個別元本ってナニ?(上)損益を計算する時の「買い値」

書類

投資信託を保有している間、年に1回など定期的に「残高明細書」が発行されます。

その中には、発行日時点でその投資家が保有している投信の「銘柄」や「数量(口)」、「時価単価」、「預かり資産の総額」などが記載されています。

それらの欄の1つに「個別元本」という項目があります。

個別元本とは、その投信を購入した基準価額のことで、大雑把に言えば「投信の買い値」ですが、場合によってはさらに深い理解が必要です。

今回は、(上)(下)の2回に分けて、投信の個別元本について説明しましょう。

ひとことで言えば「買付時の基準価額」

まずは個別元本の基本から。
国内の追加型株式投信は、2000年4月から個別元本方式が採用されています。

個別元本は、その投信を買った時の基準価額(取得単価)です。
基準価額とは、投信の日々の値段。追加型株式投信は、毎日、値動きをしています。

買付日が違えば基準価額が違うので、個別元本は、投資家ごと“個別”の、投資“元本”ということになります。

買付時にかかる販売手数料やその消費税は、個別元本には含みません。

この個別元本を頭に入れておくと、保有する投信について、日々値動きする基準価額と比べれば、投資損益がわかります。

個別元本は、投資家が自分で計算する必要はありません。

取引金融機関が定期的に作成する「取引残高報告書(照合通知書)」に記載されています。また、取引金融機関のWEBサイトでマイページなどに入り、残高明細などのページでも確認できます。

解約・償還の時の課税

投信の解約(または償還)で税金を計算するとき、解約価額(償還価額)と個別元本に販売手数料を加えた金額との差額を、利益または損失とします。

課税口座では、この差額がプラスならば、差額に対して20.315%が申告分離課税されます。

なお、解約時に信託財産留保額が引かれる投信は、解約の約定日の基準価額から信託財産留保額が差し引かれた単価が解約価額です。

では、2人の投資家の事例で、課税対象額を見てみましょう。

解約・償還の時の課税:事例1

個人投資家AさんとBさんが、解約価額(1万口当たり)13,000円で100万口を解約した。Aさんの個別元本は10,000円、Bさんの個別元本は11,000円。計算を単純化するために、2人とも販売手数料は1万円(消費税込み)とする。

[Aさん](13,000円-10,000円)÷1万口×100万口-1万円=29万円
[Bさん](13,000円-11,000円)÷1万口×100万口-1万円=19万円

課税口座の場合、Aさんは29万円に対して、Bさんは19万円に対して、20.315%の申告分離課税となります。

積立投資や何回かに分けた買い付け

投信を買った後、追加の買い付けをしなければ、ここまでで終わるシンプルな話です。個別元本を求める計算式も、下記の通り単純です。

(初回買付時の個別元本)=(買付金額)÷(買付口数)

もし、同じ投信を複数回に分けて買ったり、積立投資をしたりする場合は、少し複雑になります。

(2回目以降の個別元本)={(前回までの個別元本)×(前回までの保有口数)+(今回の買付金額)}÷{(前回までの保有口数)+(今回の買付口数)}

これを簡単な例で説明しましょう。

解約・償還の時の課税:事例2

abcファンドを3回、1万口ずつ買い付ける。各回の買付価額は、1万口当たりの基準価額で1回目:10,000円、2回目:11,000円、3回目:9,750円とする。

[1回目買付時の個別元本]
10,000円×1万口÷1万口=10,000円

[2回目買付時の個別元本]
(10,000円×1万口+11,000円×1万口)÷(1万口+1万口)=(21,000円×1万口)÷2万口=10,500円

[3回目買付時の個別元本]
(10,500円×2万口+9,750円×1万口)÷(2万口+1万口)=(30,750円×1万口)÷3万口=10,250円

積み立てや買い増しをする都度、個別元本は再計算されます。

取引残高報告書を受け取るたびに個別元本の金額が変わっていることがあるのは、このような計算がされているからです。

個別元本:まとめ

個別元本をひとことで言えば、追加型株式投信の「買付時の基準価額」です。

日々、投信の基準価額は変動していますが、自分の個別元本との差額で、損益の状況がわかります。

課税口座で取引している場合、換金する時は、個別元本に販売手数料を加えた金額と、解約価額との差額に課税されます。積立投資や買い増しをすると、その都度、個別元本は再計算されます。

次回は、『個別元本ってナニ?(下)課税されない分配金をもらうと……』をお届けします。