DB)からiDeCoへの移換が可能になります。また、退職者の企業型DCが、企業年金連合会の通算企業年金に移換できるようになります。
まとめ
2022年10月から、企業型DCの加入者がiDeCoに加入しやすくなります。税制優遇の枠の余った分が有効活用できるため、老後の生活資金不足を心配する人は、iDeCoの加入を検討してはいかがでしょうか。
その他、脱退一時金とポータビリティに関する改正が5月に予定されています。
ここまで3回にわたり、2022年の確定拠出年金の制度改正について、主なものをご紹介してきました。高齢化が進むにつれ制度改正が重ねられていますので、最新情報をご確認頂き、老後の生活資金準備に役立てましょう。
「2022年の確定拠出年金の改正点」シリーズ
(上)加入できる年齢が拡大される
(中)受給開始時期が75歳に延長される
(下)企業型の加入者がiDeCoに加入しやすくなる(この記事)
【参考サイト】
厚生労働省 確定拠出年金制度「2020年の制度改正」