あなたはどっち?節税すべき人、そうでない人│トレーダーから投資家へのステップアップ

こんにちは、池田和弘です。

個人の所得税率というのは下は5%から上は45%、さらに住民税が+10%付くと考えると最高税率は55%にもなります。中には「所得税が高い」と思っている方も多くいらっしゃると思います。

今回は「節税すべき人、そうでない人」というテーマでお話をさせていただければと思います。

節税対策のリスク

リスクフリーのイメージ

実は税金対策というのは、投資と一緒で、一定のリスクが必ずあるということを理解いただきたいです。

では、税金対策をする上でのリスクってじゃあなんですかという話をすると、まず税務否認リスク。

これはわかりやすく税金対策をしたつもりが後で税務署に「これは税金対策になっていませんよ」「これはダメな節税です」とか言われてしまって、税金を払わなければいけないっていう話も後でなるケースがあるんですね。

そういう時には延滞税といわれる税金の利息みたいなものがついて、節税のつもりが、より多く納税することになってしまいます。

よく芸能人で「修正申告しました」みたいな方を見かけると思います。

そういった方も延滞税を払っています。

悪質な場合は、罰金みたいなものが出てきますが、いわゆるそういった形で税務否認リスクは付き物です。

そして、もうひとつは債務リスク。

節税をするために、何か買ったり、何かに投資をしたりした時、それを回収するリスクというのも当然ながら節税にはついてきます。

つまり、節税というのは税務リスクを除けば、回収するためのリスク、債権債務に対するリスクというのは必ず付き物なんですね。

そもそも投資はリスクとリターンのバランスであると、以前お話したかと思います。

リスクとリターンのバランスということは、いわゆるお金を失ってしまうかもしれないリスクとそれが成功したときのリターン、このバランスを取りましょうという話です。

ですがこれは、税率が低い方は「それぐらいの税金だったら払っておけ!」という話ではなく、そもそも、所得が年1000万円以下の方々の税率は、全体の所得税率から考えるとそれほど高くありません。

例えば、700万弱~900万ぐらいまでの価格帯でいうと、所得税率っていうのは23%、住民税も合わせて33%、つまり3割ぐらいです。

また、300~700万弱ぐらいの価格帯の所得税は20%ぐらい、住民税も合わせて30%、つまりこれも3割ぐらい。

ざっくりと330万円のゾーンから900万円までは、税率が約30%ということになります。

なので、年収800万の方が「どうしても税金を節税したい」と予算を100万円で対策しようと考えたとします。

それは、100万円の所得を圧縮すれば約30%の税金が落ちる意味です。

つまり100万円を投じて得られるものは30万円税金が圧縮されるということなんですが、実はこれって、単に繰延(くりのべ)をしただけになります。

実に無意味な節税対策

崩壊

今年100万円を投じて、100万円分全額所得から引いた場合、800万円の所得の人が所得を700万円に圧縮できたことになります。

でもこれって良く考えると、税金うんぬんの前に「100万円マイナスになった」というだけの話なわけです。

つまり、圧縮された100万円にかかっていた所得税30%が浮く、つまり消えたと思いがちですが、今回投じた100万円をここから先何年間かで回収しないと、当然ながら単に100万円を投じただけで損したことになりますよね?

だったら30%の30万の税金は、払っていたほうが全然良いんです。

当然ながら100万円投じたかぎりは、その100万円以上を回収するというのが、次のミッションになるわけです。

それは来年以降に去年100万円投資をしたものから回収するわけですが、そこにも当然ながら税金がかかってきます。

つまり何を言いたいかというと別に単に先延ばししただけで、節税ができたわけではない、という話になるんです。

100万円を投じるというのは、これは節税だろうと投資だろうと、一旦手元から自分のお金が離れるということなので、これには一定のリスクがあります。

リスクがある割にはリターン、税金は実質的には変わらないとなってしまうと、これは全く意味がありません。

高所得者が節税する理由

節税する理由

ではなぜ、高所得者の人たちは節税するのでしょうか?

所得が1800万円を超えたゾーンからは所得税と住民税を合わせると約50%以上の税率が所得にはかかってきます。

つまり稼いだお金の半分が税金に持っていかれます。それを減らしたいから高所得者は節税をするんです。

例えば所得が5000万円の人が、1000万円使って節税をする場合、4000万の所得の人と一緒の税率になるので、4000万以上の部分っていうのは住民税合わせたら55%かかっていますので、1000万に対して550万の税金の還付があり、減税になるわけですね。

ただそれは先程も申し上げたとおり、来年以降に繰り越されるだけなので、ここまでの話と変わらないじゃないかという話になるんですが、高所得者は会社経営など、所得を上手くコントロールして対処できたりします。

あと、来年から税法が変わってしまいますが、アメリカ不動産なんかよくやっているような高所得者がやっている節税方法は、特別な税制優遇を使った方法です。

これは話し出すと長くなってしまうので、詳細は割愛しますが、ざっくりいうと、税率が高い部分を削って、うまく税制優遇を使って税率の低い形にします。

ただし、低いといっても税率が20%とか25%とか、それぐらいしか下げられません。

分離課税、不動産の長期譲渡所得というのがあるんですが、そういったものを使って20%にしたり、もしくは一時所得も使って、半分課税にする、半分っていうのは税率が例えば50%の人だったら、25%になるので、つまり税金を20%とか30%の税率に落とすことができます。

普段は50%以上払っている人たちが、20%とか25%になればすごい大きなインパクトがあるわけです。

ところが、先程申し上げた税金がもともとの税率がMAX30%の人たちからすれば、税率が25%になったところであんまり変わらないですよね?

その差異がないということは、つまりリターンが生まれない。ということになります。

基本的に30代40代ぐらいのバリバリ働いている人たち、特に年収が1000万以下ぐらいの人たちが、節税をしたいと考えるよりは、どちらかというと所得を増やすということを考えたほうが懸命であります。

節税っていうのは今申し上げたとおり、税率が少なくとも40~50%以上になっているような方々が検討すべきであり、そうでない方は、あまり節税によって得られるリターンは大きくありません。

節税で社会的信用を失う場合もある

投資 経験

あとは節税をすることによって確定申告上の所得が落ちます。

つまり住宅ローンを組んだりとか、なにか社会的信用を得るときの根拠書類に必要な、自分の所得を下げてしまうので、やっぱり不利になると思うんですよね。

年収5000万の人が3000万になろうと4000万になろうと、社会的信用は、あんまり変わりません。

ところが例えば年収800万の人が、年収を半分の400万にしてしまうと、全然信用力が違いますよね。

そういった意味でも節税っていうのは勿論リスクもはらみますし、個人情報的な信用問題にも関わりますので、やはり絶対に1円たりとも税金は払いたくない、というのは、日本で暮らす限り不可能です。

なので、しっかり稼いで、しっかり納税をして、そして健全にキャッシュローンを回していったほうが、ある一定ラインまでは良いのではないかなと思います。

ぜひそういった観点で物事を考えていただければと思います。

だいたい年末が迫ってくると、皆さん税金税金と言い出しますので、ぜひこの機会に参考に「節税じゃなくて、今度はより稼ぐぞ!」というモチベーションを持っていただけたら幸いです。

本日は以上となります。
ご覧いただきましてありがとうございました。

池田和弘 資産運用のすべてを知る男、池田和弘にインタビュー|前編