つみたてNISAだけでなく特定口座を併用した資産形成をしよう!

つみたてNISA 特定口座

いよいよ年末まで2ヶ月となりました。この時期は年明けに何をするか、来年は何をするかという、ちょっと先のことを考えながら行動し始めるには良い時期です。

筆者がよく言われたことのひとつに、「常に2ヶ月先を意識した行動をすること」というのがあります。近すぎず遠すぎず、このような短期計画においても、少し先の未来から逆算するクセをつける、そんな教えでした。

ということで11月にもなると、資産形成で定番のテーマがあります。年末に向けてのリバランス、NISAなどのロールオーバー、来年の非課税制度をつみたてNISAに変更するなどです。

そこで今回は、前回記事の続きになりますが、NISAやつみたてNISAを活用しつつ、長期投資を継続するためのちょっとしたコツにつながるお話をご紹介します。本物の長期投資を前提としておりますのでご了承ください。

ジワジワ普及していく非課税関連の少額投資

いわゆる少額投資というくくりに分けられるものとしては、NISA・つみたてNISA・個人型確定拠出年金(iDeCo)・企業型確定拠出年金(企業型DC)があり、これらの加入者数・利用者数は、地味ではりますが着実に増えてきています。

2018年から2021年現在までの伸び率

証券会社における口座数の推移

2018年末 ⇒ 2021年6月末 ※引用元:日本証券業協会資料より

NISA:685万口座 ⇒ 761万口座(+11%)

 

つみたてNISA:53万口座 ⇒ 262万口座(+494%)

確定拠出年金(DC)の加入者数

2018年末 ⇒ 2021年3月末 ※引用元:企業年金連合会資料より

企業型DC:687万人 ⇒ 746万人(+8%)

 

iDeCo:121万人 ⇒ 193万人(+59%)

これだけ利用者が増えてくるということは、最終的に現金化する時に「私の場合はどうすれば良いの?」という悩みも増えてくるということです。

確定拠出年金(DC)のように、一括でまとめて受取るか、年金のように分割して受取るかという悩みとは異なり、NISAやつみたてNISAなどの少額投資非課税制度には、非課税で投資可能な期間の満期がきたらどうするか?という悩みがついてまわります。

意外に軽視されるつみたてNISAの出口戦略

現状では、つみたてNISAについてはスタートしたばかりということもありますが、NISAについてはすでに満期を経験されているかたもいらっしゃるかもしれません。

筆者が問題提起したいのは、特につみたてNISAにおいて、この出口戦略についてほとんど語られていないというか、単純に考えることの先送りになってしまっていないかということです。

たしかに、つみたてNISAであれば非課税投資期間が20年もありますから、いまから考えても仕方ないというのもわかりますが意外に軽視されているのが、つみたてNISAが満期を迎えた時、満期を迎えるまでにどうするか?というテーマです。

最短では15年後くらいには最初の満期がきますが、その時がきてから考えては遅いのです。

NISAについてつみたてNISAについて ※金融庁「NISA特設ウェブサイト」

上げ相場しか知らないつみたてNISA世代

つみたてNISAは2018年からスタートしています。当時は米中対立や英国のEU離脱問題などで、外国人投資家の売り圧力にさらされた年となりましたが、積立投資家にとっては、コツコツと投信などの口数を増やし、資産を蓄えやすかった年でもありました。

その後、2020年にコロナショックがあったとはいえ、大幅下落局面は1ヶ月半で終わり、その後はショック時の下落幅の倍返しというボーナスがついてくるほどでした。つみたてNISAがスタートして以来、言い方は悪いですが「ただ積立てさえしていれば誰でも儲かる相場」だったわけです。

では今後、株式市場が大きく暴落することはないのでしょうか?そんなことはないと思います。

筆者は2001年以降の株式市場しか体験しておりませんが、コンピュータによる自動売買が急拡大したことの影響なのか定かではありませんが、現在は以前に比べて株価が上下に動く回数も幅も、より大きくなってきているように感じます。

1930年前後の世界恐慌では株価は90%も下落しました。もちろん各国の政府対応も市場環境も投資家の数も、多方面で今と昔では違いすぎるため単純に参考とすることはできません。

現代において、昭和初期の世界情勢がまたやってくるとは筆者も思っておりませんが、それでも示唆に富む歴史かと思います。相場はあなたの人生や現金化するタイミングにあわせて動いてくれるわけではありません。

過去のNYダウの大幅下落局面

世界恐慌(1929年~1932年):約90%

 

ブラックマンデー(1987年):約41%

 

リーマンショック(2007年~2009年):約54%

 

コロナショック(2020年):約38%

灯台もと暮らしの特定口座

筆者はファイナンシャル・プランナー(FP)として、お金の知識を使って、お客さまの人生のガイド役として仕事をしています。

我々FPは非課税制度を推すあまり、あるいは非課税という有利な制度から資産形成の世界に入ってしまった方であればあるほど、無意識につみたてNISAという少額投資非課税制度にやたらこだわりすぎている感があります。

よく考えてみてください。非課税でないと投資する価値はないですか?非課税でないと資産形成できないのでしょうか?これを踏まえ、ぜひ将来のために考えていただきたいことがあります。

本来、利益に対して非課税の制度なのに、それが課税されてしまった時の精神的ダメージはどれくらいか?ということです。

我々の脳は、得した時より損した時のほうが、2~2.5倍くらいのストレスを感じるそうです。捕らぬ狸の皮算用、すぐそこまできていた大きな利益が手から滑り落ちる瞬間が、心理的ダメージが大きくなりやすいのです。

非課税制度しか知らない、非課税制度が有利だから資産形成の世界へ入ってこれた、というのは非常に危ういです。利益に課税されるということは運用パフォーマンスを下げる大きな要因となりますから、つみたてNISAの非課税メリットが強調されるたびに、我々の脳は「非課税が当たり前、課税はありえない」という意識がすりこまれていきます。

知らず知らずのうちに、本来20%課税されることが当たり前なのに、非課税が当たり前という思考に変化していきます。

本来であれば、課税か非課税かに関わらず、特に資産規模が大きくなってくるにつれて、自分の資産残高が大きく上下に振れてしまわないようにすることが資産運用の肝です。これこそまさに長期国際分散投資のテーマである「長期・分散・積立」、あるいはリバランス(リスクの再調整)をする目的です。

非課税であることが標準になってしまうのですから、満期が迫ってきた時に評価損状態で、特定口座などの課税口座へ移管されてしまうと、必要以上に、想像以上に拒否反応がでてしまいやすくなります。

自分だったらどういう精神状態になるか、ぜひイメージしてみてください。非課税なのに課税は嫌だと思う方は、特定口座などの課税口座も活用していくことをオススメしています。

次回以降、リスクをちゃんとコントロールしながら、つみたてNISAと特定口座をどう活用していくか、という一連のテーマでご紹介していきましょう。