「信託」について知ろう

信託

「信託」という制度は、日本ではまだまだ一部でしか活用されていない印象を受けています。

しかし、世界の法律や金融を知ると、実は財産を守ったり、次世代へ承継していくという目的でとても有効な仕組みということがわかります。

資産形成をしたのちの、資産を保全していく知識として、是非知っておく必要がありそうです。
今回から数回にわたり「信託」について触れていきたいと思います。

信託とは

そもそも「信託」とは、「自分の大切な財産を、信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って大切な人や自分のために運用・管理・継承してもらう」制度です。

日本語の字の通り、「信託」とは、「信じて託す」行為ですね。
英語ではtrustと呼ばれます。

歴史的には、中世英国法の「ユース」がルーツと言われ、封建制度下の相続に対する世俗支配者のさまざまな干渉を回避するために発明され、それが英米法圏で発展したといわれています。

つまり、一生懸命がんばって成した財産を、自分の死後、国に没収されたりするのではなく、自身の家族や信仰するもののために使ってほしい、というような想いを堂々と実現するために特に英米法の下で発展してきました。

日本においては明治時代以降に入ってきて、1922年(大正11年)に「信託法」と「信託業法」が制定されてから制度として本格的に発展してきました。

制度の特徴

「信託」は、以下の3者の関係からなります。

  1. 委託者
    ……財産を預ける(信託する)人
  2. 受託者(信託銀行等)
    ……財産を預かって(信託されて)管理・運用する人
  3. 受益者(恩恵を受ける人)
    ……財産から生じる利益を得る人

信託の機能・メリット

信託の機能・メリットはいくつかありますが、例えば以下があります。

  • 間接所有機能
    信託した財産(=信託財産)の所有権は、委託者から受託者に移転し、受託者の名義となります。
  • 倒産隔離機能
    信託財産は受託者自身の財産や他の信託財産とは分別して受益者のために管理されます(分別管理)。そのため信託財産は委託者や受託者の倒産の影響を受けません。
  • 財産管理機能
    信託法、信託業法等で厳しい義務が課せられた信託銀行等の専門家が、豊富な知識と経験で、財産をしっかり管理・運用します。
  • 税金の優遇
    信託を活用することで贈与税が一定の金額まで非課税になるといった税制上の優遇措置があります。

よく目にする投資信託も?

私たちが「信託」を最も聞き慣れているのは「投資信託」かもしれません。
この投資信託も、信託の仕組みでできています。

投資信託は個人の資産形成・資産運用のための信託商品です。

【委託者】である運用の専門家である投資信託委託会社(運用会社)が投資家に代わってどのような資産に投資するかを判断し、

そして【受託者】である信託銀行等が投資家が出資する大切な資金の管理を行います。
運用の利益は【受益者】である投資家が受け取ります。

投資信託の場合は、証券会社や銀行等のような「販売会社」が存在しており、彼らを通して、投資信託の購入ができるようになっています。

1.委託者
投資信託委託会社

 

2.受託者
信託銀行等

 

3.受益者
投資家(投資信託の購入者)

 

※販売会社

証券会社、銀行等

まとめ

今回は、「信託」の特徴と機能について、そして身近な投資信託について触れました。

身近になった投資信託ですが、安心して管理・運用ができているのも、この土台となる構造があるからこその金融商品なのがお分かりいただけましたでしょうか?

次回はまた違う活用事例についてお伝えします。