前回、信託について触れました。
今回はまた違った活用事例についてみていきます。
身近な生命保険と信託の関係です。
目次
生命保険、本当に安心?
筆者は14年以上、生命保険業界にも関わっております。
生命保険は、自分に万が一があった際でも、残された家族へ金銭的な保障(保険金)を届けることができる仕組みです。
例えば、小さい子供がいて、親としての責任がまだまだ高い時期の方にとっては非常に有効な制度となります。
しかし、本当に、
『十分な生命保険に加入したから安心だね!』
となるのでしょうか?
別の不安
例えば自分の死後、保険金として何千万円というような多額の保険金が保険会社から受取人に支払われる際、その時に出てくる不安材料があるわけです。生命保険で課題が解決されたようで、別の不安が生まれるケースです。
例えば以下のような事例があります。
例1)
障害を持つ未成年の子供が受取人である。
大きな金額を受け取って管理はまずできない。
かといって親戚に管理させるのもきちんと教育費などに使ってくれるか不安がある。仮に成人になっていたとしても、大きな金額を持つと、変な投資話が寄ってきたり、金融商品を進められたりといったことが心配だ。
例2)
高齢の親が受取人である。
今は元気だが、もし認知症になっていたら、大きな金額の管理は不可能である。
解決策となる「生命保険信託」
これらの課題を解決するために「生命保険信託」というものがあります。
- 自分が亡くなったあと、毎月一定額ずつ渡したい
- 未成年者や障がいをお持ちの方、認知症の方に代わって財産を管理してほしい
このような委託者それぞれの想い(ニーズ)に応えるために、信託銀行等が保険金を受け取り、あらかじめ決められた人に、決められた方法で管理し、届くようにすることができます。
このように出口部分まで道筋がしっかりと出来上がっているのであれば、親御さんも安心となります。
信託の3者構造は以下になります。
- 委託者
生命保険の契約者(被保険者)
例:お父さん - 受託者
信託銀行等(死亡保険金受取人) - 受益者
委託者が指定した財産(死亡保険金)を渡したい相手
例:長男
財産管理の意思凍結機能
ここまでみてきた内容は信託のもつ機能で、財産管理の意思凍結機能と呼ばれます。
委託者の死亡リスク、意思能力喪失(認知症など)リスクなどに備えることができます。
これにより、生前のうちに死後を含んだ将来の財産管理権限に対する委託者の意思を実現することが達成可能となります。
まとめ
生命保険契約だけではできなかったことが、信託を使うことで実現できるようになる、というのがお分かりいただけたのではないでしょうか?
まだ日本では数社ほどの保険会社しか取り入れていないようですが、今後、増えていくのではないかと思われます。